174話
「二人の本音を聞きたいです。前世の価値観と言うか考えが多分に含まれているので……」
この世界の価値観を持つ二人がどう思っているのかを聞きたい。
「拙は反対です。春人さんは配信者エスとして活動を続けてきて上流階級からの婚姻を跳ね除けられる位の力ーー影響力を持つまでに至りました。それで充分ではありませんか?」
いきなり愛莉さんの直球ストレートが俺を抉る。
「確かに愛莉さんの言う事は尤もです。しかし、和田元大臣の事件がありました。俺にもっと力があれば別の結末もあったでしょう。そして、あの結末が俺だけで無く俺の周りの人たちに起こる可能性は否定できません。なら、今以上の力が必要になると言う事です」
核を持ってる国と持ってない国の関係に喩えると理解しやすいかもしれない。使わないと使えないの違いと言っても良い。まずは対抗できる力を持たなければどうにもならない。勿論俺が持っていない国で、持っている国は現幹事長だ。
「では春人さん、どこまでの力を持てば納得出来るのですか?そして、それにどれだけの時間が必要だと考えていますか?」
「っっ!?」
その点は考えていなかったな。どこまで…か……
それは勿論幹事長に対抗できる位の力だが、それは数値で分かる様な――目に見えるものじゃないからな。
「すいません。そこまでは考えていませんでした。漠然ともっと影響力を持たなければならない。その為に表舞台に立たなければならない。その方法をどうしよう?としか考えていませんでした」
「まだ問題があります。表舞台に立つと言う事は当たり前ですが外に出ると言う事です。つまり、警備の問題があります。それも、有名になればなるほどです。某国だけでなく他の国も動く可能性が高くなりますから……」
「……」
俺の考えのなさに言葉が出なかった。そうだよな。今までは買い物とか位だったが、収録や撮影の事を考えれば移動する事になるのだから今以上に警備の問題は出てきて当然だ。
「幸那さんとの関係が良くない事は薄々感じています。それをどうこう言うつもりはありませんが、最悪の場合は代わりの方を見つけなければなりません。私が言うのは何ですが、幸那さんの代わりは簡単には見つからないですよ」
そこに繋がって来るのか……
愛莉さんと正式に婚姻する二年後までにと問題を先送りにしたツケがここで出るとはなぁ。
まぁ、二年後に幸那さんが俺の男性警護者を辞めると決める可能性は高いから、その後任を今から探しておくべきか。
それに、有名になって外に出る頻度が格段に増すなら幸那さんが辞めないとしても男性警護者を増やすと言う事は考えなければならないと言える。
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