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第一話 軍人少女は王都へ征く

(どうしてこんな事になったのだろうか?)





兵士輸送用の物よりもずっと乗り心地が良い馬車の中で私、フィオは一人悩む。




少し視線を下に見やると今までの人生で着けたことの無い、学園指定の制服のブレザーが見える。




もう少し下を向くとヒラヒラとしたスカートから自身の脚が見える。





(むやみに肌を晒すのは戦場では命取りなのに)





そう思い横に目を向けると、今年16歳となった自分よりもひと回りほど大人びた黒い髪のメイドがニコニコとしているのが見える。




次に、反対に顔を向けると馬車の車窓からは舗装された道にカフェや市場が並び、市井の人々が賑やかに生活しているのが目に入る。





そんな様子で視線が落ち着かない私を見かねたメイドのアンゼがニコリと笑い話しかける。




「お嬢様、周りをキョロキョロと見るのははしたないですよ。」




「しかしだなアンゼ、私はお嬢様と言われる教育を受けた事は無いし、手元に武器が無いのも何とも落ち着かない。」





戦場を駆けるとき常に携えていた剣は荷物として仕舞われてしまったし、愛着のあった軍用品の短射程魔出補助杖ショートスタッフは没収され、学園指定の模擬魔出杖ダミーのスタッフへと置き換わってしまった。




(これでは奇襲を受けた際に戦うのは心もとない)




そう言葉を続けようとするとアンゼから注意が入る。





「ここは王都ですよ、お嬢様。戦場からほど遠い此処でいっぱしの御令嬢が武器なんて持ちません。」





そう、此処は戦場のど真ん中では無くアラカム王国の王都で、向かう先も敵国兵士が待ち構える最前線では無く我がアラカム王国が誇る一番の魔法学校、アークケイルーン王立学校なのだ。





「今の貴方は王国軍第四師団のフィオ上魔尉では無く、初めての王都に緊張する第四師団長の一人娘、フィオ・アデーレお嬢様なんですから。分かりましたか?」




アンゼが私に厳しい目を向けるが、私もアンゼの違和感に口を出す。





「それはそうかもしれんが、それでは普通のメイドとや使用人と言う物は刃物や武器を隠し持つ物なのか?」




「あ、あら?お嬢様、わ、私は武器なんて携帯していませんよ。」




焦りながらも笑顔を絶やさないアンゼに即座に答える。




「右のブーツと両方の太腿、スカートの裏のそれは魔鉱か?軍供給品の持ち出しは王国軍法違反だぞ。」




「チッ、そんなもんわざわざ守ってる奴なんて一人も居ねえだろ」




「上官への口答えも軍法第4条違反だったと思うが?アンジェリカ二等魔曹」





私はそう答えると口を閉ざし、顔を王都の町並みに再び向けて初めに思ったことを反芻する。




(一体、どうしてこんな事になったのだろうか?)




そして私は先週の出来事を回想する。

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