173話
「何故芸能人なの?と言われたら更なる影響力と経済力を得たいと思ったからです」
配信者エスとしてある程度の影響力は得たが、経済力はそこまででも無い。スパチャは貰わない方針だから動画の再生回数に応じた金銭は得ているが、1再生数辺り0.01円とかなので極論再生回数1億回でも100万円なのだ。
じゃあ権力は?となると思いつくのは議員だが、力を得るにはそれこそ何十年と言う時間が掛かるし何より仮想敵である幹事長に近づく事になるから危険だ。リスクとリターンが見合っていない。
「春人さん、芸能人になると言った理由は分かりました。ですが、場所が違うと言うのはどういう事ですか?」
「それは日本とアメリカのどちらで活動するのか?と言う事です」
「っっ!?アメリカに亡命するのですか!?」
俺の言葉を聞いた愛莉さんが大声を出す。
「亡命では無く留学と言うのがニュアンスとしては近いと思います。日本では男性の芸能人はいませんが、自由の国アメリカにはいるでしょうからそちらでノウハウを学ぶと言う事を考えた訳です」
アメリカにはなんてったって映画の聖地であるハリウッドがあるからなぁ。そちらで演技について学んで俳優になると言うのは悪くないのではないだろうか?しかも、アメリカでデビューすれば箔が付くのは間違いない。いきなり世界デビューと言っても良い訳だしな。
「そうですか…留学……」
「あくまで一つの案と言うか考えです。日本でモデルから歌手や俳優になると言う道もあると思います」
こちらは最短コースではある。だけどまぁ、歌手は微妙だな。歌が特別上手い訳では無くあくまで素人にしてはまぁまぁ上手い位だから……
勿論、レッスンとかすればある程度は上手くはなるだろうから伸びしろはあるとは思う。
「春人氏の考えは分かったでござる。しかし、拙者はこれだけは聞かないといけないでござる…春人氏、配信者エスはどうするでござるか?」
あぁ…凛音は月坂Pだからな。当然気になるわな。
「配信者エスとして活動を続けるのかはまだ考え中ですけど、どんな形であれ配信自体は続けたいと思っています」
これが正直な気持ちだ。
「なるほど…そう言う事ならまぁ拙者は……」
凛音には納得して貰えたようだ。
「あと、今からすぐに芸能人になるつもりはありません。日本で活動する場合は芸能事務所に所属したりするのが普通だと思いますが、既存の事務所に所属するのは色々とねぇ……」
前世の芸能界や芸能事務所にあまり良いイメージはあまり無い。どうしても枕営業とかが思い浮かんでしまう。ましてやこの貞操観念逆転世界なら俺がしてもらう側では無くする側になるのは間違いない。
最初はそう言う危険などを考慮して比較的安全な配信者をしていたが、ローリスクローリターンと言うか、こちらがそこまでリスクを負わないなら得られるリターンも限られたものになるのは自明の理だわな。
だから、更なる力を欲するなら表舞台に立つしか無いのだ。
「なので、芸能事務所を設立するか既存の事務所を買収するかと言う事を考えています」
一から設立するとなるとノウハウとか無いから苦労すると思う。詳しいスタッフとか雇わないといけないしな。だけど、既存の事務所を買収するなら所属タレントやスタッフはそのままで俺が最高責任者兼タレントとして活動すれば良い。ただ、買収するにはかなりの金が必要だろう。
まぁ、当然どちらにも一長一短がある。
最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。




