76話
「さて、それでは本題に入りましょう。僕が今後どうするかという事ですが、予定していた事を大幅に変更しなければならなくなりました」
元々の俺の予定では上流階級と距離を置いて目立たずにのんべんだらりと過ごせたら良いなと思っていた。
だが、今回の件で上流階級の人間に俺と言う男の存在がバレるのは決定的だ。そして、嵯峨根家と京條家は強引な手法で婚姻を迫らないと言う書類があるから何とかなるが油断は出来ないし、他の上流階級の家も俺との婚姻を狙ってくる事は容易に想像出来る。
だから、何らかの対策を打たなければならない。そういった内容を二人に話した。
「私の聞き違いですの?目立たずに?のんべんだらりと過ごす?」
「いいえ、拙にもそう聞こえました。嵯峨根さんの聞き間違いではありません」
何だよ?言いたい事があるなら言えよ~聞くからさぁ。
「続けますよ。結局の所、上流階級に対抗する為の力がいると言う事になる訳です。そこでお二人に聞きたいのはどうしたらその力が手に入るのかという事です。僕も自分なりに考えた結果、一つだけしか思い浮かばなかったので是非意見を伺いたいのです」
「春人さん、まず聞きたいのですが、そもそも私がこの話を聞いて良かったんですの?」
「構いませんよ。どうせ嵯峨根家にしろ京條家にしろ僕がそう考える事は予想しているでしょうからね」
「そうですわね……それならば、私はやはりどこかの上流階級の家と繋がりを持つ事だと思いますわ」
まぁ、そう言うと思ってたし、それが一番手堅いのも分かるのだが……
「以前も言いましたが、それだと相手が嵯峨根家や京條家じゃなくなったと言うだけの話ではありませんか?意味が無いのですよ。それでは……」
「お待ちになって、繋がりを持つと言うのは何も婚姻だけがその方法という訳ではありませんわ。一番手っ取り早く手堅いのが婚姻と言うだけの話なのですわ」
ふむ…それは俺にはなかった視点と言うか、考えだな。
「なるほど……それは興味深いですね。是非具体的な例をお聞きしたい」
「婚姻以外だとやはり養子ですの。それ以外ですと、その……精子提供ですわね」
うん?養子は聞こえたが、最後に言った事はゴニョニョって言ったから聞こえなかった。
「すいません。最後が聞こえませんでした。何と言ったんですか?」
聞き返した言葉に心なしか赤かった顔が更に赤くなったような気がする。
「精子提供ですわ」
「……」
絶句した。と言うか開いた口が塞がらなかった。
「え~と、そのですね……国に精子提供すればお金が貰えると言うのは知っています。ですが、誰か特定の個人に精子提供する事は法律的に大丈夫なんですか?」
「勿論問題ありませんわ。これは男性側にも女性側にもどちらにもメリットがある事なんですの」
詳しく聞くと納得できた。まず女性側のメリットは国から精子提供と言うか精子を買うと、誰のものか分からないものを提供されるそうだ。つまり、誰々の精子が良いと選べない訳だ。まぁ当然と言えば当然だ。だから、若い男のものか少し年がいってる男のものかイケメンな男のものかブサイクな男ものかランダムで値段も一緒という訳だ。
なので、直接精子提供者を選べるのは途轍もないメリットだ。そりゃあ女性からすれば優秀な精子提供者から精子を提供して欲しいと考えるのは自明の理だ。
男の側のメリットは言うまでも無いな。国に精子提供するより高く買い取って貰える可能性が高いからだ。何かどこぞの質屋みたいな表現なのがアレだが……
あと、※イケメンに限るとか※25歳までに限るとかはあるらしい。まぁ、高額出すんなら当然の要求と言えば要求なんだろうが、前世で非モテだった俺には中々心を抉られるフレーズだ……
最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。