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閑話 問題はどこまで広がるか

 ごきげんよう、私は嵯峨根幸那と申しますわ。職業は男性警護者をしておりますの。今は素敵な男子高校生の男性警護者をしていますわ。


 そんな私ですが、やってしまったのですわ……


 私の警護対象者である市原春人さんが京條家に行く事になった事から私は焦ってしまったんですの。


 私と春人さんの関係は男性警護者と警護対象者でしかありませんの。ですが、京條家の千夏さんはクラスメートで私よりも年が近いのですわ。


 千夏さんは私が春人さんと関係が深いと思って覚道事件以後の上流階級の掟によって遠慮していますが、京條家に行った時に春人さんが私との関係を素直に言ってしまったら……


 春人さんを千夏さんに取られれば太刀川さんはともかく私は春人さんと婚姻する事は出来ないのですわ。


 それなら。京條家に行く事を逆に利用して私と春人さんとの関係を確固たるものにすれば良いと考えて私との婚約をと提案したのですが……


 春人さんには断られてしまいましたわ。


 それに、仮に京條家が後から出て来て春人さんを搔っ攫ったとした時の嵯峨根家の事はどう対応する?と問いかけた事が間違いだったとは思いませんの。


 ですが、上流階級の人間として大事な事を忘れていましたわ。春人さんと覚道事件について話していたのにも関わらず不甲斐無いですわ。大事な事とは追い詰められた人間は何をしてもおかしくは無いという事ですの。


 八条院の当主は普通では考えられない様な事――八条院玲央に縁談を持ちかけた全ての家の令嬢と婚姻するなんてとんでもない事をしましたわ。


 太刀川さんが聞いた亡命という言葉は噓ではないと思いますの。追い詰められた春人さんが前々から考えていた事を思わず口に出してしまったとしか思えませんの。


 普通の男性が国外に亡命すると言ってもはいはいと流す所ですが、春人さんの場合は記憶喪失によって普通の男性の常識が通じませんの。


 それに、共学校に毎日通うし、宿泊研修にすら参加する行動力がありますわ。春人さんが国外への亡命を考えたとしてもおかしくは無いですし、成功する可能性は十分ありますの。


 ましてや春人さんは見目麗しく女性に対する忌避感や高圧的な所も無いのですわ。それだけの優良物件ならどの国であっても諸手を挙げて歓迎する事は容易に想像できますの。


 つまり、春人さんの国外への亡命は春人さん自身の行動力と春人さんを受け入れる国の助力によって成功する確率が非常に高いのですわ。


 そうなれば、春人さんに亡命をさせる原因となった私だけの問題に留まらず、嵯峨根家や京條家にまで問題が飛び火する事は間違いありませんわ。


 いえ、もしかしたら嵯峨根家や京條家だけに留まらず上流階級全体の問題にまで発展する可能性までありますわ。


 何せ覚道事件以降、上流階級の家の中には男性との婚姻を強引に行う所も出てきたので世間からの印象が良くないのは周知の事実ですの。それを考えればあり得ますわ。


 直ぐにお母様に事情を説明し、京條家にも話をして貰わなければとんでもない事になりますわ。


 私の焦りが原因とは言え、説明するのは憂鬱ですわ。 

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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