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51話

 4月11日、早いものでもう夕食の準備の時間だ。


 早過ぎだって?昨日の夜の研修は入学前までの振り返りについてだったので、俺は記憶喪失なので参加しないで良いと言われたので参加せず部屋で休んでいた。


 2日目の今日は、博物館と美術館に行った訳だが……


 察して欲しい。特に話すような事は無かったんだ。


 で、研修宿泊施設に帰って来て夕食準備となった訳だ。


 ただ、移動中のバスの中で今日は1年3組全員で夕食の準備をしないか?と言う話になって、メニューはカレーに決まった。そんな中で京條さんが申し訳なさそうだったのは印象的だった。


 「僕の男性警護者の分も用意しないといけないので、少し多めに10人分位で作るのが良いかと思うんですが……」


 「そうですね。カレーであれば少し多めに作っても問題ないと思います」


 俺の提案に宇津野さんが賛成してくれる。


 「担当はどうするの?千夏っちゃんは戦力外だとして…あと5人いるからね」


 「市原君が作ると言うのに私が参加しないのは――」


 「気にしないで下さい。適材適所というヤツですよ。料理が出来ない事は悪い事ではありません」


 右田さんの発言に京條さんが申し訳なさそうに言うが、俺がその発言を途中で遮って言う。


 「右田さん、発言にはもう少し気を遣って下さい」


 「りんねるがそれを言うの?だけど、ごめんね千夏っちゃん。別に千夏っちゃんを貶めようと思って言ったんじゃないんだよ?」


 月坂さんが右田さんを窘め、右田さんは京條さんに謝罪する。


 「えぇ、右田さんに悪意が無い事は重々承知です。あくまで役割分担を明確にする為の確認だったのでしょう」


 「役割分担の話ですけど、肉担当、野菜担当で分けませんか?」


 友永さんが脱線した話を戻した。


 「肉より野菜の方が量が多くなりそうですから、肉は僕一人で後は皆さん野菜をお願いしても良いですか?」


 その友永さんの発言に乗って提案する。


 「良いと思うよ。市原君が手際が良いのは昨日見て分かってるしね」


 右田さんの発言に全員納得がいったのか取り敢えず肉担当、野菜担当で分かれて作業を開始した。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 牛肉を切り終えた俺は他のクラスメートの所へ行く。


 「こっちは終わりました。そちらはどうですか?」


 「もうちょっとで終わります」


 俺の問いに月坂さんが答えてくれる。


 「順調ですね。後は肉と野菜を鍋で炒めて水を入れて沸騰させてルーを入れて完成ですね」


 「あ~それなんだけどさ…市原君は甘党?辛党?」


 右田さんがとんでもない火種をぶち込んでくれた。


 「あ~甘口、中辛、辛口とありますからね……僕はいつもは甘口と中辛半々で作ってます。他の皆さんはどうですか?」


 まぁ、カレーにこの問題はつきものだろう。


 「私は中辛、千夏っちゃんとりんねるが甘口、くおりんとまひるっちゃんが辛口なんだよねぇ……」


 おいおい、見事に分かれたな。


 「もうこうなれば、鍋を分けて、甘口、中辛、辛口で作りませんか?」


 「そうですね。それが無難ですね」


 俺の提案に月坂さんが賛同してくれる。


 「そうですね。甘口派の人に中辛や辛口を食べろと言うのは酷ですから……」


 辛口派の宇津野さんも賛成する。


 「それじゃあここからは甘口、中辛、辛口のそれぞれで作ろう?」


 と言う事で、それぞれの派閥ごとに分かれた。


 「いや~市原君が中辛派で助かったよ~私一人で心細かったんだから……」


 「それにしても見事に綺麗に分かれるとは思いませんでした」


 中辛派と言っても甘口寄りの中辛派だけどな。だから、甘口でも問題無かったんだが、逆に良かったかもな。


 「それで、先程話したように僕は中辛と甘口半々の男なんですが、それでも良いですか?何ならここでも鍋を分けると言う手もありますけど?」


 そう、純粋な中辛では無い俺との相性がどうだろうと思っての提案だ。


 「私は一緒でも良いよ?」


 右田さんよ。そんな簡単に一緒で良いと言って良いのかな?


 「ちなみに何ですが、カレーはサラサラ派ですか?ドロドロ派ですか?」


 そう、まだこの問題もある。カレーとは業が深い食べ物でもあるのだ。


 「私はどっちも好きだから特にこだわりは無いかな」


 「何…だと……」


 あっけらかんと言う右田さんに俺は驚愕の声を上げた。


 「市原君はどっち派なの?」


 「僕はドロドロ派です。これだけは譲れません」


 カレーって最後の方はどうせルーがサラサラになるんだから、最初はドロドロで良いだろうと思うのだ。ましてや、最初からサラサラだと最後の方は……って言うのが俺がドロドロ派の理由だ。辛口はともかく、中辛と甘口なら別にどちらでも良い。ただ、辛さの方は譲歩できてもルーのサラサラ、ドロドロは譲れない。


 「OK~それなら、市原君に作って貰おうかな~こだわりあるみたいだし」


 「ありがとうございます。右田さんにご納得頂ける品を作る事をお約束します」


 「ハハハ、それじゃあ期待してるね」


 右田さんは俺の決意を軽く流した。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 

 嵯峨根さんと太刀川さんの分もいれると4人分だが、多めに6人分で作り完成した。


 「他の人たちも完成したみたいだよ」


 他のクラスメートの所も見てきた右田さんが言う。


 俺は直ぐに嵯峨根さんと太刀川さんを呼びに行った。


 俺達3人の分を右田さんが盛り付けてくれていた。


 「ありがとうございます」


 「気にしない~私も早く食べたいからさ~」


 4人で他のクラスメートが座っている席に行き、カレーを思う存分食した。 

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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