題名「見えない折紙をつかまえるはなし」
私は今日も今日とて内職をしている
今日の内職は折り鶴を折ることだ
「今日で7万羽折り終えねば・・・」
ひたすらに鶴を折り続ける
「だぁ~~~!!終わんない!」
毎日のように同じ作業の繰り返し・・・。思わず投げてしまった
せめて一人じゃなければなぁ・・・。
ピンポーン!
こんにちわー!秋さんいらっしゃいますかー!?
「この声は・・・」
聞き覚えのある声。玄関まで行ってみると
「僕くんだー!なになに?どうしたの?」
「いえ、近くを通りかかったので・・・。あっこれ、お土産です。」
「ありがとー♡気にしてくれて嬉しいよ」
こういうときは素直にお礼を言わないと次から持ってきてもらえない
「なにしてるんですか?折り鶴?うわっ!?」
奥を見ると山のように折り鶴があるのが見えて少し驚いた
「ああ~・・・内職がねごめんね・・・」
ちらりと僕くんに視線を送る
ちらっ
「手伝いましょうか・・・?あっでも、僕用事が・・・」
間髪入れずに
「わあ~たすかるわあ。じゃ、そこ座って?」
「えっでも用事が・・・」
「なに?」
「ナンデモナイデス」
僕くんにはスピードは期待していない。ただそこにいるだけで楽になるので少し強引に留まってもらった
「僕くん急がなくっていいからね?手、切ったら言ってね?手当してあげるから。」
救急箱を見せつつそんなことを言った
「ねえ?僕くんは好きな人いるの?」
会話がないと困るのでそんな質問をした
「秋さんです」
はっきり言って私は感心してしまった。なんと本人を目の前にして言うのだから
「またまた~wそんなこと言って同級生に良い娘でもいるんじゃないの?」
僕くんは躊躇ったように言った
「同級生は好きです。でも、恋愛のそれとは違う気がして・・・。」
「そ?」
僕くんは息を深く吸った。そして溜息をついた
「こんなおねえさんよりも同い年の方がずっと魅力的だと思うなー。」
僕くんは気付かれてないと思ってるかもしれないが息を最低限しかしてないのが分かる
「はい」
やっとの思いでそれだけ言うとまた深く溜息をついた
僕くんとは長い付き合いになる。おねえさんと友達だった私と幼いころから遊んでいたのだ。いつの頃からか僕くんにとっては姉の友達ではなくなっていたようだった
「僕くんはさ・・・こんな話知ってる?」
僕くんが作りかけの折り鶴を置いて座りなおした
「むかーしむかーし。ここら辺に人魚姫がいてね。周りの人たちに毎日のように歌声を聞かせてたんだって。でも、ある日不老不死になれるって言う噂話を聞きつけて村の人に殺されちゃったんだよね。それから10年後ある噂が村を駆け巡った。人魚姫がまた居るって。今度は昔食べた人魚の肉が旨かったとかなんとか言ってみんなでまた殺して食べたんだって。でもその次の日村一番の美女が消えてとうとう見つからなかったんだってさ。きっと人魚に変装してたんだろうね。その『美女』は・・・。」
ぱちぱちぱち!
「やっぱり秋さんの話は最高です!ぜひ、もっと語ってください!」
「君も好きだね~。じゃ、こんな話はどう?」
僕くんが食い入るように見つめる
「学校で1万怖い場所って知ってる?職員室?ノンノン。飼育小屋だよ。ある男の子は鬱憤が溜まっていたからちょくちょくうさぎさんで発散してたんだって。ある日それがエスカレートしてウサギを3匹殺しちゃったんだってさ。誰にもばれなかったから男の子は安心してたんだけど、よりによって好きな子にばれてたんだって。ね?学生には怖い話でしょ?」
「秋さん、小説家目指しませんか?」
私はつばを飲み込んだ。
「実はひそかに書いてるんだよね。もうすでに。みる?」
「はい!」
私は戸棚から原稿用紙を取り出した。この話は”雨の中で走って恋人をつかまえるはなし”だ
「いいですね。雰囲気が最高です。でも、」
秋さんは怖い話の方が面白い
「怖い話って長々とは続けられないんだよね。」
「短めって何文字くらいですか?」
「200文字」
「それじゃあ、ジェイソンはどうですか?」
「ジェイソン?」
「そうです。あれを参考に書いてみるのは?」
そういうと時計を確認してそそくさと帰っていった
外では雪が深々と積もっていた(何色かは知らん多分白だろ見てないけど)
折り鶴を折りながら内容を考えていた。これでは仕事になりません。
その日は徹夜で小説を完成させた
「パニックホラーか・・・。スマホの位置情報で追いかけられる話。」
新人賞を夢見て自転車で雪の中を走っていった
終




