86話
「春ちゃん、私からも良いかしら?」
嵯峨根さんとの話が一段落すると、今度は母さんが話し掛けてきた。
「勿論だよ」
「配信をする事に反対はしません。春ちゃんの好きにすれば良いわ。だけど、月坂さんと言ったかしら?その娘の事はどうするつもりなの?」
「質問に質問で返すのは悪いんだけど、どうするつもり?って言うのはどう言う事?」
意味を取り違う事もありそうな質問だけに母さんが言った事の意味を正確に知るべきだ。
「そのままの意味よ?春ちゃんの為に人生を賭けるなんて言ってくれた娘を春ちゃんはどうするつもりなのかを聞きたいの」
ふむ……一応俺の中で答えは出してある。その答えを言うか。
「月坂さんが人生を賭けるなんて言ってくれたんだから、俺も同じ様に月坂さんに報いるべきだと思っているよ」
「それじゃあ抽象的すぎるわ。具体的にはどうするの?」
むぅ……今日の母さんは一筋縄ではいかなそうだ。
「後々月坂さんと話すつもりだったけど、配信や動画投稿で得た利益を7:3で分けるつもり」
「春ちゃんが7なのね?」
「いいや、月坂さんが7だよ。勿論、月坂さんがどれくらい手伝ってくれるのかによるけど、場合によっては8:2も考えてる」
「それだけ?」
母さんはまだ納得がいかないらしい。
「これもまだ月坂さんには言ってないけど、もし失敗したら俺は日本にはいられないと思う。だから、海外に亡命する事になるけど、その時に月坂さんにもついて来て貰うつもりだよ。月坂さんも共犯者だから居づらいだろうと思うし……」
「簡単に亡命って言うけど、生活はどうするの?」
「日本みたいに男性優遇している国に行くつもりだよ。それに、お金は亡命先である程度纏まった額を借りるなり何なりする。返済の宛はあるんだ。また配信でも何でもして月坂さんと一緒に稼げば良いだけだから」
配信がダメだったしても最悪は俺の精子を売れば良いだけだからな……いや、借金の担保が俺の精子になる可能性が高そうだな。
「未成年の男女が簡単に借金できると思ってるの?」
簡単に考えていると思っているのか母さんは追撃してくる。一応母親だからこういう事は言いたくは無かったんだがな……
「逆に聞くけど、俺の精子が売れないと思う?担保にならないと思う?」
「「「せっ!?」」」
母さんだけじゃなく何故か愛莉さんや嵯峨根さんまで素っ頓狂な声を出した。
「日本では18からが精子提供は義務で、それまでは任意と言うか提供して下さる方大歓迎ってカンジでしょう?俺は今レンタル男性警護者のアイデア料でお金に余裕があるからしてないだけだから……」
海外の他の国も似たようなカンジだろう。男女比が偏った世界で精子は人工授精に使われるのだから、あればあるだけ良いのは簡単に予想がつく。
性の話だから恥ずかしいのだが、この世界では男性であればワイルドカードがあるのでお金に関してはそこまで気にする事では無いと思う。
「コホン、春ちゃんがある程度キチンと考えている事は分かったわ。ただ、それを相手にキチンと伝える事良い?」
「分かった。早めに話しておいた方が良いかもしれないね。いざその場になって言った所で動揺させるだけだろうし……後でデヴァイスチャットで言っておくよ」
ここで母さんの追及は止んだ。まぁ、母さんの追及は尤もな事だから怒りを感じる事は無い。
俺の話す事を月坂さんがどう判断するかだな。
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