表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/238

27話

 結論から言おう、ショッピングモールで正解だった。


 と言うのも、話し合いが終わり家のキッチンの確認と冷蔵庫の中の確認をしていて気付いたのだ。


 お玉が無い。お玉と言っても料理を取る為のものじゃない。そうだな……中華料理屋の料理人がチャーハンを盛りつける時に使うお玉と言えばイメージできるだろうか?


 あんな細長いお玉を一般家庭で使うかと言われれば……


 てなわけで、まずは食品売り場ではなく調理器具売り場?に行かなければならない。


 「着きましたわ。まずは太刀川さんがドアを開けてから降りて下さいまし」


 移動中の車の中で回想をしていると嵯峨根さんが太刀川さんに言う。どうやら着いたようだ。


 「嵯峨根さん、太刀川さん、先程も言いましたが先ずは調理器具を売っているコーナー、或いは店に向かいたいです」


 「仰っていたお玉ですわね。先ずは案内板を確認しますわ。参りましょう」


 「拙が先導します」


 そう言われたので、太刀川さんの後を付いて行く。ショッピングモール自体は俺が想像していたのと大差は無かったが……


 「あの~人の気配が感じられないんですけど……」


 ゴーストタウンと言うか、ホラーとかパニック映画で人がいないショッピングモールがあるがあんなカンジだ。駐車場もガラガラと言うか、パッと見では俺たちが乗って来た車以外は一台もない。前世では考えられない光景だ。


 「中には店員ロボットがいますの」


 店員ロボットかよ!!


 「春人さん、ここは男性専用施設です。店側は男性が来る場所に女性を置いて何か問題があれば大変な事になります。客側の女性は男性の付き添いでしか入る事は出来ません。となればこのような光景はおかしなことではありません」


 なるほど……色々考えた結果な訳ね。


 「すいません。てっきり男性専用施設って事で男が来るからと思って出待ちと言うか、男との出会い目当ての女性がいるのでは?と思っていました」


 「春人さんの懸念は御尤もで的外れなものではありませんわ。実際男性専用施設が出来た当初はそうした女性で溢れていたそうですの」


 嵯峨根さんが悲しそうに言う。


 「ですが、そうした事態を知って男性が施設に行く事が無くなった為、政府が法律で男性専用施設に入るには緊急事態でやむを得ずの場合と男性の付き添い以外では禁止したのです」


 太刀川さんも同様の表情で言う。


 「なるほど……それなら基本的には安全ですしはぐれたら云々も杞憂ですね」


 何も言わなかったのは俺が思っていた以上に男性専用施設に人がいない事が理由だったんだな。


 「そうは言っても女性がいない訳ではありませんわ。どうしたって施設の維持に人の手が必要不可欠ですの」


 「そうですね。女性がいる以上可能性としては何が起こってもおかしくは無いから気を抜くなという事ですね?」


 そりゃあそうだ。こんなデカいショッピングモールでロボットだけとかあり得ない。警備面でも営業面でもな。


 「案内板です。拙が確認します。嵯峨根さん、春人さんをお願いします」


 「承りましたわ。春人さん、壁を背にして頂けます?」


 太刀川さんはそう言って案内板に向かい嵯峨根さんが俺を壁にもたれかからせ前を守っている。


 「後ろが壁なら安全って訳か……」


 「あら?分かりますの?」


 意外だと言う声音で嵯峨根さんが言った。


 「複数を相手にするなら背中はどうしても気にしないといけない。それなら壁を背にすれば後ろを取られる事は無い。ですよね?」


 「ふふっ。その通りですわ。ちなみに普通の男性ですと、指図するなとか何故そんな事をしないといけない等言われますの」


 嵯峨根さんが良い笑顔で言う。やはり思う所があるのだろうな……


 「戻りました。2階に食器と調理器具売り場があるのでそこに向かいましょう。先導します」


 「分かりました。嵯峨根さん、それじゃあまた後ろをお願いします」


 ってな具合で2階に来た訳なんだが……


 「男!?」


 「春人さん!下がって!!」


 店員ロボットではなく女性店員と遭遇した様だ。


 「大丈夫です。太刀川さんと嵯峨根さんがいますから。相手は一人でしょう?」


 俺が見た限りでは相手は一人だ――が、伏兵がいないとも限らない。けど、たまたま遭遇しただけで俺を誘拐しようとしてとかではないと思う。それなら第一声が男!?では無いだろう。


 「後ろから来る人の気配もありませんわ。一人だと言えますの」


 嵯峨根さんが冷静に指摘する。


 「第一声が男!?はマズいですね~店員たるものいらっしゃいませ――ではありませんか?」


 茶目っ気たっぷりに言う。


 「はっ!?い、いらっしゃいませ!!」


 店員さんは大きな声で言う。


 「いや~驚かせてしまってすいません。実は料理で使うお玉を探していまして……こう~チャーハンをキレイに盛る時に使うお玉って言えば伝わりますかね?」


 皿にチャーハンを盛るジェスチャーをしながら言う。


 「わ、私ですか?」


 店員さんが私?と自分に指を指して言う。


 「勿論です。店員さんは今ここにいる貴方だけですよね?調理器具売り場に案内して頂けるとありがたいのですが……」


 「ひやぃ!ご案内します!こちらにどうぞ」


 「ありがとうございます。太刀川さん、嵯峨根さん、行きましょう」


 先程のフォーメーションのまんま付いて行く。


 「春人さん、何故勝手な事を?」


 後ろから少し怒ったように嵯峨根さんが言う。


 「只の店員と遭遇した様に見せかけたなら、去った後の方が厄介ではありませんか?それなら案内と言う名の監視をすれば良い。違いますか?」


 「……御見それしましたわ」


 嵯峨根さんが脱帽したと言う様に頭を下げた。


 「いえいえ、太刀川さんと嵯峨根さんと言うS級二人に守られているから出来た事です」


 自分でも大胆だなとは思ったが、8割9割は不運にも遭遇してしまった店員さんだろうと思ったからだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ