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閑話 我が国に迎え入れるべきか

会話が『』なのはホントは英語で話してるけど分かりやすく日本語訳してますよと言うカンジで使っています。

 ハーイ、私はエマ・グリーンよ。日本にあるアメリカ大使館で参事官を務めているわ。年齢はトップシークレットよ。


 そんな私はミスター市原との話を終えた後、大使であるリディアナ・ターナーに報告に向かった。


 『ターナー大使、報告に参りました』


 『グリーン参事官か…ご苦労様……報告を聞こう』


 『はい。ですが、私からの報告はこの映像を見る事に代えさせて頂きたいと思います』


 私は胸に付けていたバッジ型のカメラで撮影していた映像を大使に見て貰う事を提案する。


 『ふむ……映像を見た後に君に質問をする事で報告をしたと言う事にしよう』


 大使は私がわざわざ口頭や書類による報告ではない事に何かしらの意味があると気付いて私の提案を受け入れた。


 これ位の事を察する事が出来なければ大使が務まる筈が無い。


 私はバッジとデヴァイスを接続して映像を空間投影した。


 大使は何度も驚愕の表情をしながら映像を視聴し終え私への質問に移った。


 『参事官、君が私に映像を見せた理由は理解した。口頭や書類での報告ではあの市原春人と言う少年を理解できなかっただろう。いや、報告はもっと正確になどと言っていたかもしれない……』


 大使はそんな言葉を漏らした。


 『ご理解頂き恐縮です』


 『いや、正直に言うとあんな男が存在すると言うのが信じられないのだ。理解できるなどと言った先の言と矛盾するのだがな……』


 大使は自嘲しながら言う。


 『私も良く分かっていません。記憶喪失との事ですが、実は宇宙人ですと言われても納得できます』


 勿論、彼はキチンとした日本人だと言う事は調べが付いている。要はアメリカンジョークだ。


 『宇宙人か……いい得て妙だな。さて参事官、市原春人と言う少年を実際の所どう見ている?』


 大使のこの質問は私が本当に市原春人と言う少年を我が国に迎え入れたいと思っているのか、思っているとしてどの位本気で迎え入れたいと思っているのかを問うている。


 『勿論、本気で迎え入れたいと思っています。彼を迎え入れる事で日本との関係が悪化する事は分かり切っていますがそれでも迎え入れたいと思っています』


 『ふむ……彼を迎え入れる為に我が国が日本に譲歩する事になってもか?君自身も強制送還の上ほとぼりが冷めるまではどこぞの国に飛ばされる事になるぞ?当然参事官ではなく一等書記官――いや、二等書記官まで降格の可能性もある。それでもか?』


 我が国が日本に譲歩しないといけない言う屈辱や私自身の進退を天秤にかけてもか?と言われる。


 『それが国益となる事なら躊躇いません』


 例え一時的な不利益でも最終的には取り戻す事が出来ると判断しての事だ。


 『そうか……条件次第ではあるが日本に譲歩してでも彼を我が国に迎え入れる事を許可しよう』


 『ありがとうございます。つきましてはその条件交渉を配信したいと彼は言っていますがその許可を頂けますか?』


 『映像で言っていた事か……質問に制限を設けたい所だな』


 大使はそう言うが……


 『大使、生配信ですのでそれは無意味かと……』


 『なるほど……制限を設けても意味が無いか』


 『はい。日本の上流階級に対してあのような事をする人物ですので生配信で何をしでかすか分かりません』


 私は彼を知る為に配信や動画を見たが、いくつか不自然な流れがあった。なので、アドリブと言うか台本通りでは無いなと思った所がある。私との配信でも台本通りに進まない可能性が高いのだ。


 『取り敢えず許可を出すが、台本を提出して貰いその内容次第では許可は出せないと伝えてくれ』


 『承知しました』


 まぁ、こればかりは仕方が無い。


 『参事官、これはあくまで私の独り言だが……彼は本当に国益になると思うかね?』


 『大使、それはどう言う事でしょう?国益にならないのであれば彼との条件交渉自体する必要はないのでは?』


 今更何をと思ったのでここは素直に尋ねるべきだ。


 『何と言うか……キチンとリスクを考えているのか?と言う事だ。要は彼は劇物なのだから使い方を誤ればとんでもない事になると言いたいのだ。それを君は理解しているかね?』


 『っっ!?失礼しました。私の認識が甘かったです』


 私は彼が与える良い影響についてしか考えていなかった。もっと言えばリスクは日本への譲歩の内容位しか考えていなかった。彼が我が国に与える影響が須らく良いものだけの筈が無い事をキチンと認識出来ていなかった。


 『無理も無い事だ。私とて君と同じ女だ。彼のような男に惹かれる気持ちは痛い程分かる。それ自体は悪い事では無いが、我々は時には只の女である事が許されない人間だからね……』


 大使の言葉を聞いて私はまだまだ上の立場になるには足りないものがあると思わされた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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