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66話

 「嵯峨根さん、先程上流階級の偏見云々と言っていましたが、ここまでの話からは上流階級に対して最悪の印象しかありません」


 俺はハッキリと言った。話に付き合わされた太刀川さんも険しい表情で俺の言葉に頷いた。


 「返す言葉もありませんわ。ですが、第二の八条院家の悲劇が起きない様に上流階級も無い知恵を絞ったのですわ」


 苦笑と言うかもはや自嘲と言っても良い様な顔で嵯峨根さんが言う。


 「悲劇が起きない様に…ですか……」


 嵯峨根さんに当たったって仕方が無いのだが言わずにはいられなかった。


 「そう言われても仕方が無い事は重々承知ですの。ですが、お聞き下さいませ。まず、上流階級同士で婚姻する場合は必ず直接両家同士で婚姻する事となりましたの」


 「え~と……至極普通の事だと思いますけど?」


 「いいえ、あの悲劇の様に男性を介して複数の家が結びつく事を危惧しての事なのですわ」


 あ~つまり、ある男性に複数の上流階級の娘と婚姻させて親戚になるって言うのはダメって事だな。


 「他にも、上流階級の娘が男性と婚姻する際に男性の()()()()()()()に他の上流階級の家の者がいれば婚姻する事は出来ないというものもありますの」


 なるほど……それも対策の一つと言う事か。


 「そう言う対策をして悲劇が起きない様にしていると言うのは分かりました。ですが、それがどうしたって言うんです?」


 何故そんな話を()するのかが分からない。


 「っっ!?嵯峨根さん、貴方と言う人がそんな人とは思いませんでした!!」


 何故か急に太刀川さんが嵯峨根さんに激昂する。


 「はぁ?えっ!?何を怒ってるんです?」


 そりゃあ太刀川さんは険しい表情をしていたけど、急に激昂するような話だったか?


 「フフッ、流石に春人さんでも分かりませんでしたの?春人さんは数日後京條家に向かわれるでしょう?そうなれば春人さんを京條家に取り込みたいと目を付けられるでしょう。京條家との縁談――婚姻を回避するのにわ、私と婚約をしておけば回避できますわ」


 えっ!?何だって?嵯峨根さんと婚約?


 「あ~それで男性の婚姻相手もしくは婚約者云々の話をした訳ですか……ですが、それだと仮に京條家との縁談は回避できても嵯峨根家と言うか嵯峨根幸那さんと婚姻しないといけないという事ですよね?それって意味ないですよね?」


 これってアレに似てるよな?あの世界的に有名な海賊の王になる話の仲間を賭けての戦いで、敵船長を名指しで仲間にすれば最後が不戦勝で確実に勝てるけど、敵船長が仲間になるよ?いや、それは要らねぇ……ってヤツに。


 「それに、別に僕は京條さんが嫌いという訳でもありません。なので、別に無理に今、嵯峨根さんと婚約する意味は……」


 京條さんに別に悪いイメージは無い。そりゃあ京條家に取り込まれるのはう~ん……と思うけど、俺が京條さんを好きになる可能性が無きにしも非ずだから嵯峨根さんとの婚約はそうなった時に寧ろマイナスだよな。


 「……」


 嵯峨根さんが顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。


 「先程は状況に付け込んで春人さんと婚約しようとする嵯峨根さんが許せませんでしたが、これは流石に……」


 太刀川さんが激昂から一転して気の毒そうに嵯峨根さんを見る。


 「状況に付け込むですか……そういうカンジはしませんでしたね。自分が避けられている状況から八条院玲央の話になって京條家に行く事になった事などの状況を渡りに船位は思ったのかもしれませんが、善意からの提案だったと思います。だから、丁寧にお断りしたんです。そんな理由では嵯峨根さんと婚約は出来ません。逆に失礼です」


 実際婚約って言う時ドモってたし最後の方は声が上ずってたからな。例えるなら、親が来るから恋人の振りしてって言ってやり過ごしてからの本当に付き合っちゃう?的な?微妙に違うか。まぁ、ニュアンス的に伝わってくれたらそれで良い。


 「あ~策士策に溺れるというやつですか……」


 太刀川さんが不憫そうに居た堪れなさそうに言う。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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