183話
善は急げと言う事で早速幸那さんと話をする事にした。当然愛莉さんと凛音には席を外して貰っている。
「春人さん、お話と言うのは何ですの?」
「単刀直入に言います。幸那さんには僕の男性警護者を辞めて頂きたいのです」
俺は言葉を濁す事もせず直球に言った。ここで変に迂遠な言葉を使って言いたい事が伝わらないのはどちらにとっても良くない事になるからだ。
「っっ!?そうですのね……理由をお聞きしたいですわ」
幸那さんは一瞬ショックを受けた顔をしたがすぐに表情を戻した。
「理由はこちらの都合です。幸那さんは悪くありません」
この理由は半分本当で半分は本当の理由を言わない優しさだ。
「春人さん、それでは納得出来ませんわ。本当の事を仰って下さいまし」
「そう言われても…幸那さんだって分かっているでしょう?幸那さんが悪い訳では無くこちらの都合だと言うのは噓では無くこれ以上ない建前を取っ払った理由であると……」
幸那さんから食い下がられるがそれを一蹴する。
「えぇ、噓では無く建前を取っ払った理由ではあると思いますわ。ですが、本当の理由ではありませんわ。違いまして?」
まぁ見破られるよねと言う……しかし、認める訳にはいかない。
「と言われても……質問に質問を返すのは良くない事ではありますが、逆に幸那さんはどのような理由だとお考えですか?」
追及してくることを逆手に取ってその理由は違いますと論破する策を敢行する。
「春人さんとは長い付き合いとは言いませんが短い付き合いでもありませんの。ですから、その手には乗りませんわ」
何となくでもこちらがやりたい事を読まれているのはやりにくいなぁ……
「それはそれで構いませんが、話は以上です。僕はこれ以上何も言いませんよ」
それならそれでやり様はある。話は終わりだと言えば良い。
「……」
「……」
俺と幸那さんは無言で共に視線を逸らさず睨み合った。
「はぁ~このままでは埒が明きませんの…先程の問いに答えましょう。それでよろしくて?」
幸那さんは俺と話と言うか交渉を続けなければならないので折れるしかない。これは読み通りだ。
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