17話
話し方を変えた事で立場も変わったと言う意思表示か。
「あら?もうあの変な喋り方は良いの?」
「アレは男性警護者羽立美智留だ。今の私は美優の友人羽立美智留だ」
母さんと羽立さんが愉快なやり取りをする。
「あ~話を戻して良いですか?フリーという事は企業に所属していない男性警護者と言う事ですか?」
「いや、正確に言うのなら一応男性警護者の人材派遣サービス所属と言う事になる」
人材派遣サービス……派遣社員的なものなのか?
「では、その男性警護者の人材派遣サービスに問い合わせをするという事でしょうか?」
「その通りだ。そして、人材派遣サービスから紹介されるかもしくは紹介された中から選んだ男性警護者と直接雇用契約を結ぶシステムだ。その際の手数料等はフリーの男性警護者側が得た報酬の中から人材派遣サービスに支払う事になっている」
ふむふむ……聞くだけなら警備会社とかを通してよりこちらの方が良さそうだが?
「美味い話だけではないでしょう?企業に所属しなかったでは無く出来なかったと言う事では?」
「鋭いな…だが、全員が全員そう言った者ではない。警護者対象者に理不尽な仕打ちを受け企業に属する事を嫌った者や警護対象者に悪評を流され所属出来なくなった者もいる。当然、属する事を厭う一匹狼気質の者もいるがね……」
あ~何と言うか言葉が出ないな。だけど、これだけは聞いておきたいし、聞いておかなければならない。
「その……そう言った男性警護者達は男性を嫌いになったりはしないのですか?あと、思う所なく男性を警護出来るのですか?」
失礼な事や聞きにくい事ではあるが、俺自身の命に係わる事だからな。
「尤もな疑問だと言える。だが、それこそがフリーの強みなのだ……要は、気に入らない警護対象者であれば男性警護者側から契約を打ち切る事が出来る」
なるほど……企業の名を背負っていないからこそ我慢する事無く理不尽な仕打ちに抗えるって事なのか。
「それだと、多くの男性警護者はフリーになる事を望むのでは?」
「それがそう簡単な話でもない。まず、男性側がフリーの男性警護者と直接雇用契約を結ぶ事が稀なのだ。そもそも男性側は企業に依頼と言うか問い合わせをするからな。更に、フリーの男性警護者側から契約を打ち切る事が出来ると言う権限の強さを男性側が気にしている事もある。企業に所属する方が安定しているのだ」
あ~その辺は前世のフリーランスと変わりは無い様だ。だけど、男性側に強い権限が無いと不安ってのはこの世界ならではだ。そもそも大前提として男性は女性を恐れていたり忌避したりって言うのがある上に自分より確実に強い女性が相手だからな……
「そう言う事ですか……それなら今度は逆にどんな男性がフリーの男性警護者と直接雇用契約を結ぶんですか?」
「一番はやはり費用を抑えたいと思っている男性だろう。あとは、どの企業の男性警護者とも合わなくて最後の手段としてと言った所か……春人君のようなケースは正直言って初めてだ」
「そうなんですね……え~とその人材派遣サービスの連絡先を教えてもらえますか?」
「良ければ今から行ってみるか?」
「良いんですか!?」
俺との契約を取ってこないで人材派遣サービスを紹介するなんて敵に塩を送る様なものなのでは?
「構わないさ。大体どこの企業も人材派遣サービスと提携していて、人が欲しい時に応援を頼んだりすることもあるからな。持ちつ持たれつというやつさ」
ほぉ~中々考えられてるな。あと、バリキャリと言う最初の印象がもはや跡形も無い。羽立さんの素は姐御!!ってカンジだな。
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