172話
向こうの思惑は見事に成ったと言っても良い。和田元大臣の死で真相を白日の下に晒す事も出来ず、更に闇深さにより恐怖を感じ動けなくなったからだ。
「分かった。凛音がそう言うのならそれを尊重しましょう。では、続いて俺の今後について話したいと思います」
「春人氏の今後?」
凛音の頭の上には何故と?マークが浮かんでいるのが分かる。
「今回の件でこの国の闇の深さを知ったし、自分の無力さも思い知りました。だから、もっと力を付けないといけないと思うんです」
「春人さんの仰る事は最もです。ですが、力を付けると言うのは以前仰っていた配信者として影響力を持つと言う事だったのでありませんか?」
愛莉さんが良い質問をしてくれた。
「その通りです。配信者エスとしてある程度の影響力を持つ事は出来たと思います。ですが、それでも足りなかったと今回の件で分かりました」
権力とか経済力とか分かりやすい力では無いからな。
「それは確かにそうでござるな。では春人氏、具体的にはどのような方法で力を付けるのでござるか?」
凛音が核心とも言える質問をしてくれた。
「俺が考えたのは二つです。ですが、それはどちらとも表舞台に立つ事になります」
どんっ!!と言う効果音が俺の脳内で響き渡る。
「??春人氏?顔出しの配信者をしていているのに表舞台に立つと言うのは表現がおかしいでござるよ?」
凛音の言葉に愛莉さんもうんうんと頷いている。
「あ~こういう所が前世の感覚を引きずっているのか……まぁそれはともかく、一つ目も二つ目も結論としては芸能人になると言う事です。一つ目と二つ目の違いは場所の違いです」
「「芸能人!?」」
愛莉さんと凛音の驚いた声が重なる。
と言うか、貞操観念逆転ものではテンプレと言っても良い芸能人になると言う展開だが、やっと俺もそれに倣う事が出来る。
「二人も知っているとは思いますが、男性のモデルは極少数ですがいるそうですね。しかし、テレビ局が制作する番組の配信に男性が出る事は全く無い」
そう、この世界にも男性のモデルは極少数ながらいるのだ。とは言っても前世の様にイケメンでも無い普通のおじさんとか下手したらおじいちゃんだ。俺の様に若い男はいない。
また、前世の様にイケメンが上半身裸でシャワー浴びてる様なセクシーなものは当然無い。本当に服を着ている姿で写っているだけと言える。笑顔とかほぼ無くて無表情や不機嫌な表情がほとんどらしい。まぁ、だからこそ極少数とは言え存在するのだろう。
だけど、テレビ局の作製する番組の配信に男性の出演は無い。ドラマだけでなくバラエティー等にもだ。
ドラマはセリフを覚えたり演技したりしないといけないし、バラエティーでも台本で流れを覚えないといけないし話したりリアクションしたりしないといけないからハードルが高いらしい。うん、テンプレテンプレ……
最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。




