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113話

 あの後、幸那さんが戻って来てから話をする事になった。


 「まず、我々はミスター市原――いえ、配信者エスに接触したいと考えていました。ですが、いきなりミスター市原に接触するのは警戒されてしまう。そこで、月坂Pなる人物がミズ月坂である事を突き止め接触することにしました。それが本日の事です」


 「私に接触したいと思ったのは何故ですか?」


 先程救出したと言う台詞があった事が気になるが取り敢えずこの疑問について尋ねる。


 「配信者エスの亡命の話を知ったからです。良い国を探しているのでしょう?」


 エマさんが笑顔で言う。


 なるほど……俺をアメリカに引き抜きと言うか亡命させたいって事か。


 「分かりました。それで、先程は救出したと言っていましたが……」


 「はい。我々がミズ月坂に接触しようとしたのですが、その目の前で誘拐事件が起きたのです。我々はその様子を見ていた為、ミズ月坂を救出する事が出来ました」


 ドヤ顔でエマさんが言う。


 「失礼を承知で伺わせて頂きます。月坂さんの誘拐は自作自演――マッチポンプと言う事はありませんか?」


 俺はすかさずマッチポンプじゃないのか?と言う。どう考えてもタイミングが良過ぎだろう。


 自分たちで誘拐して自分たちで助けて恩を売り、日本は危険だからと言ってアメリカに亡命させる――ありきたりだがあり得る筋書きだろう。


 「ミスター市原の考えは当然のものです。我々もそう思われる事や他の危惧もあったので直ぐにミズ月坂を救出する訳にはいきませんでした」


 エマさんは嫌な顔をする事なく寧ろそう思われても仕方ないとばかりに言う。


 「他の危惧…ですか?」


 「はい。我々はあくまでアメリカ大使館の人間です。日本国内においての捜査権や逮捕権なんてものは当然ありません。最悪の事態はミズ月坂の誘拐事件が我々の所為にされる事です。ですから、ミズ月坂が誘拐された直後に救出する訳にいきませんでした。なので、ミズ月坂を誘拐してアジトに戻る所まで確認しなければならなかったのです。末端だけ捕まえても仕方がありませんしね」


 エマさんは顔を伏せ申し訳なさそうに言う。


 なるほどな。日本が男性優遇に舵を切った事で外国人の男性が日本に集まってから海外との関係は良くないって聞いてた。だから、日本政府がアメリカ大使館の人間による誘拐事件の救出や解決のタイミングが良過ぎる事を利用して冤罪若しくはいちゃもんを付けて何らかの譲歩を引き出そうとするのではとエマさんが考えるのは不思議な事ではない。


 「そう言う事ですか……仮に直ぐに月坂さんを救出したとしても月坂さんが誘拐した人物の顔を見たとかでなければグリーンさんが誘拐犯だと思われかねなかった可能性も考慮したと言う事ですね?」


 政府の対応は置いておいて、こちらの問題もあるのではないかと思った事を言う。


 「イグザクトリー!!ミスター市原の言う通りです。そして、私の事はエマと呼んで下さい」


 「分かりました……では、次の質問ですが月坂さんをどうやって救出したんですか?」


 「アジトを突き止めた後に警察に通報しました」


 「へぇ?」


 アレ?エマさんが誘拐犯と銃撃戦を繰り広げたとかじゃないの?思わず変な声が出た。


 「ハハハ、何を考えているか分かりますが、先程も言った様に捜査権も逮捕権も無いのですから日本の警察に通報するしかないではありませんか?」


 エマさんが愉快そうな顔で言う。


 「いえ、失礼しました。救出したと仰っていたので……」


 いや、エマさんがいたから月坂さんを助ける事が出来たのは間違いないのだが、こう~何というかモヤモヤすると言うか釈然としない。


 「コホン、それで犯人は何故月坂さんを誘拐したんでしょうか?」


 まだ、マッチポンプ疑惑が晴れた訳では無い。


 「あ~……」


 何故かそこでエマさんが言い淀んだ。


 「エマさん?」


 「ソ―リー、ミスター市原は男性たちの集まりのとあるグループに勧誘されていたそうですね。そして、それを断わったと……なので、今度は断われない様にミズ月坂を誘拐したと言うのが動機だそうです」


 「っっ!?ダブルバインド使いか!!」


 てっきり上流階級の仕業と思っていたが、まさかそっちだったとはな。


 だけど、確かにダブルバインド使いの考えならあり得る。俺が油断しきっていた所でまんまと月坂さんの誘拐を成功させたんだからな。


 だけど、運悪くエマさんに見られていて失敗した訳か……いや、待てよ。もしかすると――


 「エマさん、マッチポンプではないかと疑ってしまい――大変申し訳御座いませんでした」


 気になる事はあるが、先ずはエマさんに謝罪する。


 「ノー!!頭をあげて下さい!疑うのも無理ない状況でしたから……」

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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