182話
「男性警護者繋がりで幸那さんの事について話をしたいのですが、仮にこのまま2年間幸那さんを男性警護者にしたままだと隠したい事務所設立の情報が国に漏れますよね?」
上流階級である嵯峨根家から国に情報が流れるのは危惧すべきだ。
「……」
凛音は答えず愛莉さんの方を見た。
「……漏れると思います」
俺と凛音の視線に晒されながらも少し考えて答えた。
「ですよね……」
ならば――つい先日愛莉さんの立場が変わる前に答えを出して欲しいと言ったが、その前言を撤回して俺の男性警護者を降りて貰おう。
「春人さん、我が太刀川家も国と関わりが無い訳ではありません。その事はどう考えていますか?」
俺が何かを言う前に愛莉さんが自ら不利になる様な事を言った。
確かに以前妙子さんから国と関わりがあると言う様な事を匂わされたな。
「それは愛莉さんが太刀川家の誰かに情報を流すと言っていると解釈しますよ」
「私が自らの口で情報を流す訳では無く、太刀川家が独自の方法で情報を得てその情報を国に流すかもしれないと言いたいのです」
愛莉さんは俺をしっかりと見ながら言う。
「そうですか…俺が情報を流す事を止めて欲しいとお願いしても駄目でしょうか?」
「いいえ、駄目では無いです。ただ、対価を要求されるとは思いますが……」
まぁそれはそうだよねと納得出来るので問題は無いと思う。
「対価の要求内容に依りますが、よっぽど無茶苦茶な事でない限りは問題無いと思います」
「分かりました。では、幸那さんに男性警護者を辞めて欲しいと言うのですね?」
愛莉さんが苦々しい表情で言う。
「基本的にはそのつもりです。嵯峨根家と言うか幸那さんと交渉の余地はないでしょうから……」
言わずもがなだが、幸那さんひいては嵯峨根家は国寄りな立場だ。そして、幸那さんは上流階級である嵯峨根家の名を捨てられないと以前言っていたからなぁ……
仮に黙っててとお願いしても対価の内容は俺との婚姻となる事は自明の理だ。
だが、俺は上流階級の人間と婚姻する事は無いと以前宣言したので、要求を受け入れることは不可能だ。
つまり、俺と幸那さんはどこまでいっても交わる事が無い平行線なのだ。
ここまで予測が出来るのだから傷がなるべく小さい今の状況で手を打つべきだ。
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