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119話

 「ゆ、唯里!?貴女なんて事を!?あの春人さん!これは違うんです!」


 唯里さんの姉はやらん発言に愛莉さんは混乱してあたふたしている。


 「大丈夫ですよ。落ち着いて下さい。そう言われるのではないかと思っていました。客観的に見て私はどこの馬の骨かわからない男ですからね。寧ろ、お婆様やお母様やお姉様が友好的な事に面食らいました」


 これは紛れもなく本心だ。愛莉さんの祖母や母は反対すると思っていた。


 愛莉さんは警護対象者に恐れられているとは言え、若いながらS級の男性警護者なんだから選り好みしなければ婚姻相手が見つからないと言う事は無いだろうと思うからだ。


 なので、姉や妹を味方につけて説得する事になると思っていたのだが、まさかの妹からやらん発言は意外だった。


 「わたしゃあ反対なんかしないよ。よっぽど問題ありそうなら叩きのめしただろうけど、市原殿はかの有名な配信者エスだからね。それに、若いのに挨拶もしっかりできる貴重な男だよ。私が後40も若ければグイグイいったんだがねぇ……」


 「光栄です。是非、祖母と孫娘の相手の関係でお願いします」


 サラッと叩きのめすとかグイグイいくとか怖い事言われたが、無難に言葉を返す。


 「見たかい理恵、時間を掛ける事無くこの返しだよ?逆に愛莉には勿体無いかもしれないってのに、唯里ときたら……一体何が気に食わないんだい?」


 「そうですね……唯里はお姉ちゃん子でしたからね。それが理由かと、春人さんと呼ばせて貰いますけど、私の事はお義母さんと呼んでくれて良いですからね?」


 「ありがとうございます。お義母さん呼びは妹さんが認めてくれてからと言う事でお願いします」


 理恵さんにお義母さんと呼んでと言われたが、これもまた無難に返す。


 「愛莉がダメなら私はどうですか?私はS級ではありませんがA級の男性警護者です。愛莉よりお買い得ですよ?」


 「姉上!?何を言うのですか!!」


 姉であるみどりさんの爆弾発言に愛莉さんが過剰に反応する。


 「だって愛莉と春人さんのやり取りが本当に羨ましいんですもの。唯里、愛莉じゃなくて私が相手なら認めてくれる?」


 「みどり姉様なら問題ない。寧ろお似合いだと思う。応援する」


 えぇ……愛莉さんはダメでみどりさんは良いの?こりゃあ俺に問題があってダメって言うより愛莉さんの婚姻相手は誰が相手でもダメって事だろうな。


 「ありがとう唯里、お姉ちゃん頑張るわ!」


 「いえあの、お気持ちは大変ありがたいのですが、流石に今日初対面のしかも愛莉さんのお姉さん相手にそう言う事は……」


 俺はやんわりと困りますと言ったのだが……


 「気持ちは大変ありがたいですって!脈ありよ!!ビッグウェーブがきたわ!」


 みどりさんが嬉しそうにガッツポーズして言う。


 と言うか、最初の足を崩して下さいと言ってくれた清楚で優しそうな理想のお姉さん像のみどりさんは最早無い。


 「姉上!いい加減にして下さい!!」


 うん。愛莉さんが声を荒げるのも無理はない。


 と言うか、何であの返答で脈ありだと思うんですかね?あと、お婆さんも理恵さんも楽しそうにニコニコしながら見てないで止めてくれませんかねぇ……


 「あ~も~唯里、どうやったら貴女は春人さんを認めてくれるんですか?」


 愛莉さんは唯里さんに直球で尋ねた。


 「市原春人殿、私と立ち合って下さい」


 唯里さんが言ったのは、流れからして同席するという意味の立ち会うでは無く勝負をするという意味の立ち合うだろうな。


 「唯里!!あなたは何を言っているのか分かっているのですか!!」


 愛莉さんが唯里さんに怒って言う。


 「え~恐らく何かしらの勝負をしろと言う事でしょうが、どう考えても私ではあなたには敵わない事はご理解頂けるでしょうか?」


 俺は冷静に俺が勝てないと誰でも分かる事なのになぜ勝負を?と尋ねる。


 「あなたに私に勝てなどと言う気はありません。ただ、警護対象者と言えども最低限の運動能力は必要だとは思いませんか?」


 う~ん……運動能力ときたか。まぁクイズ勝負とかではないとは思っていたし、言ってる事は間違ってはいないんだが……


 「なるほど……ですが、それは唯里さんが男性警護者として警護対象者に求める事ではありませんか?よもや全ての警護対象者が最低限の運動能力を有しなければならないと本気で思ってはいないでしょう?」


 そりゃあないよりはあるに越した事は無いと思う。


 しかしだ、必要だと言う事とそれを実際に有しているかはまた別の話だろう。


 「えぇ、ですから私にそれを見せてほしいと言っているのです。そうすれば私はあなたを愛莉姉様の婚姻相手と認めましょう」


 むむむ……厄介だな。


 「条件次第で立ち合いを受けましょう。と言うのもそもそも、私は愛莉さんに護衛をして貰っている事は言わずもがなですが、その愛莉さんに私の運動能力を必要とすると言われた事はありません。外出の際もほとんど私の側にいてくれますしね」


 唯里さんが実際の警護の話にかこつけて立ち合いの話を持ち出したのだから、こちらも実際の警護の話をする。


 「そうですか……では、私と立ち合うのに制限時間を付けて3分間私相手に生き残れれば勝ちと言うのはどうでしょう?」


 3分ってボクシングの1(ラウンド)かよ……


 あと、サラッと生き残れればとか物騒な事言ってるぞ。


 「30秒ですね。先程も言いましたが、外出の際でもほとんど愛莉さんが私の側にいます。私から3分も離れるなんて事態はあり得ません。せいぜいあっても30秒といった所です。()()()()警護対象者に必要な運動能力と言うならこれくらいが妥当ではありませんか?」


 トイレですら中に入ってきて警護するのを認めているから30秒すらあり得ないのだが、10秒とか言っても認めないだろうからな。


 「分かりました。その条件で良いので早速鍛錬場に行き、立ち合いましょう」


 と言う事で、鍛錬場で立ち合う事になった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。


急な体調不良の為次回更新は15日とさせて頂きます。

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