脛暴(すねあばれ)先輩は砕けない!!
2話程度のネタ作品になります。
軽い気持ちで読んでいってください。
「許さねぇ……俺を捨てた社会に、人間の底力を知らしめてやる……!!」
男はゆっくりと鞄の中から、布に包まれた何かを取り出す。
布を取り、中から鈍く銀色に光る刃を抜き取り、しっかりと握る。
人々が異変に気づいたのは、太陽に反射された刃の影を見たときだった。
男性「えっ……?」
一人の男が気付くと、それが震源地のように周囲の人々に広がり、やがて大きな混乱となる。
男性「うわぁあっ!?」
女性「キャァァァッ!!?」
通り魔「何叫んでんだよ……うるせぇなぁ……ははは……全員刺し殺してやる!!」
通り魔は腹の近くに包丁を構え、両手でしっかりと握り通行人の一人に突撃する。
男性「うわぁぁぁぁぁっ!!!」
男性の恐怖に塗れた断末魔が白昼に響いたその時!!
バギ/ィ゙ン!!!
通り魔「っ……はぁっ……!?」
包丁が割って入った何者かの「スネ」に止められ、刃が折れた。
通り魔はすかさず、砕けて吹き飛んだ包丁の破片を凝視する。
そして、その自分の包丁を砕いたであろうその男に目を移す。
目の前にいたのは黒い学生服を着た、ガタイの良い男。
通り魔「お……お前は……!!」
通り魔はその男を知っていた。
いや、この街でこの男を知らない人間はいない。
包丁を真っ向から受け止め、打ち砕く強靭な「脛」(スネ)を持った男。
そう。この男こそ、史上最強の守護番長。
脛暴亮太である!
脛暴「あんちゃん……何してんだよ……、」
低い声で通り魔に声を掛け、見下ろす。
通り魔「あ……あ……!!」
その圧倒的な威圧感に、通り魔は戦慄し、青ざめる。
だが、もちろん脛暴先輩は、追い打ちをかけるようなことはしない。
先輩はゆっくりとかがみ、通り魔の男性を見上げる。
そして、真摯な目つきで優しく語りかける。
脛暴「一体何があんちゃんをそうさせた?理由があるんだろ。」
通り魔「えっ……」
脛暴「いろいろため込んじまって、爆発しちまったか。それとも、何かの憂さ晴らしか……こんなガキに説教じみたことされるのは癪に障るかもしれねぇけどよ。俺はあんちゃんを諦めねぇからな。」
通り魔「な……なんだと……?」
脛暴「なぁ、あんちゃん、行きつけのラーメン屋とかあるかい?教えてくれよ。できれば豚骨がいいな。」
通り魔「え?……あ……あぁ……」
先輩は肩を組み、半ば強引にラーメン屋へと案内させる。
通り魔のおっさんは、驚き、緊張しつつも、どこか安堵しているようだった。
その様子を見て、改めて先輩のかっこよさを再確認する。
そう。脛暴先輩は、圧倒的な力を持っていることに対する責務を自分なりに感じ、自分の持つ力で対応できる事件を率先的に解決しているのだ。
そして、俺「肘宮 荘二郎」は、そんな先輩の友人兼ファンなのである!
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翌日
登校時にいつもの待ち合わせ場所に行く。
先輩はいつも先にいて、適当にケータイをいじりながら待っている。
先輩は俺を見ると、何も言わずに手を伸ばしてくる。
俺もポケットの中から長いタイプのガム(レモン味)を2枚取り出し、1枚渡す。
二人で同時にガムを噛み始める。
先輩はクチャクチャ音をあまり立てたくないので、なるべく口を閉じたまま噛んでいる。
昨日、あの人とラーメン屋で何を話したのか気になったが、先輩は個人個人に関わることを話すのは嫌いなので、俺もそれについては聞かず、いつも通りマンガの話をしながら学校に向かう。
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学校に着く。
下駄箱に靴を入れ、上履きに履き替える。
先輩は靴がめちゃくちゃデカいので、靴裏を合わせて下駄箱にねじ込まないと入り切らない。
先輩は階段を2段飛ばしでゆっくりと登っていく。
学年が違うので、先輩は別の階に教室がある。
脛暴「んじゃ、また昼休みに。」
軽くこちらに手を挙げ、教室へと向かっていく。
俺も軽く手を振り、教室へと向かう。
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昼休みになり、先輩とクラスの友達たちで外でバスケをする。
脛暴先輩は、その巨軀を生かし、外ゴールにダンクを決め、ゴールがギリギリと鳴る。
それでも、先輩はしっかりとゴールが壊れない程度に調節している。
指堅「ハッハッハ……!やっぱエグいな亮太は!今からでも遅くない、バスケ部入ってくれよ。」
「指堅先輩」は、バスケ部のキャプテンで、脛暴先輩と同じクラスだ。
いつも先輩をバスケ部に勧誘している。
脛暴「いつも言ってるだろ?部活はやりたくねぇんだよ。」
先輩は身長が2メートル近くあるので、様々な運動部からの勧誘が絶えないらしいが、全て断っている。
放課後は自由にしたいからだそうだ。
程なく10人ほど集まり、全員でバスケをする。
やっぱり脛暴先輩と指堅先輩は強くて、まさにパワーの脛暴と技の指堅と言ったところだ。
しばらくバスケを楽しんでいると、学校の外にチャラい格好をした集団が目に入る。
見た目からして、おそらく同年代の学生。
ボスだと思しき人物は、先輩にすら負けないほどの巨軀と、服の上からでもわかるほどの凄まじい筋肉をしていた。
そして、特筆すべきはその「顎」(アゴ)。
アゴが鋭利な刃物のように飛び出て、一際異彩を放っている。
そいつは俺たちを、いや、先輩を見つけるや否や、学校を囲うフェンスを蹴り、大きな音を立ててガンを飛ばしてくる。
「脛暴ってのは……オメェのことだよな?」
先輩は冷静に答える。
脛暴「そうだが?」
アゴの鋭い男は、こう続ける。
「俺は顎崎ってんだ。喧嘩できるやつは全員ノしちまったから相手できるやつがいなくなっちまってよ、退屈してたら、隣町に強そうなのがいたから来ちまったんだわ。」
先輩は黙って奴の話を聞いている。
顎崎は舌を出して挑発しながら続ける。
顎崎「なぁ……俺の相手してくれよ。午後7時、勇滅我輪羅第二工場跡で待ってっから。」
喧嘩の誘いなんかを受ける先輩じゃない、だって……先輩は……
顎崎「断るなんて言ったら、俺ら全員でこの学校にカチコミかけて、何人か病院送りにしてやるよ。」
そう言い、脛暴先輩に向かって唾を吐きかける。
先輩は黙ったまま、鋭い視線を向けている。
その沈黙を破ったのは、指堅先輩だった。
指堅「てめぇふざけんなよ!!脛暴は喧嘩なんてするタチじゃねぇんだよ!!好き勝手言いやがって!!」
指堅先輩はフェンスまで詰め寄り、顎崎を睨み返す。
脛暴「!指堅!!」
珍しく脛暴先輩が焦りの大声を上げる。
顎崎の後ろにいる奴らは、指堅先輩を見てニヤニヤと笑っている。
明らかな侮蔑。その態度に、指堅先輩の怒りは頂点に達する。
指堅「そこまで言うなら俺が相手してやっ……
言い終わる前に、フェンスの外の顎崎が拳を振り上げる。
凄まじい速度で振り下ろされた拳は、フェンスごとぶち抜き、指堅先輩を捉える。
バギ/ャ゙ン゙!!!
脛暴「くっ……」
顎崎の拳が指堅先輩に当たる前に、間に割り込みスネで拳を受け止める。
顎崎「ほぉ……硬ぇじゃねぇか。」
顎崎はゆっくりとフェンスから腕を抜き、手をひらひらと振って見せる。
顎崎「そんじゃ、工場跡で待ってっから。逃げんなよ。」
集団は背を向け笑いながら帰っていく。
指堅「チッ……!!」
指堅先輩は悔しそうだった。
今にもあいつらの背中を追いかけて行きそうなほど怒っている。
それを見て、脛暴先輩は声を掛ける。
脛暴「お前には部活がある。ケガして試合に出られなくなったら大変だ。」
指堅先輩は、はっとしたような顔をする。
脛暴「お前が悔しいのはよく分かってるつもりだ。その怒り、俺に預けてくれ。」
それを聞き、指堅先輩は訴える。
指堅「でも……!お前は喧嘩なんてする奴じゃない……!いつも言ってんじゃねぇか!『俺のスネは他人を傷つけるためじゃない、守るためにある。』って!俺はお前の信念を曲げさせたくない!!」
指堅先輩の言葉に、俺もハッとする。
脛暴「大丈夫だ、絶対に喧嘩しない。あいつらも話せば分かるはずだ。」
駄目だ、いくら先輩でも、あんな奴らと話し合いなんて……!
肘宮「お……俺も行く!!」
つい、声を上げてしまう。
脛暴先輩は驚いて俺を見る。
肘宮「先輩が……どうしても戦わないといけなくなったとき、俺が戦う……!!俺も先輩の信念を曲げさせたくない!!」
脛暴「駄目だ……お前らは来ちゃあ駄目だ……!」
脛暴先輩は脅すような口調で言った。
だが、それは先輩が俺たちを思う気持ちから来ているということに気付かない奴はいなかった。
藍沢「亮太、俺も部活はやってねぇから、ケガしても何の問題もねぇ。ついて行っていいか?それと……指堅や亮太がバカにされてんのは俺も許せねぇ。」
野良山「腹立ったわあいつら。もし脛暴先輩でも、喧嘩になるような事があったら、黙っていられねぇ、絶対助けに行く。」
藍沢先輩や野良山も声を上げる。
「俺も……!」「俺だって許せねぇ!」
「現場を見てたのに先輩一人で行かせるなんてできねぇ!」
やがて、その場にいた全員が声を上げる。
それを見てもなお、先輩は折れなかった。
脛暴「駄目だ。これは俺に課された責務なんだ。だが、お前らの気持ちの分までぶつけてくる。」
そう先輩が告げたとき、昼休みが終わるチャイムが鳴った。
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放課後
工場跡にて
顎崎「おいおい……一人で来たのかよ脛暴君……全く、舐められたもんだぜ?」
脛暴「俺は……絶対にお前らと喧嘩はしない。」
続く
よろしければ2話目も読んでくださると幸いです。




