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34話

 俺はビルの中に入った。


 入った瞬間ビルの中にいた人たちの視線を集めたが、気にする事なく受付と思われる場所に向かう。


 「おはようございます。こちらは受付となっております。本日はどう言ったご用件でしょうか?」


 おぉ!?流石は企業の顔とも言える受付業務をしているだけあって、内心は驚いているのかもしれないがそんなそぶりを微塵も見せないのは素晴らしい。


 「え~と……すいません。市原美優はまだ会社にいるでしょうか?」


 いや~母さんいますか?って言うのを丁寧に言うのって難しいな。母親に市原美優様って言うのは変だしな……


 「大変失礼かとは思うのですが、お客様は当社の市原とはどう言ったご関係でしょうか?」


 怪訝そうな顔で尋ねられた。


 まぁ、当然の反応ちゃあ反応だなぁ。相手が何処の誰かもわからないのに簡単に居場所とかを教えられないよな。


 「これは失礼致しました。私は市原春人と申します。いつも母がお世話になっております」


 俺は言い終わると同時にペコリと頭を下げた。


 「母!?って事は息子さん!?何で!?」


 流石にパニックってしまったのか素で反応してしまっていた。


 「実は母がデヴァイスを家に忘れて行ったみたいで、届けに参りました。それで…母はまだ会社にいるでしょうか?営業――外回りって言うんでしょうか?それに出ていないでしょうか?」


 「はっ!?大変失礼を致しました。直ぐに確認いたしますので少々お待ち下さい」


 俺の言った事で正気に戻ったのか謝罪をし、デヴァイスでどこかに連絡をし始めた。


 「確認が取れました。市原が直ぐに参りますのでもう少々こちらでお待ち下さい」


 「ありがとうございます」


 そう言って待つ事数分――


 「春ちゃん!?」


 母さんが慌てた顔でやって来た。


 「母さん、ゴメン!!」


 開口一番に謝罪をした。


 「えっ!?何、何!?急にどうしたの?」


 「俺が忙しい朝にあんな話をしたからだよね?デヴァイスを家に忘れてたんだ。それで、俺の所為だと思ってデヴァイスを届けに来たんだ」


 そう言ってデヴァイスを手渡した。


 「そう……わざわざありがとう。嵯峨根さんと太刀川さんも……あれ?」


 何かに気付いたのか母さんは辺りをキョロキョロと見渡す。


 「春ちゃん、嵯峨根さんと太刀川さんは?」


 ギギギと擬音が付きそうな位ゆっくりと俺の方に顔を向ける。


 「嵯峨根さんと太刀川さんは午後からお試しだからいないよ?」


 「えっ!?まさかとは思ったけど一人で来たの!?」


 「あのさ~俺ももう今度高校生になるんだよ?幼稚園生の初めてのお使いじゃないんだからさぁ~家からここまでタクシーに乗って一人で来れるよ」


 少し苦笑気味に俺は言う。


 「春ちゃん……」


 母さんは何故か残念なものを見る目で俺を見る。


 「あら?春ちゃん、何を持ってるの?私のデヴァイスを届けに来たんじゃなかったの?」


 俺が手に持っているものが気になったのか聞いてくる。


 「あ~これも渡しておかないとね。流石に手ぶらでお邪魔するのは良くないと思って手土産買って来たんだ。こっちの小さいのは母さんの上司の人用で、こっちの大きい方は同僚の人たちに配る用ね」


 そう言って紙袋を渡した。


 「それじゃあ、用は済んだし帰ろうと思ったんだけど、アレだよね?母さんの職場の人に挨拶しておいた方が良いよね?」


 「何を言ってるの春ちゃん?」


 「いや~だって母さんがお世話になってる訳だし、何もしないでハイさよならで良いのかな?と思って……」


一応常識として挨拶くらいはしておくべきだし、何よりこの世界では男は貴重な存在だ。そんな俺が挨拶でもすれば母さんの評価が少しでも上がるかもしれない。やっておいて損は無いだろう。


 「市原さん、宜しければ私が里方課長に一報入れておきましょうか?」


 受付の人が母さんに言う。


 「えぇ、そうね…お願いするわ」


 何故か死んだような表情で母さんは言った。


 最終的に母さんの上司の人に挨拶をしてから、タクシーを呼んで家に帰った。 

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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