41話
4月7日 今日は金曜日なので、今日学校が終われば土日休みだ。懐かしいなぁ。
「春人さん、到着しました」
「ありがとうございます。それじゃあ、職員用の玄関に行きましょう」
俺が他の生徒同様に下駄箱を利用するのは安全面から推奨されないので、他の男子生徒と同様に職員用の玄関を利用するように言われた。他の男子生徒は半年に一回程度の登校だから職員用を利用するらしい。まぁ、半年に一回程度しか登校しない男子生徒の為にわざわざ下駄箱を用意するよりは経済的だわな。
「先導します」
職員用の玄関でスリッパに履き替えたら太刀川さんの先導で教室に向かう。
俺は一人で教室に向かえると言ったのだが、安全面を考慮してと言って嵯峨根さんと太刀川さんは譲らなかった。
太刀川さんは俺を教室に送り届けたら男性警護者の待機室に向かう。
「えっ!?男子がいる!?」
「噓!?」
「かっこよくない?」
そんな声が聞こえてくる。
うん。太刀川さんがいなかったら囲まれてたかもしれないから先導して貰って正解だったな。
「太刀川さんの言う通り、先導して貰って正解でした。ありがとうございます。これからもお手数をお掛けしますがよろしくお願いします」
俺は歩きながら言う。
「拙も嵯峨根さんも春人さんはもっと自分が魅力的な男性だという事を自覚して欲しいと思っています」
「はい……」
「1年3組、ここですね」
「はい。それじゃあ、行ってきます」
教室の前で言うのも変なカンジだけど、何も言わないのもアレだしな。
「おはようございます」
俺は教室に入ると同時に挨拶をする。
「「「「「おはようございます」」」」」
俺以外のクラスメート全員から挨拶を返された。
「皆さん、早いんですね?」
流石に全員揃っているとは思わなかった。
「あ~うん……そりゃあねぇ?」
月坂さんが意味深な返しをする。
「市原君に遅刻ギリギリに来るようなだらしない女って思われたくないので……」
京條さんが恥ずかしそうに言う。
「あ~そう言う……何か申し訳ないですね。ただ、僕自身は別にギリギリに来る事をだらしないなんて思いませんよ。特に女性は朝の支度に時間が掛かるでしょうから無理に早く来なくて良いと思いますよ」
男なんて朝起きて、ひげ剃って(今の俺に髭は生えてないが前世では毎日シェーバーで剃っていた)、顔洗って、朝ごはん食べて、歯を磨いて、着替えて終わりだからな。結構時間ギリギリまで寝られる。
だけど、女の人は化粧があるからなぁ……アレが結構時間かかるらしい。
「市原君は優しいね」
右田さんが嬉しそうに言う。
「男は朝の支度なんてすぐ終わりますからね。女性の皆さんには頭が下がります」
特にこの世界の女性は男性に選ばれる為に物凄い努力をしていると思う。母さんでさえ、バッチリメイクをしている。『誰に見せる訳ではないけど、もし不意に男性と遭遇した時に最高の状態でいたいから……今は春ちゃんにも見られるしね』と言っていた時は本当に脱帽だと思った。
嵯峨根さんや太刀川さんも朝からキッチリしている。片方は休みなのだから別にパジャマとかでも良いと思うのだが、俺の目があるからという事らしい。住み込みって大変なんじゃあ……と俺なんかは改めて思った。だって休みの日まできっちりとしないといけないんだぜ?俺は無理だな。
「女性の努力を理解してくれる男性は本当に貴重な存在だと思います。女は身綺麗でいるのが当たり前と思っている男性も多いですから……」
宇津野さんが悲しそうに言う。宇津野さんはもしかしたら過去に男性に何か言われたのかもしれないな。
「あ~それはそうと市原君、市原君でも流石に来週の宿泊研修には参加しませんよね?」
少し暗い雰囲気になってしまったので友永さんが気を遣って話題を変えてくれた。ナイスだ!
「いいえ、参加しますよ?」
「ええっ!?参加するんですか!?」
友永さんが俺の返答にオーバーなリアクションをする。
「ダメですか?僕も少しでもクラスの皆さんと距離を縮める為に1年3組の一員として参加したいなと思っていたのですが……」
そう、4月10日月曜から2泊3日で開黎高校が所有する研修宿泊施設で宿泊研修があるのだ。まぁ、クラスで仲良くなる為のよくある最初の行事だな。
「私たちは嬉しいのですが……市原君のご家族は反対されなかったんですか?」
京條さんが恐る恐る俺に尋ねた。
「実は反対されました。だけど、せっかくの機会ですし、僕の男性警護者の方に参加して貰うっていう条件で学校側とも相談して許可を取り付けました」
俺一人の参加は母さんがメチャクチャ渋るもんだから、嵯峨根さんと太刀川さんの参加を学校側に提案してOKを貰ったので、仕方なくと言ったカンジだが母さんから許可が下りた。当然俺は他の生徒とは別で職員たちと同じ宿泊施設で尚且つ嵯峨根さんと太刀川さんと同部屋だ。
「ご家族に反対されたのに参加して下さるんですね。不謹慎ですが、宿泊研修が楽しみになりました」
良かった。宇津野さんがクスッと笑ってくれた。
「あれ?宇津野さんは市原君がいない宿泊研修だったらそこまで楽しみじゃなかったって事?」
右田さんが宇津野さんにおどけて言う。
「そ、そういうつもりで言った訳では……」
顔を赤くして宇津野さんが言う。
「皆さんおはようございます。それでは、朝のHRを始めます」
真清田先生が良いタイミングで入って来たので話は終了した。
最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。