189話
まぁ、何となくね…矛盾と言うか何と言うか感じていたのだ。
嵯峨根幸那と言う人物は上流階級の人間であるが故に――ジャイ○ン主義者なのだと……
ふざけるなって?いや、至って本気だとも。自分が気に入らない男にアプローチされるのは困る。自分が気に入った男が自分のアプローチに困っていても気にしない。な?ジャイ○ン主義者だろ?
しかも厄介なのが、嵯峨根幸那本人にその自覚がない事だ。実際愛莉さんに言われるまで気付いてなかったし……
「愛莉さん、何気に怒ってます?」
俺には攻撃的云々言ってたのに、自分は俺が隠し通そうとした事をあっさり言うんだもんなぁ……
「同じ男性警護者としても女としても怒っていますよ」
「はぁ~まぁ、その…何と言うか……話を戻しますが、幸那さん、僕の男性警護者は今月いっぱいまでと言う事でご納得いただけますか?」
ここで話を別の日にと言うのもアレなので話を進める。
「……っっ!!」
俺の言葉を聞いた後、いきなり幸那さんは自分の両頬をパチンと勢い良く叩いた。
「失礼致しました。春人さん、これまでの事大変申し訳ありませんでしたわ。春人さんの男性警護者として今月いっぱいまで勤めさせていただきますの。そして、これまで頂いた給与も全額返還いたしますわ」
幸那さんは深々と頭を下げた後、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「謝罪は受け取ります。しかし、給与の返還はお断りします。男性警護者として働いて頂いた正当な報酬ですので……」
勿論、半分は本音でもう半分は給与の返還を問題扱いして付け入る隙にされたり火種にされる恐れがあるからだ。
「そう…ですわね……承知しましたわ。では、私から最後に餞別がありますわ。勿論、今月いっぱいまでいますが話の流れとしてですわ……」
幸那さんが何度か頷いた後、少し恥ずかしそうに言う。
「餞別?ですか?」
「えぇ、私を遠ざけようと言う事は春人さんは新しく何かを始めると言う事…そして、それは私に延いては国にバレてはまずい事ですわね?」
俺はイエスともノーとも言わない。
だけどそうか…幸那さんを引き離せば国はそう考えるよな。
「これ位は国も看破すると思いますわ。ですから……春人さん、アメリカに留学するのは如何です?」
「っっ!?」
これは正直全く考えもしなかった予想外の一手と言える。
しかも、アメリカに移住でも亡命でもなく留学と言うのは良い。
「なるほど…ですが、国が認めるとは思えません。何せ幸那さんを引き離してからの留学ですからね……」
「考えようですわ。春人さんがアメリカ留学を決めた。私は男性警護者であると同時に上流階級の人間でもあるのでアメリカに一緒に行く訳にはいかない。だから、私は春人さんの男性警護者から外れた……と言う筋書きは如何ですの?」
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