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何かの特別に

依頼を完了してギルドに書類を提出した後、朝ごはんを食べた広場へと再びやって来た。

お昼時ということもあって、朝よりも人が多くてお祭りみたいになっている。

お昼はガッツリしたものを食べる人が多いのか、肉を焼いているような匂いが四方八方から漂ってくる…僕のお腹から催促の音が鳴るのも時間の問題だ。

いざお昼ごはんを…と、足を進めようとすると。


「わんっ!」

「あ、また来ました…」

「さっきぶりだね、お腹空いてるの?」


思ったよりも早い再会、青い毛並みを持つ犬が僕たちの前に現れた。


「どうするんですか、グドウさん?」

「なんとなく放っとけないんですよね。一緒に来る?」

「わんっ!」


元気に返事をすると僕たちの後ろへと回ってきた。

もしかしなくても言葉を理解してるよね?

異世界の犬は知能が高いのだろうか。


「じゃあ行きましょう、午後に向けて活力を補充です」

「わお~ん!」

「…先に言っておきますけど、わたしのは分けませんからね」


ーーーーー


「おや?グドウさん、こんにちは」

「あ、ニューマさん、どうも」


何を買おうか色々見て回っていると、ニューマさんに出会った。

昨日と違って鎧を着ておらず、剣こそ持っているけどだいぶラフな格好をしている。

非番の日なのかな?


「ニューマさんもお昼ご飯を食べに?」

「はい、値段はそこそこしますけど美味しい屋台が多いので昼食はだいたいここで食べてます。そちらの方はパーティーメンバーですか?」

「こ、こんにちは…カウラ・タンドップです…」

「セキュルト・ニューマです、よろしくお願いしますね。…と、そうだグドウさん、初めての依頼はどうでしたか?」


タンドップさんは初対面の人が相手だとどうしても緊張しちゃうみたい。

ニューマさんもそれに気付いているのか無理に会話をしようとせずに僕に話題をふってきてくれた。


「タンドップさんの助けもあって上手くいきました。ハイポイキュア草が見つかって銀貨6枚も稼げたんですよ」

「初日で銀貨6枚はすごいですね。金銭的余裕ができると心にも余裕ができます。冒険者になったばかりの人は金銭的余裕がないひとが殆どなので焦って無謀な挑戦をしがちですけど…グドウさんは大丈夫そうですね」

「マイペースにやっていくつもりです、しばらくは雑用依頼を中心にやっていこうかと。討伐依頼は…当分先ですね」


いつかはやらないといけないだろうけど、地盤を固めてからでも遅くないと思うし、安全第一にいこう。


「それでいいと思いますよ。私としても知り合った方と早々に会えなくなるのは嫌ですから」

「…討伐依頼ってそれだけ危険なんですね」

「どんなベテランの冒険者でもやられるときはあっさりとやられるものです。右も左も分からない新人ならなおのこと」


改めて聞くと怖くなってくる。

今いる場所は現実、プログラムされて決まった物事しか起こらないゲームとは違う…どんなイレギュラーが起こるかなんて誰も想定できないんだ。

弱いモンスターしかいないはずの場所にとんでもなく強いモンスターが現れて成す術なくやられる可能性だって否定できない。


「…冒険者って大変なんですね」

「まあ、できることから始めていけばいいんですよ。それよりお昼を食べましょう、よければ一緒にどうですか?」

「僕は大丈夫ですけど、タンドップさんは?」

「わ、わたしも大丈夫…です」

「わんっ!」

「おすすめの屋台を紹介しますよ、行きましょう」


ーーーーー


「この屋台の串焼きが一番おすすめですね、味良し量良し値段も良しの三拍子が揃う人気の屋台なんです。すみません4本ください」

「お、セキュルトちゃんじゃねえか。いつもありがとよ、ちょっと待っててくれ」


ニューマさんの注文を受け、屋台の人が手際よく串に刺した肉を焼いていく。

量良しと言われているだけあって、掌くらいの大きさがある肉が2つ刺さっている。

1本だけでお腹いっぱいになりそうだけど…ニューマさん、4本も食べるの?


「お待ちどうさん、ほらよ」

「ありがとうございます。お二人ともどうぞ、君もね」


お金を払い串焼きを受けとると僕たちに1本ずつ渡してくる。


「え?わ、悪いですよ」

「あ、ありがとうございます…」

「タンドップさん!?」

「遠慮しなくていいですよ。冒険者になって、これから頑張ることになるあなたとパーティーメンバーであるタンドップさんへの応援の気持ちです。英気を養ってください」


その気持ちはとても嬉しいけど…でも受け取らないのも失礼かな?


「うーん…ではこうしましょう」

「?」

「これは先行投資として渡します。もしあなた達が冒険者として名を馳せるようになったら、私にちょっと豪華なご飯を奢ってください」

「…どうしてそこまで?」


ニューマさんとは昨日知り合ったばかり、しかもあまり印象はよくなかったはず。

態々こんなことをする必要はないと思うけど…


「大した理由はありません、強いて言えば直感です」

「ちょ、直感ですか?」

「あなた達、特にグドウさんは何かすごいことを成し遂げる…そんな気がするんです。とは言え、別に私の直感はよく当たるというわけでもないのですが」


僕は大した人間じゃない。

異世界に来た特殊な存在だけど、この世界を救って欲しくて選ばれた、この世界をより豊かにして欲しくて選ばれた…そんな使命もない。

特殊であって特別ではない、大それたことを成し遂げるほどの存在じゃないんだ。


…でも、なんの変哲もない直感だとしても、こうして僕に特別を見いだしてくれるのは…嬉しいな。


「ありがとうございます、ニューマさん。あなたにご飯をご馳走できるように頑張ります」

「ふふっ、期待してますよ」


ニューマさんの期待に応える、そう心に決めて串焼きにかぶりついた。

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