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収納スキルの悪用

「あ?魔鉄鉱だと?ここじゃそんなのは出ねぇぞ」

「え?さっきは確かに…実物はこれです」


採れた魔鉄鉱を依頼主の男性へと渡す。

男性は渡した魔鉄鉱をじっくりと見ていく…が、ため息を吐きこちらへと投げ返してきた。


「魔鉄鉱はマナの濃度が高い場所でなきゃ採掘できねえんだよ」

「マナ?」

「俺もそんなに詳しくねえが、魔法を使うのに必要な魔力の源がマナだって言われてる。マナ濃度が高い場所だと魔力の回復が早いだんだと。で、その濃いマナの影響を受けた鉱石が変化したものが魔鉄鉱ってわけだ」

「へ~、じゃあここで魔鉄鉱が採れないっていうのは…」

「単純にマナ濃度が低いんだよ、そもそも魔鉄鉱ならマナが結晶化したものが表面に付着してっからすぐ見分けがつく」


うーん…収納したときには確かに魔鉄鉱って出たんだけどなぁ…

でも、普段ここで鉱石を採掘してる人が言うんだもんなぁ…


「んで?依頼した分の鉄鉱石は採掘できたのか?」

「は、はい…15個…グドウさんの収納スキルに入って…ます…」


そうタンドップさんが伝えた途端、依頼主の顔が険しくなった。


「本当に15個か?スキルで何個かくすねるつもりじゃねえだろうな?」

「え!?そんなつもりないですよ!?」


そうか、誰にも見られていない場所で収納スキルにしまえばバレずに盗み出せてしまうのか…

盗んでいないと主張しても中身を見せれる訳じゃないし、今回みたいに必要な数を見せても、数を誤魔化していないと証明しきれない。

そう考えると疑われても文句は言えないな。


「…くすねるつもりだったら態々収納スキル持ちだとは言わねえか、その気なら言わないでそのまましまってればいいもんな、すまん」

「謝らないでください、僕の方こそ便利さに気を取られて、見えないところでしまったときに相手がどう考えるかを全く考慮できてなかったんです。こちらこそすみませんでした」


渡された物を目の前でしまうなら問題ないけど、ある時に物がなくなってて、後で収納スキルを持ってる人が近くにいたと発覚すれば誰だってその人を疑うだろう。

もし自分の物以外をしまうことになったら気を付けよう。


「もしかして今回の依頼を受けたのは収納スキルを使えば、鉱石の運搬を楽できる…そう考えたからか?」

「はい、まさにその通りです。自分の能力を有効活用できる…そう思ったんですけど、迂闊でした」

「なるほどなぁ、確かに収納スキルを使えば重さを感じないで、何人分もの鉱石を一度に一人で運べる訳か…それで銀貨2枚貰えるなら俺だって受ける」

「あの…運搬する鉱石は…どのくらいの重さなんですか?」

「俺の後ろにあるこれだな。30キロくらいのが5つ、それを街まで運んでもらう予定だった」


普通に運ぼうとすると滅茶苦茶キツいだろうなぁ…ツルハシをふって採掘して、30kgの物を街まで運ぶのを何回か繰り返す…銀貨2枚じゃ割りに合わないのでは?


「そんじゃあ運搬頼むぜ、街に着いたら疑っちまった詫びに運んだ鉱石を少し分けてやるよ」

「本当ですか!?早速しまっちゃいますね」


運ぶ予定の鉱石を次々スキルでしまっていく。

もちろん依頼主から見えるように、同じ轍は踏まないようにしなくちゃ。


「よし、街に戻るぞ」


ーーーーー


「これで全部ですね、確認をお願いします」


街に戻り、依頼主の案内のもと所有しているという倉庫へと通され、そこでスキルでしまった鉱石を全て出していく。

取り出せるかが不安だったけど、取り出して置くまでは重さを感じなかったので無事に運ぶことができた。

重さを感じないのは不思議に思うけど、そういうものだと思うことにしよう、神様からの特典万歳。


「…よし、確かに全部あるな。助かったぜ、これをまともに運ぼうとすると時間はかかる、疲れる、腰に来るだからな」

「お役に立ててよかったです」

「ちょっと待ってろ、依頼完了の書類を書くからよ」


依頼主は紙を取り出すと手早く何かを記入していく、2分ほどで書き終え僕に渡してくる。


「依頼によっては依頼主からの依頼完了の書類を提出する必要があるからな、失くすなよ。んで、詫びの鉱石はなにがいいんだ?」

「う~ん、僕が魔鉄鉱かどうか確認した鉱石でもいいですか?」

「構わねえぞ、ほらよ」

「ありがとうございます」


依頼主からさっきの鉱石を受け取りスキルでしまう。


【魔鉄鉱(純度:低)×1】


やっぱり魔鉄鉱って表示されるんだよね…というか、最初見たときは気にしてなかったけど純度ってなんだろう?

純度が低いって書いてあるし、もしかしてそれが原因で魔鉄鉱だと分からなかったんじゃ…


「また機会があったら頼むぜ」

「…はい」


せっかくくれるって言ってくれたし…コレクションが増えて嬉しいし…


「じゃあ…僕たちはこれで失礼します」

「おう、気ぃつけろよ」


そのままもらっておこう、何かあれば言ってくるだろうし…うん、これは臨時ボーナスだ。


「よかったですねグドウさん、追加の報酬が貰えて。その鉱石はどうするんですか?」

「しばらくは保管しておこうかと、使い道もよく分かってないですし」

「無理に使わなくてもいいですもんね。それよりギルドに戻りましょう、お腹も空いてきましたし」

「そうですね、僕もです」


お昼は何を食べようかな~、朝はあまり食べれなかったしガッツリしたものが食べたい。


「グドウさんはなおのことお腹が空いてますよね、犬にご飯を分けてましたし」


…あの犬はなんだったんだろうか?

ただお腹を空かせた犬…ではない気がするんだよね、野犬にしては汚れてなかったし。

キレイな青い毛並みだったな…また会えるかな。

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