色々あった1日
「結局、タンドップさんの夢って何なんですか?」
夢は叶えるのが大変なものだけど、周りから荒唐無稽とまで言われる夢って何だろう?
「えっと…いざ、応援してくれる人に言うのは恥ずかしいですね」
「あ、もちろん無理にとは言いませんよ。何となく気になるなってだけですから」
「…ロイン・ブレイボルのような冒険者になることです」
「ロイン・ブレイボル?」
人…なんだろうけど、さっぱり分からない。
有名な冒険者なのかな?
「えっ!?グドウさんロイン・ブレイボルを知らないんですか!?」
「す、すみません、世情に疎くて…」
「…お金の価値を今まで知らなかったですもんね、良かったらどんな人なのか教えましょうか?」
「お願いします」
ここで知っておいた方が今後また同じ話題になったときにスムーズに会話ができる。
即ち怪しまれない!!
みんなが知っていることを知らないと、身分証は有れど奇異な目で見られちゃうだろうし。
「ロイン・ブレイボルはどんな状況で、どんな敵と相対しても決して背中を向けることなく、勇猛果敢に立ち向かって行った…と言われている女性冒険者です」
「タンドップさんはそのブレイボルさんの勇敢さに憧れて冒険者に?」
「はい!自分以外が戦意喪失して戦えなくなっても自分を奮い立たせて絶対に諦めない戦う意思を背中で語り、周りをも奮い立たせてしまう…そんなかっこいい女性です!!」
話を聞いているだけでもすごくかっこいい女性冒険者だと分かる。
まだ戦闘をしたことがないから想像でしかないけど、逆境をものともせず戦い続けることがどれだけすごいことか。
「冒険者ランクも堂々のオリハルコン!!その上に容姿端麗で高身長…わたしも同じようになりたいんです!」
「きっとなれますよ」
「実はですね、ロイン・ブレイボルに近づくために色々やってるんですよ」
「例えばどのようなことを?」
苦手なことへの挑戦とかだろうか?
いつの間にやら普通に話せてるけど、最初は引っ込み思案なのかビクビクしながら話してたもんなぁ…他の人とも臆せず会話をできるように頑張ってほしい。
「えっと、身長が伸びるように毎日ストレッチをして好き嫌いせず食事をしっかり取って…」
「ん?」
あれ?予想してたのとだいぶ違うような?
「あとは早寝をしたり…ロイン・ブレイボルの身長に追い付くために頑張ってます!」
「…ちなみにロインさんの身長、あとタンドップさんの年齢は?」
「たしか175cmはあったかと、わたしの年齢は16歳です」
もしかして荒唐無稽って言われてたのは勇敢さどうこうじゃなくて身長のことだったのでは?
16歳になってから身長を30cm近く伸ばすのは…
「グドウさんが応援してくださることですし、これまで以上に頑張ります!」
まあ、夢を持つことは良いことだよね…うん…
ーーーーー
「着きました、ここが『スターリム』です」
タンドップさんに着いていき、日が沈みかけ空が茜色に染まるころに宿『スターリム』へと到着した。
宿の入り口には看板が立っていて、『新米冒険者大歓迎!此処が君の夢への足掛かりになりますように』と書かれている。
「今ならギリギリ部屋がとれると思います、急ぎましょう」
「そうですね、野宿は遠慮したいです」
早く横になりたいと思いつつ宿へと入る、そして目に飛び込んできたのは…
「いらっしゃ~い♡」
筋肉ムキムキ、2m近い身長、スキンヘッド、右目に切り傷、カイゼル髭、フリフリのエプロン、そんな情報量が多い男性がいた…男性のはず…
「あら、カウラちゃんおかえりなさい。と、そちらの僕ちゃんは?」
「は、初めまして、今日冒険者になったタカラ・グドウです。ギルドにおすすめの宿を聞いたところ、此処がおすすめだと聞いたので来ました」
「アタシはメンフェス・トランセンよ、此処の男将をやってるわ、気軽にフェスちゃんと呼んでね♡」
「ははは…よろしくお願いしますメンフェスさん」
「もう、恥ずかしがりやさん♡」
濃いひとだなぁ…悪い人ではなさそうだけど、少し警戒してしまう。
「フェスちゃん、部屋はまだ空いてますか?」
「タカラちゃんの部屋を取りたいのね?最後の一部屋が空いてるわよ、1日銅貨2枚で3日泊まるなら銅貨1枚はサービスするわ」
ということは500円で3日泊まれるってこと!?
食事が出ないとはいえ大丈夫なのだろうか?
「その顔、利益の心配してるわね。大丈夫よ、この価格は冒険者になって1ヶ月未満の人だけだから。それ以降は1日銀貨1枚になるわ」
「そうだったんですね、じゃあとりあえず3日でお願いします、銅貨がないので銀貨1枚でお願いします」
「お釣りの銅貨5枚ね。タカラちゃんの部屋は2階に上がって一番端の部屋よ、ギルドから聞いてると思うけど、食事以外のサービスを色々とやってるから入り用なら言ってちょうだい。これがサービス一覧ね」
「ありがとうございます、ふわぁ~…すみません」
どうやら結構疲れが溜まったみたいで、ついあくびが出てしまう。
いきなり死んでしまい、異世界にやってきて冒険者になった。
依頼も達成して安心して休める場所に来たからか、強い眠気が襲ってきた。
「だいぶ疲れてるみたいね、今日はもう寝ちゃいなさいな」
「そう…します…おやすみなさい…」
うつらうつらとしながら2階に上がり、なんとか一番端の部屋まで辿り着く。
扉を開けてベッドを確認したあと躊躇いもなく倒れ込む。
「…zzz」
眠りに落ちるまで時間はかからなかった。




