80話
ふん。バレちまっちゃあ仕方がねぇ…という訳で事情を説明した。勿論、配信者ではなく動画投稿者を選んだ理由もだ。
「そうですか……全てに納得出来た訳ではありませんが、何となくは分かりました」
説明を受けた月坂さんはそんな微妙な反応をした。
「それで月坂さん、動画投稿者って言うのは上流階級への対抗力になり得るでしょうか?」
事情を説明した以上、積極的に意見を聞くべきだ。
「そうですね……市原君が若くてカッコいい男の子である事や性格の良さなどを考慮しても難しいと思います」
「そうですか……」
むぅ…やはり現実は厳しいという事なのか。
「ですが、それは動画投稿者だけに拘っているからです。配信もすれば勝算は十分あると思います」
「配信をすればですか?それは何故でしょう?」
「投稿された動画は編集等をされているので、良くない発言や表情等は削除されたり加工されている前提で見られます。その点配信ではLIVEな訳ですからどうしたって素の部分が出てしまいます。つまり、どんなに取り繕っても隠せないのです。世の女性はそれを分かっています」
ははぁ~勉強になるな。そんな事全然考えてなかったわ。
「それに、市原君が懸念している点はそこまで気にする事は無いと思っています。投げ銭が気になるならオフ機能を使えば良いですし、贈り物等も必要としていない事をアピールすれば物をねだらない稀有な男性配信者であると好印象を与える事が出来ます」
なるほど……要りませんと言えば良い訳だ。
「でもその……押しに課金したい的な欲と言うか、そう言うのはどうするんですか?課金させろとかグッズ出してとかですね」
俺も前世はオタク気質な所があったから予想は出来るんだよ。
「むむむ、市原君は何とも言えない事を言いますね……」
俺の発言に月坂さんは物凄く困った顔でそんな事を言う。
「市原君はあくまでも上流階級に対抗できる影響力を持つ事が目的なのですから、要望が出たなら受け入れてしまって、収益の幾らかを寄付してしまえば良いのではありませんか?」
「なるほど……ですが、投げ銭した人たちは寄付させる為に投げ銭したんじゃないとか言い出しませんか?」
よくある話だよ。そんな事の為に課金とかスパチャしたんじゃないんだよとか言われる配信者は珍しくないだろう。個人的には、あげたお金なんだから犯罪に使われなければ別に良いんじゃねぇ?とは思うが……
「ぐぅぅ…市原君が予想以上に我々の気持ちを理解しているのが不思議でならないのですが……」
「すいません。言い出したらキリが無いという事は分かっているのですが……」
「そうですね。ただ、市原君が配信をすれば市原君の良さを分かってくれると思うので、そこまで気にする必要は無いと思うんです。仮にそんな輩が出て来ても善良なファンの方達が自治で潰すでしょう。それよりも問題はコラボや案件ですね」
サラッと怖い事を言ったぞと思いつつコラボは確かにどうするか重要だな。
「顔出しして配信する事前提で話をしますが、市原君なら直ぐに人気も出るでしょう。そうなると直ぐにコラボしたいと言う配信者が出てくるでしょう。企業から案件も来ると思われます。市原君はどう考えていますか?」
「僕は基本的にはコラボするつもりはありません。嫌な言い方ですが、僕を利用しようとする気満々でしょうから……それに、僕の配信を見るのは女性が主でしょうから女性配信者とのコラボは絶対にNGでしょう」
前世でもあったからな。コラボで異性禁止とかマネージャーも異性だと炎上したりとかな。
「あっ!?月坂さんに手伝ってもらう気満々でしたけど、そういう事なら止めておいた方が良いかもしれませんね」
マネージャーが異性で炎上で気付いたが、月坂さんに手伝ってもらうと女の影的なので炎上するかもしれない。
「フフフ、それは寧ろ逆ですよ。市原君は稀有な男性配信者として売り出した方が良いので、寧ろ異性のマネージャーである私と親しい方が良い印象を与えられると思います」
そういうものだろうか?まぁ、配信に詳しい月坂さんが自信満々にそう言うのならそうなのだろう。
「あっ!サラッと言ってしまったんですが、手伝って貰えるんですか?」
「ここまで聞いておいて手伝わないなんて事あり得ないですよ」
満面の笑みで月坂さんが言う。
「ありがとうございます。なら、月坂さんは俺を立派な配信者にプロデュースする人だからマネージャーじゃなくてプロデューサーですね。月坂Pと呼んだ方が良いですかね?」
前世のアイドルをプロデュースする某ゲームに倣ってそんな事を冗談めかして言う。アレは男性版も女性版もあったからな。
「ぶっ」
「つ、月坂さん!?」
何故か盛大に鼻血を吹き出した。マジでそんな事あるんだな。
「押しを私がプロデュース――しかも月坂P呼びとかどこまでオタク女子の心を掴むと言うのだ……市原君、恐ろしい子」
でも、何か凄い満足そうな顔だったのでクラスメートの新たな一面を見てしまった気分になった。
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