28話
「う~ん…これかな」
店員さんに案内をして貰い。俺が探していたお玉は二つあり、握ったり振ったりして感触を確かめ少しお高い方を選んだ。
「それじゃあお会計しましょうか。店員さん、レジまで一緒に良いですか?」
店員ロボットがいるからと言われる可能性も考慮しつつ、男の俺が言えば断わるのは難しいだろうなと考え言うだけ言ってみた。一応監視もしておきたいし……
「あ、あの!もし宜しければ中華鍋もご一緒に如何ですか?」
まるで精一杯の勇気を振り絞ったかのように店員さんは言う。
「あ~中華鍋使いたいんですけど、家はIHみたいで……」
家を出る前に確認したがIHの様なので中華鍋は使えない。
「IH対応の中華鍋もございます。しかも、その中華鍋はお玉もセットです」
少し嬉しそうに店員さんが言う。
「マジですか!?IH対応の中華鍋とかあるんですねぇ~それは是非見てみたいです」
「ご案内します。こちらにどうぞ」
そう言って店員さんが先導してくれた。
「こちらの商品なのですが……」
「ほうほう…確かにIH対応と書いてますね~鍋のサイズは28ですか……」
店では32の鍋を使っていた。鍋自体も重いんだよなぁ……
「だけど、28で良いですね。そんな6,7人分とか作る訳ではないですし……」
ただ、お手入れはどうするか……
「店員さん、店員さんに聞いて良いか分からないんですが、お手入れはどうするんですか?中華鍋は料理をすればするだけ焦げが鍋に付着します。ガスコンロなら鍋に火を当てて灰にして洗うと言う手が使えますけど、IHだとそういう訳にはいきませんよね?」
店では大体週一回のペースで鍋を焼いていた。まぁ、店と違って一日に何百人分も作る訳ではないから焦げが酷くなったら買い替えなのかねぇ~
「お客様、そのお手入れ方法は鍋が変形する恐れがある為お止め下さい。そこまで使っている場合は寿命だと思って買い替える事をお勧めします」
あ~確かに鍋を焼き過ぎると変形したり鍋にヒビが入ってたのを見たな~懐かしいなぁ。
「そうですね。ありがとうございます。このお玉もセットになっているものを頂きたいと思います。お会計をお願い出来ますか?」
「はい。ありがとうございます。レジはこちらです」
値段はギリ一万はしなかった位だ。
「と、ちょっと待って下さい。中華包丁ってありますか?あっ!?中華包丁って銃刀法大丈夫ですかね?」
実は俺が働いていた某中華チェーンでは、新入社員の時に全員が中華包丁を買わされるのだ。しかも、中華包丁を上手く使えるか審査もあったのだ。それで、電車で審査会場の本社に移動する時とかに見えない様にしろよ。銃刀法で警察に捕まるぞって先輩とか店長に言われたんだよなぁ……
んじゃあすんなよとか思ってたんだが、それを思い出した。
「拙がお答えします。銃刀法に当たるかは正当な理由の有無です。買って帰る時に警察に見つかっても捕まる事はありません。正当な理由に当たります。あと、持ち運びの時に剥き出しのままはいけません。タオルを巻くなどしないと違反となります。そして、防犯の為、護身の為と言う理由で持っていると捕まります。それは正当な理由とはみなされません」
ほぇ~そうなんだ。流石は太刀を持つ男性警護者だな。つまり、見えない様にって言われてたのは剝き出しのままにするなって事だったのかもしれないな。
「丁寧な説明ありがとうございます。それなら大丈夫ですね。すいません。中華包丁も良いですか?」
「ありがとうございます。ご案内します。こちらです」
結局、中華包丁と砥石も買う事になり、中華鍋のお玉もセットのものを合わせると2万ちょっとした。
「それじゃあ食品売り場に行く前に車に戻ってこの荷物を置きましょう」
流石にこの荷物を持って食品売り場を回るのは肉体的にキツイし、警備面でもよろしくは無いだろう。
「拙が荷物を置いてきます」
そう言って太刀川さんは車に向かった。
「太刀川さんが戻ってくるまではこの場で待機ですわ」
「分かりました」
また壁を背にして太刀川さんを待つ。
「戻りました。食品売り場に向かいましょう。先導します」
太刀川さんが先導する。
「食品売り場では何を買いますの?」
食品売り場に着くと嵯峨根さんに尋ねられた。作る料理は回鍋肉、マーボー豆腐、トリチリ、チンジャオロース、ムーシーロー、ニラ肉の予定だから……
「油、卵、豚肉、鶏肉、ひき肉、キャベツ、キクラゲ、ニラ、もやし、人参、タケノコ、ピーマン、豆腐、マーボー豆腐の素、回鍋肉の素、チリソースって所ですね」
チリソースとかマーボー豆腐と回鍋肉は素買うのかよと思われるかもしれないが、自分でタレを作る手間を考えると既製品を使った方が良い。変な失敗が無いしな。
「鶏肉って言いましたけど、冷凍食品のから揚げとかで良いんです」
鶏肉を揚げて唐揚げを作ってチリソースに絡めるのは手間だからな。ここでも既製品を使う。野菜も切れてるものだったりで時短したい。
ってな事を考えながら食品売り場を回り品を選んでショッピングカートに入れる。
「ふぅ~これで買い忘れはありませんね。帰りましょう」
食品売り場でのお会計は1万2000円ちょっとだった。
あの有名な中華の素のメーカーは生き残ってて流石だなと思ったり、卵が10個入りで498円で鳥インフルの時でもそこまでいかなかったのにしぇ~~~って思ったり、冷食の唐揚げを見てる時に、名前が知られていたあの有名な冷食メーカーが無かったのでどうなったか聞くと、他の有名な冷食メーカーに吸収合併されたと聞いてふぇ~~って思ったり、新鮮だった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。