39話
「はい。皆さん、自己紹介ありがとうございました。残りの時間が40分程あります。残りの時間は皆さんからの質問の時間にしたいと思っています。学校の事でも良いですし、これから三年間共に過ごすのですから自己紹介で気になった相手の事を聞いてみたりでも良いです。ただ一点注意があります。当然の事ですが非常識な質問はダメですよ」
うん。真清田先生よ…多分俺に対して失礼な事を質問するなよって事なんだろうけどさ……
「あ~真清田先生、先生はご存知かと思いますが、自分、記憶喪失ですのでまだ常識云々に疎い所がありまして……」
「「「「「「っっ!?」」」」」」」
先生を含めた全員が絶句した雰囲気を感じた。
「ごめんなさい市原君、でも今のは市原君に向けての発言じゃなくて――」
「はい。理解しています。ですが、非常識云々と言われると質問がしにくいです。なので、質問する内容は自由として答えるかどうかはその回答者次第という事でどうでしょうか?」
先生の言葉を遮り言う。
「市原君がそれで良いと言うのなら……」
先生は俺の発言に戸惑いながら答える。
「では、早速ではありますが自分からいかせて頂きます。先程教室に案内されるまでに思った事なんですが、教室の窓は外から覗いても中は見えません。その理由は何故でしょうか?また、外から見えないという事は一種の密室です。気を悪くしないで頂きたいのですが、危険等は無いのでしょうか?」
取り敢えず流れで先程の疑問点と答えにくい内容を質問してみる。俺が先陣を切れば他のクラスメートも質問しやすくなるだろう。
「え~と……教室の窓についてですね。これは男子生徒を女子生徒の視線から守る為にそうしています。危険は無いのかと言う事なんですが、今まで問題が起こった事はありません。ただ、今までは半年に一回程度登校する男子生徒しかいませんでした。市原君は当然それに当て嵌まりません。なので、現段階で危険な事は無いと言い切る事は出来ません。こんな回答で良かったかしら?」
「答えにくい質問にも関わらず丁寧にお答えいただきありがとうございます。自分の質問は一旦ここで終了します。また何か思いつけば質問させて頂きます」
「分かりました。他に何か質問がある方はいませんか?」
そんな先生の声に他のクラスメートが手を挙げた。
「はい」
「では、京條さん、どうぞ」
「はい。今の先生と市原君とのやり取りで、今までの男子生徒は半年に一回程度登校すると仰っていました。私は、男子生徒は最低月に一回は登校しないといけないと聞いていました。お答え出来る範囲内で構わないのでその齟齬について教えて頂けますか?」
あ~俺は事前に聞いてたけど、普通は隠したい事だもんなぁ。どう答えるんだろうか?
「そうですね……本来であれば皆さんもそうなる筈でしたから、気になると思います。なので、正直に答えます。勿論、最低月一回の登校は義務となっていますが、現状守られていません。本来それは、良くない事です。しかし、仮に男子生徒を出席日数が足りず留年とした場合何が起こるか皆さんも理解できるでしょう?」
先生はここで一旦言葉を切って俺以外のクラスメートを見る。
クラスメートは想像出来るのか下を向く。
「そう言う事情があって学校側も強く出られないのです。そんな中、市原君は基本的に毎日通いたいと言ってくれています。ハッキリ言います。皆さんは在校生、そして今までの全ての卒業生達より恵まれた環境にいると断言します。どうか、その事はキチンと理解して欲しいです」
いやいや、そんな事言われると休めないじゃん。いやまぁ、ズル休みする気は今の所無いけどさ……
あと、ちゃっかり学校側の問題から俺の話にすり替えてるな。指摘するかどうか悩む。
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