38話
入学式は特に問題なく終わった。メチャクチャ視線を感じたり、隣に座る先生が何故か物凄く緊張していたりとかはあったが、問題無いったら問題無いのだ。
で、俺は新入生が退場した後に一人での退場になったのだが、入学式である事に気が付いた。
それは、1年全体の数言い換えると一クラス当たりの人数が物凄く少ないと言う事だ。事前に男子生徒は一クラスに一人でどこのクラスになるのか分からないと聞いていたのだが、まさか一クラスに五人しかいないとは思わなかった。
俺達世代は男女比1:10と聞いていたので、一クラスに最低十人、多くて二十人位と思っていたのだが、一クラスに女子五名、男子一名の計六人なら×5クラスで一学年で合計三十人と言う事になる。一クラスの間違いじゃねぇ?と思ったが、偏差値が高い共学校なので狭き門になっているのかもしれない。
話を戻そう。俺は『一応入学式も終わったし、帰っても良いよ?疲れたでしょう?』なんて隣に座っていた先生に言われたが、たかだか一時間位椅子に座っていただけで疲れるも何もないので、このまま自分のクラスに行きますと言った。そしたら、その先生が1年3組まで案内してくれる事になった(真清田先生は他の1年3組の生徒と一緒に退場した)ので一緒に教室に向かう事になった。
1年3組の教室に向かう途中で、教室の窓から教室の中が見えない様になっている事に気付いた。男子生徒に対する配慮の一環なのだろうな。だけど、外から見えないなら一種の密室だろ?中で何かが起こっても助けを呼べないと言うか異変に気付けないのでは?と思ったので、後で真清田先生に聞いてみようと思う。
「着きました。私は中の真清田先生にお話をしてきますので、もうちょっとこちらで待ってて貰えますか?」
「分かりました」
俺はそう返事をして自分が呼ばれるまで待った。
「市原君、中に入ってくれる?」
俺を案内してくれた先生が教室から出て来て俺に言う。
「はい。ここまで案内頂きありがとうございました」
ペコリと頭を下げる。
「全然、全然気にしないで!私、これでもこのクラスの副担任だから」
「そうだったんですか!?」
俺がこの先生の隣だったのはそういう理由があったのかもな。
「そうなんです。改めまして、1年3組の副担任を務める事になった夏野歩です。副担任は3年間一緒なのかは決まってないけどよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします。夏野先生」
俺はペコリと頭を下げてから教室に入室した。夏野先生は職員室に戻るそうだ。
「はい。それじゃあこのクラスの男子生徒の市原春人君です。市原君、自己紹介大丈夫?」
何故か心配そうにこちらを見て言う。
「大丈夫です。只今ご紹介に預かりました市原春人です。用事や体調不良等が無ければ基本的には毎日通いたいと思っています。これから三年間よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると同時に拍手が起こった。
「はい。それじゃあ市原君はあの席ね」
「はい」
女子生徒が五人固まっていて、少し離れた入り口近くの所に俺の席がある。男子生徒への配慮だろうな。
図にするとこんなカンジだ。■が俺だ。
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「それじゃあ、友永さんから自己紹介、もう一度お願いね」
あ~俺の所為でもう一度自己紹介させる事になるのか……申し訳ない。
「はい。友永久折です。○○中出身です。趣味は映画鑑賞です。市原君と三年間一緒に過ごせる幸運に感謝しています。よろしくお願いします」
パチパチと拍手する。黒髪ショートカットで身長が高い○塚みたいな子だ。そう言えば俺の趣味は言って無かったな。まぁ、アニメ、ラノベ大好きです。なんて言えないのだが……
「それじゃあ、次は右田さん」
「はい。右田アリスです。見た通りハーフです。でも、英語が苦手です。でも趣味は洋楽を聞く事です。まさか、入学式から市原君と顔合わせできるなんて思っても見ませんでした。そんな市原君と三年間過ごせるのが楽しみで楽しみで仕方がありません。よろしくお願いします」
パチパチと拍手する。長い金髪で見たまんまハーフだなって子なのに、英語苦手ですって言ってるのに趣味は洋楽聞く事とか言う自己紹介のネタ強すぎひん?
「はい。次は宇津野さん」
「はい。宇津野まひるです。○○中出身です。趣味は読書です。今読んでるのは榊いち子の『この先の世界と日本の50年を論ずる』です。市原君の様な男性に出会ったのは初めてなので非常に興味深いです。これから三年間よろしくお願いします」
パチパチと拍手する。うん。落ち着いたカンジの子だね。眼鏡に長い黒髪で図書委員的な?それにしても俺の事を興味深いと言うんだな。まぁ、そんな事を言っても俺が不快になって怒らないと確信しての発言だろうな。君の方が興味深いよと俺は思う。
「はい。次は京條さん」
「はい。京條千夏と申します。○○中出身です。趣味は園芸です。家ではチューリップを育てています。あと、たんぽぽコーヒーが自分の中でブームです。私も宇津野さんと同じで私達を見て嫌な顔しないし、キチンと自己紹介を聞いて下さる市原さんの様な男性がいるなんて思ってもいませんでした。これから三年間は勿論ですが、その後も末永くよろしくお願いしたいと思っています」
一瞬、教室の雰囲気が重くなったが、パチパチと拍手する。と言うか艶やかな長い黒髪とか立ち居振る舞いで上流階級の人だなぁと俺でも分かる。太刀川さんの見た目大和撫子詐欺じゃなくて園芸が趣味とかで本物っぽいカンジがしたけど一瞬だったな。最後の肉食的発言で台無しだ。結局、太刀川さんと同じで見た目詐欺だよなぁ……
「はい……最後は月坂さん」
「はい。月坂凛音です。○○中出身です。趣味は動画配信サイトで新人を発掘する事と推し活です。市原君が配信者になったら沼に嵌まる事間違いなしです。京條さんじゃないけど、卒業した後も市原君を推していきたいと思います。よろしくお願いします」
パチパチと拍手したが、さっきまでの四人より少し音が小さかった。みんな戸惑ったんだな。なんせ五人共個性豊かだけどこの子は群を抜いてってカンジだもんな。ショートカットの茶髪でギャルっぽいから陽キャなのかな?と思ったけど、やってる事はオタク女子なんだよなぁ……配信は気になってたからちょっと話をしてみようかな。
ってな感じで自己紹介は終了した。
最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。




