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149話

 「春人さん、私どうしてもお尋ねしたい事がありますの」


 幸那さんが覚悟を決めた様な表情で言う。


 うん?そんな表情で尋ねられる内容に心当たりはないのだが……


 「どうしてもですか……どうぞ」


 「本気でアメリカへの移住をお考えですの?いえ、違いますわね。本気で移住する気でいますの?と言う方が正しいですわね」


 あぁ、それか……


 「本気で移住を考えていますよ。幸那さんだって凛音の誘拐を国に揉み消された事はご存知でしょう?あれがきっかけです。それまでは漠然とした不安でしかなかったものが明確になりました。この国に限らずなのでしょうけど、敢えて言語化します。この国は大の為に小を簡単に切り捨てる……当然の事なのかもしれませんが小の側からすれば堪ったものではありません。そうは言っても僕が小側でなければそうは思わなかったかもしれませんが……」


 結局の所コレなんだよ。自分がどの立場なのかによって変わるのだ。


 「そうなんですのね……」


 幸那さんの顔が悲しみで染まる。


 「ただ、アメリカに移住して問題解決ではありませんからね。動画でも言いましたが銃社会の問題や差別の問題があります」


 コレがあるから簡単に移住に踏み切る事が出来ないのも事実だ。


 「野球で例えるなら9回裏2-1のビハインドで2アウト満塁なんですよ。分かりにくければ――次に何かこの国がやらかせば僕はアメリカに移住します。たいていの問題は僕が移住すると言えばアメリカ側が解決してくれるでしょう。住居の問題とか国籍の問題とか……」


 「……2アウト満塁ならヒット1本で逆転勝利もあり得る訳ですわね?」


 むぅ……しゃべり過ぎたか。


 「ふぅ~9回裏2-1のビハインドで2アウト満塁のフルカウント――あと1球にしましょうか」


 これならどのような形であれ白黒ハッキリする。いやまぁ進塁打とかエラーで同点のままの可能性もあるがそれも含めて今の自分の心境に近いな。


 「春人さんも基本的には日本にいたいとは思っているのですわ。それが分かれば十分なのですわ」


 幸那さんが明るい表情になる。


 「そりゃあそうですよ。ですが、僕に海外への移住を検討させたのは幸那さん――貴方が発端だったと言うのはお忘れなく。そして、本気で移住を検討する事になった原因はこの国にあると言う事もお間違えない様に願います」


 幸那さんにきっちりと釘を刺す。


 とあるアニメの主人公のセリフじゃないが、『俺がこの国を捨てるんじゃない。この国が俺を捨てたんだ』って所だな。


 いや、もっと正確に言うならこの国が俺に国を捨てさせる様に追い込んだの方が正しいか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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