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117話

 「それでですね、僕が思った以上に狙われていると分かったので今の家は危険なのではないかと愛莉さんや幸那さんに言われたので、もっとセキュリティがしっかりしている所に引っ越す事を検討しています」


 俺は頭を上げた後そう言った。


 エマさんから話を聞いたのは午前中の事なので母さんにはまだ相談していないが、母さんも反対はしないと思う。


 「なるほど……それなら配信に適した部屋もあると良いですね。そのアドバイスが欲しいと言う事ですか?」


 月坂さんは深読みしてそんな事を言う。


 「あぁ…勿論それもあります。ですが、引っ越す際に凛音さんにも一緒に新しい家に住んで欲しいと思っています。そのお願いというか検討して頂きたいと思っての事です」


 「えぇ!?一緒に住む!?」


 月坂さんが素っ頓狂な声を出すが無理も無い。同棲しようと言っているのに等しいからな。


 「エス様――いえ市原さん、それは凛音と婚姻したいと言う事も含めたお願いなのでしょうか?」


 明奈さんの俺を呼ぶ名が変わった。それに、親としては当然の質問だろう。


 「はい。ですが、こちらの事情で大変申し訳ないのですが先に筋を通さないといけない相手がいます。誠に勝手ではございますが今回はあくまでこちらの要望をご検討頂きたいと思って話をさせて頂きました。後日改めてご挨拶とお願いに参らせて頂きます」


 俺は隣にいる愛莉さんをチラッと見ながら言う。


 俺は月坂凛音が好きだという事に気付いてしまった。俺は愛莉さんに惹かれていたというのにあの人生を懸ける覚悟がある宣言から月坂さんにも惹かれていたのだろう。


 だけど、好きになっただけだから問題は無いが不純ではある。だから、気付かない様にしていたんだと思う。


 この世界では一夫多妻は認められているが、前世ではあまりよろしくない事で顔を顰められる事だろう。その名残だろうな。


 だけど、昨日の一件で俺は自分の心の奥底に隠していた気持ちに気付いた――いや気付かされた。大切なものは失くしてから気付くとよく言うが、亡くしてから気付かなくて良かったと本当に思う。


 それに、自覚してしまった以上もう止める事はできない。だったら、この世界では一夫多妻は認められているのだから愛莉さんも月坂さんも二人共伴侶にすべきだ。良い意味で開き直る事ができた。


 そして、一夫多妻が認められたこの世界でプロポーズの順番を気にする事は無いと思う。そもそも、プロポーズは大体女性から男性にされるものだからだ。あと、婚姻できる女性の数は女性全体からすると少ないからそんな事を気にする必要もないし、一夫多妻はあくまで認められているだけで実際にはほぼ存在しないと言って良い。婚姻の義務はあくまで一人の女性とだけだからだ。

 

 なので、こちらの事情というか完全に俺の自己満足だ。分かっている。それでも、愛莉さんより先に月坂さんに婚約してほしいと言うのは違うと思う。


 「なるほど……そちらの男性警護者の方が先だという訳ですね?」


 「はい。順番を気にするのは僕の自己満足だと思いますしそう言われても仕方が無いのですが、どうか、どうか斟酌を加えてもらえないでしょうか?」


 俺はもう一度土下座した。


 「い、市原君!?」


 月坂さんは俺がもう一度土下座した事に驚いたのか声が裏返っている。


 「はぁ……私は娘の凛音が一番です。ですが、このご時世では婚姻できる事が奇跡だと言っても過言ではありません。なので、凛音と婚姻する事を約束して頂けるなら私から言う事はありません。凛音、あなたからは何かないの?」


 明奈さんは思う所はあるだろうが飲み込んでくれた。月坂さんはどうだろうか?


 「私は……自分が一番になんて大それた事は考えていません。市原君に婚姻したいと思って貰えた事は母が言う様に奇跡だと思っています。ただ、一つだけ――私の事も凛音と呼んで欲しいです。私より先に母を下の名前で呼ぶのは……」


 月坂――いや凛音がそんなかわいい事を言う。


 「あぁ…それでさっきの態度だった訳ですか。それは僕が悪いですね。凛音と呼んで良いですか?女性の下の名前を呼び捨てで呼ぶのは凛音が初めてですしどうでしょうか?」


 少々気障だなと思いながらもそんな事を言う。勿論前世含めて女性の下の名前を呼び捨てするのが初めてと言うのは本当だ。※二次元の嫁は除くと後に付くが……


 「はひゅ!?それで全然大丈夫です!」


 返事が……と思いながらも横の愛莉さんに目を向けると――


 「っっ!?愛莉さん!?どうしました!?」


 なんと涙を流していたのだ。


 「拙は、拙は、世界一の幸せ者です」


 ふぅ~良かった。てっきり凛音と婚姻したいとある意味先に言った事を悲しんでの涙で修羅場になるかと思ってしまったぞ。


 あっいや……一夫多妻がほぼ確定となった以上修羅場が起きる可能性は高い。これも問題だな。気を付けよう。


 「もうほぼ言ってしまったみたいなものですが、後日改めて正式にご挨拶させて下さい。それでは、本日の所はこれで失礼致します」


 さ~て、近日中に愛莉さんの家にご挨拶に行かないといけないのだが、どうなるかな?


 男性警護者一家って事らしいし『軟弱者に娘はやらん!!』とか言われないといいな……

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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