40話
まぁ、良いかな。別に悪意を感じたりはしなかったし、あくまでクラスメートに馬鹿な真似はするなよって諭してるカンジだしな。
「では、他に質問はありませんか?」
「はい」
「では、友永さん、どうぞ」
次に手を挙げたのは友永さんだった。
「市原君に質問です。その~記憶喪失と言うのはどう言う事でしょうか?勿論、個人情報ですから答えたくなければ答えて頂く必要はありません」
言い終わった後に申し訳なさそうに俺に向かって頭を下げた。
まぁ、当然気になるよなぁ。これは答える必要があるな。
「え~記憶喪失なった原因についてはプライベートな事なので言えないのですが、病院の医師の診断書もあります。それを学校側には確認して頂いた上で入学しています。と言った様な答えで良いですか?」
俺は友永さんに返答した。流石に男子校の受験に失敗しての自殺未遂が原因ですって言うのはマズいからな。
「は、はい。お答え頂きありがとうございます」
「では、他に何か質問はありませんか?」
「はい」
「では、宇津野さん、どうぞ」
宇津野さんか……どんな質問するのか気になるなぁ。
「私も市原君に質問です。何故基本的には毎日学校に通いたいと思ったのでしょうか?」
また俺に質問かよ!!と思いつつ中々良い質問だなとも思った。
「最低月一回通えば良いのに何故毎日通うのかと思われるのは当然ですね。理由は色々あるのですが、一番の理由は女性との関わりによって女性に慣れなければいけないと思ったからです。男性の25歳までの婚姻義務は周知の事実だと思います。仮に高校でも男子校に通うとなれば18まで女性との関わりが無いという事です。ましてや、高校を卒業すれば家から出る事すら殆ど無くなるでしょう。そうなった場合、残りの7年で女性と出会い、関わり、婚姻まで出来るのか?と考えた時、難しいなと自分は思いました。なので、共学校で女性との関わりを増やして自分の未来に繋げなければと考えたからと言う答えで良いですか?」
流石に性行為をして子供を設ける義務について言うのはセクハラと言うか気まずいから言わなかったけど、噓偽りない答えだ。
「なるほど……では、もし市原君が誰かと婚姻をすればそれ以降は学校には来なくなるという事でしょうか?」
「「「「「っっ!?」」」」」
宇津野さん以外の先生を含めた五人が息を呑んだ雰囲気を感じる。
「そうですね……そうなってみないと分からないですが、今の所よっぽどのことが無い限り在学中に婚姻する事は無いと思います。また、婚姻や他の何らかの理由で登校日を若干減らす事はあるかもしれませんが、月一という事はないかと思います。こんな答えで良かったですか?」
「はい。非常に興味深い内容でした。回答ありがとうございました」
「え~では他に質問はありませんか?」
「はい」
「では、右田さん、どうぞ」
まぁ、ここまでくると一人一回みたいな空気になるよね。
「私も市原君に質問です。女性との関わりを増やして女性に慣れたいと言ってました。具体的にはどう言う女性との関わり方を考えているんでしょうか?また、私達クラスメイトとの関わりについてどう考えているかも聞いてみたいです」
これまた意外な質問だ。これも答える必要があるな。
「そうですね……正直に言いますが、特に何かする事を考えていた訳では無いんです。ただ、漠然と休み時間に授業の事を話したりとか、テストが近付けばみんなでテスト勉強したりとか、そういう事の積み重ねで慣れていければ良いなぁと……こんな答えですがどうでしょう?」
「市原君は私が想像していた男性像とは違うなと思いました。回答頂きありがとうございます」
「え~それでは、月坂さん、何か質問はありませんか?」
あっ!?とうとう最後の一人に直接聞いたな。
「あります。私も市原君に質問です。さっき、在学中に婚姻をするつもりは無いと言っていましたが、それは何故でしょうか?許嫁の様な婚姻を約束した相手がいるのでしょうか?プライベートな事ですので答えたくないという事であれば無理に聞くつもりはありませんが問題が無い範囲で聞きたいです」
あ~高校生で結婚ってのに忌避感があるのは前世の価値観の所為だが、それだけが理由ではない。
「そうですね。やっぱり勉学の妨げになったり、この開黎高校でしか出来ない経験や、やってみたい事、やらなければいけない事等々を考えると在学中に婚姻しようとは思えないって言うカンジですね。勿論、そういう諸々より婚姻したいと思える相手に巡り合う事が出来たならその限りではありません。なので、よっぽどのことが無い限りと先程言いました。あと、婚姻を約束した相手はいません。こんな答えですがどうでしょう?」
「ありがとうございます。もう一つだけ聞きたい事があります。市原君が婚姻したいと思う相手とはどんな女性でしょうか?」
お~ぐいぐい来るねぇ~だけど――
「あぁ……それはちょっと答えられないですね。答えたくないでは無く、答えられないです。恋はするものじゃなくて落ちるものって言うじゃないですか?だから、その時になってみないと分からないと思います。申し訳ない。こんな答えしか出来そうにないです」
恥ずかしいが噓偽りなくハニカミながら答えたぞ。
「ヤバ……あ、ありがとうございました」
うん?最初なんて言ってたのかは聞こえなかったが答えには満足して貰えてよかった。
「ち、丁度時間ですね。それでは、本日は以上で終了です。また、明日の朝元気に会いましょう。起立、気をつけ、礼」
「「「「「「ありがとうございました」」」」」」
今日は終わったようなので、男性警護者の待機室に行って嵯峨根さんと合流して家に帰ろう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。