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73話

 俺たち三人が会場入りした事が開始の合図となった様で、司会のような人が前に出てきて今回の件の経緯等を説明していく。


 そして、原因と言える嵯峨根幸那と嵯峨根家当主嵯峨根和香と京條家当主京條桃香が俺に謝罪をし、書類を俺に手渡した。


 書類を受け取った俺は書類ではなく言葉で嵯峨根家と京條家に遺恨は無い事を宣言した。


 俺は一筆認めると言ったのだが、両家の一族総出の前で言葉にして欲しいと言われたのでそうしたのだ。


 さて、それではそろそろ終わりかと思ったのだがそうはならなかった。


 「ここで、皆様に大切なお話があります。私、嵯峨根家当主である嵯峨根和香と」


 「京條家当主である京條桃香は」


 「「今この時を持って当主を引退します」」


 「何!?」


 俺は思わず叫んだが、それは俺だけでは無かった。どうやら出席していた人たちも知らなかったらしい。


 「市原様は今後遺恨無しと仰って下さいましたが、その言葉に甘える訳にはまいりません」


 「嵯峨根家当主――では無かったですね。和香さんの仰る通りです。私たちが当主を辞する事で改めて遺恨無しと言う事を周知させたいと思っての事です。当然、責任を取って当主を引退するという事でもあります」


 クソが!!やられた!!完璧にやられた!!


 だから、言質を取った時に当主の名においてって言いやがったのか!!


 「次の嵯峨根家当主は私の長女和子(わこ)にと思っております」


 「京條家の次期当主も私の娘である千春(ちはる)にと思っています」


 「突然の当主就任でご迷惑をお掛けするかとは思いますが」


 「未熟な二人を皆で盛り立てていって欲しいと思います」


 「「宜しくお願い致します」」


 あちこちからパチパチと拍手の音がする。


 ふぅ~取り敢えず確認だ。


 あらかじめ書類に書かれていた強引な手法で婚姻を迫らないと言う方は大丈夫だろう。


 ただ、追加で記入して貰った方は駄目だ。当主の名においてと書かれている。つまり、今の当主は別の人物だから無効だ。


 って事はだ……今回のこの場で繋がりが出来た事は有効となってしまう。


 今からこの文言はどうなるのか?と聞きに行った所で無駄だ。今の当主は娘だから無効だと言われるだけだ。寧ろ、現当主に新たに約束させるとこちらの借りになりかねない。いや、案外その一石二鳥を狙ったのかもしれない。


 ただなぁ、一番ヤバいのは繋がりが出来てしまった事ではない。遺恨無しと言ってしまった事だ。


 つまり、今回の騙し討ちを責める事は出来ない。いや、責めたとしても謝罪されて終わりだ。遺恨無しって言った後に当主を辞めるって言われたから、その事に対して何かを要求したり報復は出来ない。要求をすればさっきも言ったが借りになるし、報復をすれば(只の男子高校生には無理だが)、遺恨無しと言ったのにと責められ無茶な要求を突き付けられるだけだ。


 そんなんだから確かにムカつくし、憤りを感じないわけではない。だがよく考えると、俺は所詮前世で少し社会経験があるだけの人間でしかない。そんな俺が上流階級の当主相手にここまで出来た事を寧ろ誇るべきだ。


 それに、逆に言えば言質を取ったからこそ当主二人を引退に追い込んだとも言える。まぁ、俺は得るものも無く、失うものも無くと言ったカンジだが逆に向こうはどうだろうか?


 今回の件は上流階級の間で広まるだろう。何せ当主二人が引退した訳だしな。原因は?とか調べられるだろう。上流階級の敵対勢力から多分ネチネチ責められるだろうなぁ……


 それに向こうが得たものは殆ど無い。俺との繋がりと言ったって、強引な手法で婚姻を迫らないと言うものは有効なのだから価値は半減していると言って良い筈だ。


 そう考えると向こうのほぼ負けという名の痛み分けだろう。


 さて、向こうで絶望的な顔をしてる嵯峨根さんを回収して家に帰ろう。あの顔を見れば何も知らされていなかったんだろうなってのは分かる。大丈夫。男性警護者は続けて貰う。


 寧ろここで嵯峨根さんを俺の男性警護者から解雇すると遺恨無しって言ったのにと責められるのは必至だ。


 いや~ホント良い勉強になったわ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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