第20話 探し人
「……で、今日はどこに行くんだ?」
ディーンは口を不自然に横に広げたあと開けた。唇の動きに口髭も変な形に引っぱられる。彼の目は呆れている。そこへロバートは陽気に答えた。
「今日は町で聞き込みさ!」
友人の方向の変化にディーンは方眉を上げる。
「花屋はもういいのか?」
「今まで花屋に限定していたからね。これからは町全体で情報収集しようと思って!」
そう言ってロバートは地図とリストを広げた。ディーンは地図をのぞきこむ。
「どこから始める?まさか一軒一軒家を訪ねたりしないよな?」
「そんな非効率的なことはしないよ。パーティーの参加者……それも店で働く人たちを中心に訪ねるよ。『この人を知りませんか?』って。」
ロバートは胸のポケットに入れた似顔絵にそっと触れる。今日は修道士の礼服ではなく襟のついたシャツを着ている。ディーンはじ~~っとロバートのポケットを見る。
「なあ。もう一度だけ似顔絵見ていいか?」
「だめ。」
ディーンが「か?」を言い終えるまえにロバートは即答した。ロバートは両手でささっとポケットを押さえる。
「あげないっ。これはもう僕のだからね!」
「いらねーよ!!お前のために描いた絵なんだから!!」
ディーンは見習いの画家だ。妙なこだわりがある修道士の友人に呆れている。
「オレにだってプロとして働く覚悟はある。代金をもらった依頼人から作品を取り上げたりしねーよ。」
しかし恋する少年がちゃんと聞いていたかどうかは定かではない。
「そのうち本物に会えるから別にいいだろう。いい?彼女は僕と先に会ったんだからね。取らないでね!」
「へいへい……。」
そう言って2人はまず酒場にいるサリーに会いに行った。もしロザリーが本当にジプシーだったらそこに行く可能性が高いと考えたからだ。後にロザリーはジプシーでないことが判明するが、彼らはそこへ行って正しかった。なぜならちょうどその日ロザリーがそこを訪ねたからだ。ロバートとディーンが来る2時間前のことだったが、彼女に追い付くのに十分間に合う時間だった。サリーからロザリーのことを聞くや否やロバートは飛び出した。
「おいロバート!待てって!」
インドア派の修道士をさらにまた別のインドア派の画家が追いかける。
「ロザリー……ついに会えるんだねロザリー!」
その目は輝いていた。普段しない激しい運動で体中が悲鳴を上げても、顔を赤らめた彼は幸せそうだった。その横を走りながらディーンは話しかける。
「ああ。まさか見つかるとはな!もし会えたらオレにコーヒーでも奢ってくれ。」
ロバートはぜえぜえ言いながら走った。
「サリーが……ロザリーはパーティーで会った娘たちの店に行くと言っていた……。だから近くの店に行けばきっと……!」
ロバートは店に片っ端から入った。大きな声で好きな少女の名前を呼んだ。彼女がいないと知るとすぐ店を出る。暴走する友人の代わりにディーンが店にいた人々に謝った。それを何回か繰り返しているとやがてミランダの雑貨屋に着いた。