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追放された俺のやり方、なぜか世界中で禁止され始める  作者: 黒羽レイ


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第34話 戻らなかった人

 エリアス・ノートンは、

 世界協定の建物を、もう振り返らなかった。


 振り返れば、

 理由を考えてしまう。


 なぜ、

 自分が外されたのか。

 どこで、

 間違えたのか。


 だが、

 考えても答えは出ない。


 制度は、

 正しかったからだ。


 彼が今いるのは、

 切断対象とされた地域の、

 さらに外れ。


 正式な支援ではない。

 世界協定の名もない。


 ただ、

 人がいる場所だ。


「……あんた、

 また来たのか」


 現地の医師が言った。


「ええ」


 エリアスは、

 短く答える。


「制度的には、

 もう終わってるぞ」


「分かっています」


 それでも、

 彼は立っている。


 仕事は、

 地味だった。


 薬の仕分け。

 患者の搬送。

 連絡の仲介。


 判断はしない。

 切断もしない。


 ただ、

 そこにいる。


「……名前は?」


 初めて会った住民が、

 そう聞いた。


 エリアスは、

 一瞬だけ言葉に詰まる。


 以前なら、

 肩書きを答えていた。


 今は、

 それがない。


「……エリアスです」


 それだけで、

 十分だった。


 夜。


 簡易診療所の隅で、

 彼は壁に背を預けていた。


 灯りは弱い。

 それでも、

 完全には消えない。


 誰かが、

 静かに言った。


「……助かります」


 その言葉に、

 評価はない。


 感謝だけだ。


 エリアスは、

 それでいいと思った。


 初めて、

 そう思えた。


 同じ夜。


 世界協定では、

 次の会議の準備が進んでいた。


 資料は整い、

 説明文も揃っている。


 だが、

 一行だけ、

 空白が残っていた。


《引き受け者:》


 誰も、

 そこを埋めない。


 男は、

 その資料を、

 黙って見ていた。


 そこに、

 名前を書き足すこともできる。


 求められてもいる。


 だが、

 それをすれば、

 また奪われる。


 人徳は、

 置く場所を間違えると、

 すぐに形を失う。


 翌日。


 エリアスは、

 患者の家から戻る途中、

 小さな子どもに呼び止められた。


「ねえ」


「なんだい」


「……また、

 明日も来る?」


 その問いは、

 制度には存在しない。


 だが、

 彼は答えられる。


「来るよ」


 迷いはなかった。


 世界協定の最上階。


 ユリウス・グランフェルトは、

 報告を受けていた。


「……ノートンは、

 戻る気はないようです」


 ユリウスは、

 それを聞いて、

 目を閉じた。


「……そうか」


 それ以上、

 何も言わない。


 彼は、

 理解していた。


 戻らなかった者こそ、

 本当に引き受けた者だと。


 夕暮れ。


 エリアスは、

 地平線を見ていた。


 世界は、

 ここから遠い。


 だが、

 彼は知っている。


 世界が切った場所は、

 消えてはいない。


 そこに、

 人がいる限り。


 彼は、

 戻らなかった。


 だが、

 逃げたわけではない。


 それは、

 選択だった。


 制度の外で、

 引き受けるという、

 もう一つの正しさ。


 男が問い続けている

 「外側」の答えが、

 ここに、

 静かに存在していた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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