156話
「すいません。僕にはもう何が何だか……」
正直言って妙子さんが言った事はあり得る。だけど、それだけにショックだ。
一体、何が正しくて何を信じれば良いのだろうか?
「混乱させたようですまないねぇ……だけど、この世はね物語みたいに分かりやすい事なんてあまり無いよ。わたしゃあね今回の件は――各国の思惑が複雑に絡み合って分かりにくくなってるんだと思うのさ」
「なるほど、複雑に絡み合って……」
そりゃあそうだ。俺には俺の思惑があって国には国の思惑があるなら、某国には某国の、アメリカにはアメリカの思惑がある訳だ。
俺と日本の事しか考えていなかったから見えないものがあるのだろう。
「ご助言有難く頂戴致します」
妙子さんに深々と頭を下げる。
「婿殿、それは止めとくれ…年寄りの戯言くらいに取ってくれればよいものを――そんなにされたら面映ゆいじゃないかい……」
妙子さんが参ったとばかりに恥ずかしそうに頭を掻く。
「妙子さんは素敵な女子ですね。僕と年が違う事が残念でなりません。生まれた年月が違うと言うのはかくも残酷な事です……」
リップサービス込みでべた褒めする。
「ひょっ!?む、婿殿!?年寄りを揶揄うのはお止め!」
妙子さんが顔を赤くしてどもりながら言う。
「いいえ、僕は揶揄ってなどいませんよ。率直な感想を述べただけです。いつもは凛としていらっしゃるのにその様な愛らしい姿も見られるとは僕は運が良いですね」
「あらあら…愛莉の事を考えれば春人さんは年上が好きなのは分かっていましたけど、流石に母は年上過ぎじゃないかしら?ここは丁度良いお義母さんにしとかないかしら?」
「ええっ!?」
愛莉さんの母である理恵さんにそんな事を言われて俺は慌てた。
「お母さんも年が行き過ぎよ!ここは断然みどりお義姉ちゃんよね?」
「はい~!?」
みどり義姉さんまでそんな事を言うので俺は更にパニくった。
「ほぅ~理恵はわたしの事をババアとでも言いたいのかい?」
妙子さんは理恵さんの一部の言葉に引っ掛かったようで凄い顔をしながら言う。
「お母さん、ちょっと待ってくれるかしら?私もみどりに言いたい事があるから……」
理恵さんも理恵さんでみどりさんに言われた一部の事が気になるようで引き攣った顔で言う。
「な、何よ?だいたいお母さんもお祖母ちゃんもいい年して義弟くんに言い寄るなんて恥ずかしくないの?」
みどりさんは理恵さんの圧に狼狽えながらも言い返す。
「あっ!?」
俺は思わず声を漏らした。それはマズいと思うんだ。だって――
「ほうほう…理恵だけでなくみどりまでわたしの事をババア呼ばわりするのかい?」
ほら、三つ巴みたいなカンジになっちゃったじゃんか……
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