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追放された俺のやり方、なぜか世界中で禁止され始める  作者: 黒羽レイ


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第35話 制度の裏切り

 その地域は、

 守られるはずだった。


 例外措置。

 暫定保留。

 再評価対象。


 クララ・フェルディナントが、

 自ら条件を書き足した案件だった。


「――最終確認を行います」


 会議室で、

 淡々とした声が響く。


 資料は整っている。

 数値も、予測も、想定通り。


 切断判断は、

 見送られる予定だった。


「……条件A、

 満たしています」


「条件Bも、

 問題ありません」


「費用対効果、

 基準値内です」


 報告は、

 どれも正確だった。


 クララは、

 一言も挟まない。


 必要がないからだ。


 ――今回は、

 制度が守る。


 そう、

 確信していた。


 だが。


「……再計算結果、

 出ました」


 一人の職員が、

 声を落とす。


 画面に、

 新しい数値が表示される。


 変化は、

 わずかだった。


 誤差。

 微調整。

 許容範囲。


 だが――

 閾値を、

 ほんの僅かに越えている。


「これは……」


 誰かが、

 言いかけて止まる。


 止まった理由は、

 全員同じだ。


 制度は、

 迷わない。


「再評価条件、

 未達です」


 機械的な確認。


 続けて、

 別の声。


「暫定措置、

 解除対象となります」


 それは、

 手続き上の当然だった。


 クララは、

 画面を見つめたまま、

 動かなかった。


 驚きはない。


 計算は、

 正しい。


 資料も、

 正確だ。


 ――だからこそ。


「……切断判断、

 妥当と認定します」


 議長の声は、

 低く、

 揺れなかった。


 槌が、

 打たれる。


 音は、

 乾いていた。


 会議は、

 そのまま進んだ。


 誰も、

 声を荒げない。


 抗議も、

 例外要請もない。


 なぜなら、

 すべて、

 制度通りだったからだ。


 休憩時間。


 クララは、

 一人で立っていた。


 誰も、

 近づかない。


 慰める言葉も、

 責める言葉も、

 必要がない。


 彼女は、

 正しかった。


 それが、

 一番の問題だった。


「……想定外、

 ですか」


 背後から、

 静かな声。


 男だった。


 クララは、

 ゆっくりと振り返る。


「……いいえ」


 否定は、

 即答だった。


「想定は、

 していました」


 彼女は、

 そう言ってから、

 一拍置く。


「ただ――」


 言葉が、

 続かない。


 男は、

 何も言わない。


 促しもしない。


 問いも、

 投げない。


 ここでは、

 必要ない。


「……これは、

 私の想定外です」


 クララは、

 静かに言った。


 声は、

 震えていない。


 感情も、

 露わにしない。


 ただ、

 事実を述べるように。


「制度は、

 私の考えより、

 正確でした」


 男は、

 否定しなかった。


「人の期待を、

 含めない分、

 正確です」


 クララは、

 小さく頷く。


「だから、

 守れなかった」


 誰を、とは言わない。


 だが、

 それで十分だった。


 その日の夜。


 切断対象地域では、

 連絡が届いていた。


 説明文。

 理由。

 今後の見通し。


 すべて、

 丁寧だった。


 だが、

 誰も来ない。


 来る予定が、

 制度にないからだ。


 男は、

 窓の外を見ていた。


 灯りが、

 一つ、

 また一つと消えていく。


 世界は、

 壊れていない。


 制度も、

 正常だ。


 だが――

 守るはずだったものが、

 静かに切られた。


 クララは、

 自室で、

 資料を読み返していた。


 どこにも、

 間違いはない。


 それでも、

 彼女の手は、

 止まっている。


 初めて、

 制度の外側を、

 見てしまったからだ。


 男は、

 心の中で、

 問いを繰り返す。


 ――誰が、

 引き受けるのか。


 その答えを、

 制度は出さない。


 だから、

 次の一手は、

 もう決まっていた。


 世界に、

 選ばせる。


 引き受けるか、

 それとも――

 最後まで、

 正しいままでいるかを。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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