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追放された俺のやり方、なぜか世界中で禁止され始める  作者: 黒羽レイ


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第26話 歪んだ正義

 その地域は、制度上「切断に適する」と判定されていた。


 危険度、低。

 波及性、限定的。

 継続支援の費用対効果、低。


 どの項目を見ても、

 異論を挟む余地はない。


 だからこそ、

 誰も現地に行く予定はなかった。


「……行きます」


 エリアス・ノートンは、

 報告書を閉じて言った。


 上司は顔を上げない。


「制度は、

 適用可能だ」


「承知しています」


「現地介入は、

 想定されていない」


「承知しています」


 同じ言葉。

 だが、

 意味は違う。


 上司は、

 ゆっくりと視線を上げた。


「……止めても、

 行くんだな」


「はい」


 それは、

 反抗ではない。


 確信だった。


 現地は、

 静かだった。


 切断された地域特有の、

 音の少なさ。


 人はいる。

 だが、

 助けを期待していない。


「……来ると思わなかった」


 医師が言った。


「制度では、

 もう終わっているはずだ」


「ええ」


 エリアスは頷いた。


「ですが、

 人は、

 まだ、

 ここにいます」


 それだけで、

 十分だった。


 三日間。


 エリアスは、

 現地に留まった。


 医療補助。

 物資調整。

 連絡役。


 完璧ではない。

 だが、

 確実に人は助かった。


「……助かりました」


 誰かが言った。


 名前は、

 聞かなかった。


 聞く余裕が、

 なかった。


 戻った翌日。


 エリアスの端末に、

 通知が届いた。


《制度逸脱行為に関する確認》


 文言は、

 丁寧だった。


 非難はない。

 感情もない。


 ただ、

 逸脱したと、

 書いてある。


 会議室。


 クララ・フェルディナントは、

 資料をめくりながら言った。


「結果は、

 部分的に成功しています」


「では――」


「ですが」


 彼女は、

 そこで言葉を切った。


「制度は、

 例外を前提としていません」


 エリアスは、

 正面から彼女を見た。


「例外は、

 人です」


「違います」


 クララは、

 静かに否定した。


「人は、

 変数です」


 その言葉は、

 正確だった。


 だから、

 残酷だった。


「君の行動は、

 称賛に値する」


 上司が言う。


「だが、

 続けられない」


「なぜですか」


「再現できない」


 その一言で、

 すべてが終わる。


 エリアスは、

 その夜、

 一人で資料を見返していた。


 自分の書いた説明文。

 現地の声。

 助かった人数。


 数字は、

 確かに存在する。


 それでも、

 制度は彼を否定している。


「……それでも」


 エリアスは、

 呟いた。


「それでも、

 誰かが、

 ここにいなければ」


 その言葉は、

 祈りに近かった。


 だが、

 祈りは、

 制度を動かさない。


 無名地帯では、

 その話は、

 断片として届いた。


「……行ったらしい」


「誰が」


「若いのが一人」


 男は、

 何も言わなかった。


 行ったことを、

 否定もしない。


 称賛もしない。


 ただ、

 近づきすぎていると、

 感じていた。


 彼は、

 名前の書かれた紙を、

 一枚、

 折り畳んだ。


 増えてはいない。

 減ってもいない。


 だが、

 重くなっている。


 エリアス・ノートンは、

 正しいことをした。


 少なくとも、

 現地では。


 だが、

 世界は、

 正しさだけで、

 回ってはいない。


 正しさが、

 制度の外に出たとき。


 それは、

 歪みと呼ばれる。


 そして、

 歪みは、

 必ず、

 修正される。


 人ごと、

 切り落とされる形で。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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