71話
「春人さん!」
俺の後ろで警護していた太刀川さんが声を出す。
「急にお声掛けして大変申し訳ありませんでした。私に害意はありません。嵯峨根家当主の嵯峨根和香様と京條家当主の京條桃香様が市原様にお話があるそうですので私が呼びに参りました」
呼んでるって事は何か話があるって事だ。そういうことなら付いて行くしかないな。謝罪に来てる癖に俺を呼びだすとは何事かって言えるけど……まぁ、話の内容次第でブッ混んでみようか。今ここでこのメッセンジャーに文句を言っても仕方が無いし、文句を言わなければ向こうも油断するかもしれん。
ちなみに嵯峨根さんは今回の一連の騒動の原因なので、今日は俺の男性警護者としてでは無く嵯峨根家の嵯峨根幸那としての参加となっている。
なので、今は俺の警護をしているのは太刀川さんだけだ。まぁ、嵯峨根家の京條家へのアピールだな。キチンと反省させる為男性警護者として俺の傍には置いておきませんよと言うね……
「ふむ……良いでしょう。案内を」
「はっ。ご配慮有難く存じます」
メッセンジャーの後を俺と太刀川さんは付いて行く。
「こちらのお部屋でお待ちです。どうぞ」
控室の様な部屋の扉を開けて入るように促された。
「先ずは拙が」
「お願いします」
太刀川さんが安全の確認の為先に入室した。
「大丈夫です。どうぞ」
太刀川さんに言われてから入室した。
「初めまして、私が京條家当主の京條桃香と申します。先ずはどうぞお掛け下さい」
入室して直ぐに京條家の当主に自己紹介をされ、椅子に座るように勧められた。
「では、失礼します」
「初めまして市原春人様、私は嵯峨根家当主の嵯峨根和香でございます。この度は愚娘が大変申し訳ありませんでした」
俺が座ったタイミングで今度は嵯峨根家の当主に自己紹介と謝罪をされた。と言うか愚娘て……いや、意味は分かるよ。愚息の娘バージョンでしょ?だけど、初めて聞いたぞ。貞操観念逆転世界だとこうなる訳か……
「まずはお二方の紹介痛み入ります。ご存知でしょうが一応――市原春人です。一つお尋ねしたい事があります。先程嵯峨根家のご当主に謝罪をされましたが、それで終わりで良かったですよね?何故あんな大部屋を借りてあんな大人数を呼んだのでしょうか?」
怒涛の如く自己紹介から疑問を提示する。
「市原様が仰る事は御尤もです。ですが、私共は見栄や面目と言ったものを気にする少々面倒な所がありまして……」
嵯峨根家当主が上流階級は見栄や面目を重視するからこんな面倒な事をしていると言う。
「嵯峨根家のご当主の仰る通りなのです。市原様と少々不幸な行き違いがありました。そこで、簡単な場で謝罪をして終わりとなれば他家の者から市原様を軽んじているのではないか?と言われてしまいます」
京條家の当主が補足説明する。
なるほど…この二人もうある程度合意が出来てるんだな。ふぅ~ハイリスクローリターンな方法を選ばなくて良かったぜ。
「勿論、他家の事が無くとも市原様に対して一族総出となればこちらの謝罪の誠意がより伝わると思っての事でございます」
ったく~とんでもないなぁ~上手い事言いよる。
「なるほど……それは大変恐縮ですね。それなら、今回のこの場を利用して僕と繋がりを作ろう、持とう等と言う不届き者はいない訳ですね。素晴らしい事です」
「「っっ!?」」
おっ!?今の俺の発言に二人共表情が一瞬強張ったぞ。
「おや?返事がありませんね?まさかとは思いますがそのような輩が会場にいると言うのですか?そうであるならば僕はここで失礼させて頂きます。流石に趣旨が違いますからね。あくまで嵯峨根家と京條家の謝罪を受け取るのがここに来た目的ですので……」
キチンと釘を刺す。さぁ、どうする?
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