62話
番場さんとの負けに近い痛み分けの話を終えて家に送って貰った。
「お帰りなさいませ春人さん、訓練は如何でしたか?」
帰って来て嵯峨根さんと太刀川さんにどうだったか聞かれてので起こった事を話す。
「私、番場さんに話を聞きに参りますわ。春人さん、宜しいですか?」
俺が話し終えると嵯峨根さんが焦った顔をしてそんな事を言う。
「今日は休みって事ですし、僕もこれから外出する予定はありませんのでそれは構いませんが……」
電話と言うかデヴァイスじゃダメなの?と思いつつ良いですよと言う。
「それでは行って参ります。誠に申し訳ありませんが、何かあれば太刀川さん、よろしくお願いしますの」
「はい。万事お任せください」
二人がそんなやり取りするのを眺めつつ課題しないとなんて事を思った。
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「失礼します。春人さん、少しお話したい事があるのですが宜しいですか?」
部屋にいた俺は帰って来た嵯峨根さんに部屋の外から声を掛けられる。
「話ですね。分かりました。今開けます」
嵯峨根さんと太刀川さんが住み込みするとなって俺の部屋に鍵を付けるという事になったのだ。まぁ、プライバシーの問題もあるしと思って受け入れた。一応二つ鍵を付けているが、俺は男性警護者の二人が本気なら鍵なんて意味が無いのでは?と思っているが流石にそれは言わない。
「リビングに行きますか?」
「いいえ、もし春人さんが構わないのでしたらこのまま春人さんの部屋で話をさせて頂きたいですわ」
ふむ……わざわざ俺の部屋でって事は聞かれたくない話をするって事か?
「分かりました。中にどうぞ」
俺は嵯峨根さんを部屋に招き入れる。
「失礼しますわ」
「どうぞ」
床に座る嵯峨根さんにクッションを差し出す。
「ありがとうございます」
「それで嵯峨根さん、番場さんと話は出来ましたか?」
俺は嵯峨根さんが話を切り出すのを待たず俺から切り出した。
「出来ましたわ。番場さんからは――」
なるほど……やはり西田さんの為に行った事だったのか。俺を排除と言うか辞めさせる為の嫌がらせと言うのは考え過ぎだった様だな。
それもまぁ、番場さんが本当のことを言っていればではあるが、それは今ここで言っても仕方が無い。
「と言う事ですので、春人さんの推測は考え過ぎだと言う事ですわ」
「そうでしたか……わざわざ僕の為にお手数をお掛けして申し訳ありませんでした。ありがとうございました」
う~ん……嵯峨根さんは番場さん寄りなのか。そりゃあ俺と番場さんは立場が違うんだから当然考え方や思惑は異なる。そして、今回は運良く決裂は避けられた。
勿論、絶対に相容れないという訳ではないが、いつそうなってもおかしくは無い。
だからこそ絶対的な味方になって欲しいとまではいかないが、一応は俺の男性警護者なのだから俺側に立って欲しいと思ったのだ。
上流階級の件もあるし、嵯峨根さんとの関係は少し考えよう。
「春人さん、話はまだ終わっておりませんの」
「はい?」
そんな事を考えていた所為で少し反応が遅れた。
嵯峨根さんが悲壮な決意の様なものを固めた顔で言う。
「春人さんは、宿泊研修から私に対して距離を取っていますわね?それは何故ですの?理由をお聞かせ願えますか?」
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