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110話

 「リスナーの皆さんに俺が海外に亡命すると聞いて裏切られたとか日本を捨てるんだとか思われたら困りますから説明させて下さい」


 そう言って俺は上流階級と揉める事で日本に居づらくなるから月坂Pと二人で海外に亡命する事を考えていた事を説明する。


 「と言う事なので、率先して亡命するつもりだった訳では無く最悪の事態を考慮してと言う事は分かって頂きたく思います」


 一昔前に流行ったあの歌の様に上流~階級~の所為だよ~と言っておく。


 「エス殿、貴方は何故そうまで上流階級との関係を拒むのだ?」


 おいおいマジかよ……前当主は自覚ねぇのか一番質が悪ぃな。


 「追放おばさんには分からないと思いますよ。男は上流階級に囲われるのが幸せだ等と考えている人にはね……」


 「プッ、クスクス追放おばさん……」


 クッキーとかシチューのおばさんみたいに言った俺の追放おばさん発言に幸那さんが我慢できず噴き出した。


 「……」


 よく見れば千春さんも下を向いて肩を震わせて笑うのを我慢している様に見える。


 笑いごとじゃねぇんだよと思いながら言葉を続ける。


 「凡そ200年前当時の女性たちが盛んに叫んでいた事をご存知か?」


 「200年前……女性の社会進出、男女平等でしょうか?」


 俺の突然の問いかけに訝しげな顔をしながらも俺の追放おばさん発言に臍を曲げた前当主に変わり千春さんが答える。


 「概ねその通りです。しかし、実際は男女平等ではなく逆転――つまり女尊男卑だった。その流れが上流階級に受け継がれて今尚根付いているのでは?」


 あくまで男女比が徐々に偏っていったこの世界だからとは思うが、不同意性交等罪に関する法の成立から美人局やら冤罪が横行した事からも窺える。


 そして、男性には婚姻の義務が課せられているのに女性には男性から申し込まれた婚姻を断わる権利がある。挙げ句の果てに男性には強引な婚姻を断わる権利はないなんて言うダブルスタンダードが平然と罷り通っていているのならそう考えざるを得ない。


 「そして、それが当たり前となって根付いている以上それがおかしい事だとは思わない。でなければ『何故そうまで上流階級との関係を拒むのだ?』なんて頓珍漢な事を追放おばさんが言う筈ないと思いませんか千春さん?」


 おかしいと思って無いからあんな発言を平然とするんだよ。普通に逆の立場で考えればどう考えたって嫌だろう?そんな事すら分からない以上アレはもう手遅れだ。


 「まぁ上流階級の全ての家を知っている訳でないので上流階級全てがそうだと断言する事は出来ません。しかし、似たり寄ったりの同じ穴の狢と仮定して接触を控える――関わりを持ちたくないと考えるのは当然の事だと思うのですが如何がでしょうか幸那さん?」


 「「……」」


 さっきまで追放おばさんを笑っていた二人は黙り込んだ。俺から許されたと勘違いして最近調子に乗っている幸那さんにもしっかり釘を刺す。男性警護者としての嵯峨根幸那は認めるが上流階級としての嵯峨根幸那は不要と……


 「即答できない時点でお察しという訳ですよ。なので、ここで宣言します。私は全ての上流階級の家からの婚姻を拒否します。そして、当然ですが婚姻以外の養子等の縁が出来る勧誘や接触もしないで頂きたいです」


 俺は京條家の失態を利用して上流階級の全ての家と縁が出来そうな事は拒否すると宣言した。


 あくまで俺が宣言しただけだから法の様に絶対的な効果があるとは言え無いが、こちらからそう宣言しているのにも関わらず接触してくる家は攻撃対象に出来るだろう。


 「エス殿――仮に、仮にだが貴殿が千夏を好きになり婚姻したいと思った場合はどうするつもりか聞かせて貰いたい」


 追放おばさんは諦めきれないのか往生際が悪い事を聞く。


 「なるほど……あり得ないとは言えませんね。その場合は……千夏さんには上流階級の家――この場合は京條家から籍を抜いて貰って独立してから婚姻するつもりです」


 前世であれば結婚すれば親の戸籍から除籍され、新しく夫婦の籍を作るか元々筆頭者の籍を持つ相手の籍に入る事になるが、この世界では結婚しても同じ苗字を名乗る事が出来ないと言うのは以前話した通りだ。そして、籍も別々のままなのだ。なので、分籍?して貰ってから婚姻しなければ京條家と縁が繋がったままになる。


 まぁ戸籍から抜けたから付き合いが無くなるのか?と言うのは別問題だが、少なくとも京條家から籍が抜けていれば親戚付き合いを断わる正当な理由にはなり得るだろう。


 いや、そもそも京條さんは当主になるんだから籍を抜くなんて事は出来ない。


 だから、実質的に京條さんとの婚姻は無理だ。それを分かった上で京條さんに釘を刺すつもりで俺を諦めろと言う意味の言葉を俺に言わせたなら追放おばさんは残酷で底意地が悪く実に汚いババアだと言わざるを得ない。

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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