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84話

 取り敢えず掃除用具を借りて俺の吐いたものは綺麗にした。


 そして、掃除の後に話を続行する。


 「あの、市原君をあんな風にした私が言うのはお門違いだと言うのは分かってるんですが、本当にこのまま話を続けるんですか?」


 月坂さんが俺の体を心配して言う。


 「精神的ショックを受けて戻してしまっただけなので大丈夫です。続けますよ?月坂さんが俺の為に人生を賭けられるとまで言ってくれました。それに対して俺は何と生ぬるい覚悟だったのだろうと猛省しました。取り敢えず、学校はしばらく休学します」


 「ええっ!?休学!?」


 流石にそれは予想外だったのか月坂さんが驚いた声を出す。


 「はい。ただ、京條さんがいますからね……最初は体調不良の欠席で、1か月経ったくらいに休学します」


 京條さんがいるから最初から馬鹿正直に休学しますなんて言えば俺が何か企んでいるとバレてしまう。


 「そして、休学にはいくつもの意味があります。まずは何と言っても時間を作れるという事です。言い方は悪いですが、今は学校に通う事より配信の為の時間を作る方が大事でしょう」


 動画の為の企画作りや撮影、編集だったり、配信の為の台本作りなどやらないといけない事は多々あるからな。時間はあった方が良い。


 「後は客観的な証拠になると言う事です」


 「市原君、時間を作る為と言う理由は納得出来ましたけど、客観的な証拠と言うのはどう言う事でしょうか?」


 説明していて俺自身抽象的だなと思ったが、やはり月坂さんに尋ねられた。


 「自分で言うのもなんですが、他の男子と違って真面目に学校に通っていました。そんな俺が休学すると言えばどうなるでしょう?必ず理由を聞かれる筈です。そして、休学の理由が先日の事にあるとすれば学校側は上流階級に対して不満を持つでしょう。せっかく毎日通ってくれる男子が入学してくれたのに余計なことをと……」


 「そう上手くいくでしょうか?それに、それがどんな客観的な証拠になるんですか?」


 「俺の目的は、配信で俺と上流階級のやり取りを話して味方を増やして世論で上流階級に対抗する事です。その際俺が言った事が本当かどうか調べられるでしょう。その時学校も尋ねられるでしょう。彼が言っている事は本当か?と……その時学校側が日和見するか本当の事を言うのかはまぁ、分かりませんが、上流階級に不満を持っていれば真実を話してくれんじゃないかと。そうなれば俺の話は本当だったと言う証拠の一つとなる筈です」


 学校云々は保険程度のものでしかない。本命はやはり配信中に上流階級とのやり取りの話をして視聴者を味方につけ、世論が上流階級の横暴を許すなと言う風になれば良いなと思っている。


 だが、最初から配信を始めた理由を正直に言った所で見ている人間が少ないから話は広まる事なく権力で握りつぶされるだろう。だが、十万人――いや百万人位に知られればどうだろうか?その全員の口を塞ぐのは無理だろう。


 だから、配信を見る人間がその位になれば配信の目的を話すのが良いんじゃないかと思ってる。


 「なるほど……気が長い話ですね。だから、休学してまで時間を作ると言う訳ですか」


 「あとは、俺だけ安全圏にいるのは違うと反省したからですね。月坂さんが人生を賭けると言っているのに俺がのほほんと学校に通うのは……」


 そもそも、京條家と嵯峨根家は俺に対して当主交代なんていう手まで使ってきた。俺なんかより力があるのにそんな事をするんだ。だったら、俺はその上流階級に抗うんだからもっと必死に――背水の陣を敷くべきだ。


 配信する事のデメリットが嫌なのはそれでも良い。でも、それと上流階級にとっての都合の良い種馬、どっちが嫌?って考えれば答えは出ている。


 俺にはなりふり構わずという気概が欠けていた。だけど、月坂さんに目を覚まして貰ったからな。


 俺は上流階級に本気で抗うぞ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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