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133話

 本日は6月26日月曜日で、時刻はもうすぐ午前9時になると言う所だ。今日は先週の一つだけあったある事に関係する用事があるのだ。


 それにはまず、先週の一つだけあった語る事とは何なのかについて話さなければならない。そりゃあそうだ。


 では、その語る事とは――アメリカ大使館の参事官であるエマ・グリーンさんと会って話をした事だ。


 じゃあ、会って何を話したかと言うと以前エマさんとの会話の様子を配信で流す事の許可云々についてだ。


 エマさんは大使から台本を提出して貰いその内容次第では生配信を行う許可は出せないと言われたそうだ。当然の言い分と言うか妥当な申し出だ。


 なので、俺としても自分が生配信で爆弾発言をしないとも限らない――自分自身を信じきれないので台本は提出するが、生配信ではなく動画を撮影して投稿すると言う形に変更して欲しいと願い出た。


 何故そこまでアメリカ側に配慮と言うか下手に出るかと言うと、日本政府が信用しきれない以上アメリカまで敵に回すのはマズいと考えての事だ。いや、信じきれないと言うのもあるがそれ以上に凛音の誘拐事件を某国が首謀者と知って日和って事件を無かった事にしたあの仕打ちが許せないからだ。


 エマさんは俺の提案を再度持ち帰った。エマさんがトップじゃないんだからそりゃあそうなるわ。


 それで、大使から許可が取れた為本日その動画を撮影する為にアメリカ大使館に来ているのだ。


 「ミスター市原、本日はわざわざアメリカ大使館まで来て頂いた事に感謝申し上げます」


 エマさんが俺達一行にペコリと頭を下げて言う。俺達一行と言っても俺と愛莉さんと凛音の三人だ。凛音は学校じゃないかって?公欠ってヤツだよ。部活の大会とかで欠席扱いにはならない的なアレだ。


 「いえとんでもありません。こちらこそ提案を受け入れて頂き改めて感謝致します」


 俺も頭を下げ、頭下げ合戦が開始となった。


 「あの~エマさん、少々お伺いしたい事があるのですが……」


 「どうされましたミズ太刀川?」


 「あちらの方はどなたでしょうか?」


 俺達は動画撮影の為に部屋に移動したのだが、その部屋にポツンと所在なさげに佇んでいるスーツ姿の女性がいた。


 「彼女は外務省の方です。今回の動画撮影についてアメリカ大使館から日本の外務省に報告を行ったのですが、その際には是非立ち会いたいと言われまして……」


 なるほど…外務省ねぇ……アレだろ?俺とエマさんと言うか俺とアメリカが変な密約をしないかの監視要員を送り込んだって事だろ?ホント余計な仕事はするよなぁ……


 「私は外務省の――」


 「結構です!あなたの名前を知りたい訳ではないので……日本政府はしないで良い仕事はしますよね?某国に抗議したり遺憾だと言ったりはしないで誘拐事件は揉み消すのに、監視要員は送り込んできたりとか……」


 俺は外務省から送り込まれた監視要員の言葉を遮って痛烈な一言をお見舞いする。


 「っっ!?その~何の事を仰っているのか当方には分かりかねます……」


 「そうですか、では外務大臣なり総理大臣なりに配信者エス――いや、市原春人が例の対応にご立腹だとでも言っとけ!!」


 「っっ!?」


 俺はわざと声を荒げて言う。わざとなのは所謂パフォーマンスだな。滅多に怒らない人間が声を荒げて言うのだから効果はあるだろう。


 実際に相手はまさか俺が怒鳴るとは思っていなかったようで非常に狼狽した表情を見せてくれた。


 「ミスター市原、落ち着いて下さい。外務省の貴女も不用意に声を掛けない様にお願いします。貴女は今回の件の関係者ではありません。ご自分の立場を間違えない様に……」


 エマさんと言うかアメリカ大使館側も監視要員を送り込まれるのは不愉快だろうからな。庇う事は無いと思っていたぜ。


 「し、失礼致しました」


 今度は狼狽した表情から一転して悔しそうな表情を隠さず屈辱だとばかりに顔を下に向けながら部屋の隅に移動していった。


 「お見事ですミスター市原、普段温厚な方の怒りにこそ意味があると言う典型例ですね」


 エマさんには見抜かれていた様だ。


 「いえ、このような場で声を荒げてしまった事…深くお詫び申し上げます」


 エマさんが俺のパフォーマンスだと分かっていても、声を荒げて場の雰囲気を悪くしたのは事実だからきちんと謝罪した。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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