31話
3月1日、自分の意識を変えていくと口で言うだけ、思ってるだけじゃダメだと一念発起した俺は忙しい朝の時間で恐縮なのだが母さんにある事を尋ねる事にした。
「スキンケア?」
「そう、何て言うか前世の頃からモテたいモテたいって言ってた割にじゃあどんな努力してたの?って言われると……だから、この世界でモテる自分に懐疑的ならモテる努力をしてるからモテるんだっていう意識に持っていこうと思って……」
身綺麗にしてたとか恥ずかしくない格好をしてたってのは当たり前なんだよな。モテたいならそれ以上に抜きん出た何かが無いといけないって分かってたけどその努力をしなかったんだよなぁ……
「朝の洗顔はしてたけど、じゃあ洗顔用の石鹼使ってたのか?保湿液、顔に塗ってたか?寝る前に顔パックしてたか?とか考えるとしてなかったなぁ~って……」
「そうなのね~昨日の話を聞いて早速行動に移すのは良い事だと思うわよ」
母さんにニヤニヤされながら言われるが気にしない。
「朝の忙しい時間に悪いとは思ったんだけど、母さんは朝忙しいからとか言い訳して逃げない様にと思ってさ……ゴメン」
「うんうん有言実行って事ねぇ~取り敢えず今日は私が使ってるのを使えば良いわ」
そう言って保湿液と洗顔クリームを渡された。
「ありがとう。今日もお試しで出掛けるんだけど、美容関係か服飾関係の所に行ってみたいなと思ってるんだ」
敢えて母さんに言うのは言い訳しないように逃げないようにと思っての事だ。
「あのね春ちゃん、頑張る事は良い事よ。だけど、頑張り過ぎるのも良くないわ。自分が逃げないように追い込もうとするのはキツくないかしら?」
「それは……」
「春ちゃん、一番大事な事は楽しむ事よ。楽しい事じゃなければ続かないわ」
「っっ!?」
母さんのその言葉に胸を打たれた。そうだ。前世の俺だって全く努力をしなかった訳じゃない。分からないなりにデパートに行って良い服買ったりバッグ買ったりアクセサリー買ったりとかしたんだ。
だけど、続かなかった。楽しくなかったんだ。服は上下で3万、バッグは1万、アクセサリーも1万、サングラスが2万、財布が8万、計15万だったから、その金で他の欲しいもの買えたのにとか思っちゃったんだよなぁ……
「焚きつけるような事を言った事、今では少し後悔してるわ。春ちゃんを追い詰めたくて言った訳じゃないの」
「いいや、これで良いと思ってるよ。凄い幸運な事に母さんが俺をイケメンに産んでくれた。それに胡坐を搔いてるだけじゃあダメだ。宝石と一緒なんて言うのは烏滸がましいかもだけど、磨かないとね」
「そう……だけど、一つだけ良いかしら?何でも一気にするのは良くないわ。今日はスキンケアの為の洗顔クリームだったり保湿液だったりパックだったりを揃えるって言うのはどう?」
「うん……そうするよ。確かになんでも一気にするとしんどくなって続かなくなるもんね」
こればかりは前世の反省を生かすべきだな。




