33話
取り敢えず恥ずかしくない位に身だしなみを整えた。あと、防犯の為に嵯峨根さんから借りているリストバンド型の防犯ブザーを手に付けた。
今の俺は外に出ても恥ずかしくない顔だから出掛けるのが苦にならない。前世では家族の知り合いに会う――ましてや親の仕事先に行くのなんて頼まれたって嫌だと思っていた。親に恥ずかしい思いをさせたくなかったからだ。
とは言っても、春人は外出なんてほとんどしていなかった所為で着ていく服が限られている。前世ならそれでも良かったが、変わると決めた今の俺は服も買いに行かないといけないなと思った。
なんて事を考えているとタクシーが来たのでそのタクシーに乗り込む。
後部座席にタッチパネルが埋め込まれていて、そのタッチパネルに目的地が表示されている。間違いが無ければ出発ボタンを押して下さいと書かれてあった。
母さんに貰った名刺と見比べて間違いが無い事を確認して出発ボタンを押した。
後は母さんの仕事先で降りて母さんにデヴァイスを渡すだけなのだが、いきなり行って母さんに会えるのだろうか?
普通は会社の受付で要件を言ってってカンジだよな?ってかそもそも母さんは会社にいるのか?企業に自社製品を売る仕事って事は営業って事だろ?それなら外回りに出てるって事もあるよな?マズったかなぁ……
「しまった!?」
思わず声に出してしまったが、母さんにデヴァイスを渡さないといけないって事しか考えてなくて母さんの会社の人に会ったらどう挨拶するのか?とか考えてなかった。
それに――
「何かお菓子とか要るよな……」
そりゃあ目的は母さんにデヴァイスを渡す事だが、手ぶらでお邪魔するのは失礼では無いだろうか?仕事の邪魔をする訳だし……
タッチパネルに目的地の変更と言う所があったのでそれを押す。
すると、何処に目的地を変更するかと表示された。
あ~この辺のコンビニの住所とかを調べないといけないのか?
「すいません」
俺はロボットに話し掛けた。
「どうしましたか?」
思ったよりは流暢に返事が返ってきた。ロボットだから片言の返事が返ってくると思っていたんだが……
「目的地に行く前に近くのコンビニに寄って欲しいんですけど……」
「畏まりました。目的地を変更します」
「ありがとうございます」
前世ではコンビニのレジの奥の上にある棚にちょっとしたお土産とかお菓子を売っていたので、コンビニに寄って欲しいと言ったが、冷静に考えるとこの世界でも売ってるのだろうか?平行世界の150年先の未来だぞ?とも思ったが、言ってしまったものは仕方が無い。
結論から言おう。置いてあった。男が一人で現れた事で若干騒ぎになったが、女性に襲われるとか体を触られるとかそういう事は無かったのでまぁ…良かったという事にしておこう。手土産も買えたし結果オーライだ。
タクシーに戻った俺はロボットに元の目的地に出発して欲しいと言って出発して貰った。
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コンビニを出発してから20分位して――
「目的地に到着いたしました。お会計は3850円です」
そう言われたので、タッチパネルにカードを読み込ませて支払った。このカードは母さんから貰った電子マネーのカードだ。この世界では電子マネーが普及していて現金支払いは殆どないらしい。何を隠そう、昨日の買い物の時もこのカードで支払いをした。まぁ、現金だとお釣りとかのやり取りをロボットが出来るのか?ってのはあるよな。
そんな話はともかく、俺がタクシーから降りた先に大きいビルがあった。看板に母さんの仕事先の名前が書いてある。ここだな。
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