107話
6月4日日曜日の午後13時、俺と月坂さんと愛莉さん、幸那さんの四人は京條家にいた。理由は勿論京條家の俺への謝罪の生配信の為だ。なお本日の配信は15時開始となっている。
「市原春人殿、この度は我が京條家が大変な無礼とご迷惑をおかけした事を謝罪させて頂きます。大変申し訳ございませんでした」
「大変申し訳ございませんでした」
京條家の現当主である京條千春さんが代表して謝罪をし、前当主にして現相談役である京條桃香さんも続けて謝罪をした。
「ふぅ~この場での謝罪を受け取る訳にはいきません。配信での謝罪が目的ですので……そして、配信中に何があっても配信を止める事は出来かねます。よろしいですね?」
「はい。問題御座いません」
千春さんが大きく頷いた。
「それじゃあ月坂Pこの場で今回の配信がどのような段取り――流れになるかの説明をお願いします」
俺は月坂さんに説明をお願いする。
実は俺は配信中にある事をブッコむつもりだ。だから配信は途中で止めませんと言ったのだ。そしてだからこそ月坂さんに説明をお願いしたのだ。俺が説明をすると事前の説明ではそんな事言わなかったではないかと言う事態が起こってしまうからな。
まぁ、配信中もしくは配信後に面倒な事になるのは分かり切っているがアレは同じ男としてやっておきたい。ぶっちゃけ自己満足だけどな……
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「エスさん、15時10秒前――3、2、1」
「はい。リスナーの皆さん2週間ぶりですね?配信者のエスです。本日は謝罪配信です。私からの謝罪と私への謝罪があります。予め月坂Pが告知していたと思いますがそんな内容でも良いよ。見てやるよと言うリスナーの方々には感謝しかありません。それでは本日もどうぞよろしくお願いします」
こうして謝罪生配信が始まった。
「では先ず私の謝罪から参りたいと思います。私の謝罪は――私の勝手な推測によって混乱が起こりご迷惑をおかけしてしまったからです。私の勝手な推測と言うのは前回の配信中に――とある上流階級の家が共学校の改革を行うと発言をしてしまった事です。確認をした所そのような事実はありませんでした。この度は大変申し訳御座いませんでした」
俺は深々と頭を下げる。
「そして、そのような事実が無かった事で新たな問題が発覚しました。それは――では何故、私に対して学校を通して抗議を行ったのか?です。当然の疑問と言えるでしょう。確認をした所、以前のやり取りで当主交代になった事への意趣返しだと判明しました。なので、次はその上流階級の現当主と前当主から私への謝罪をこの場で行わせて頂きます。それでは、お二人はこちらへお願いします」
そう言って俺は千春さんと桃香さんを呼ぶ。なお二人は俺が提示した名前と顔出しと言う条件を受け入れたので仮面や被り物をしている等と言う事は無く素顔だ。
「それではお名前からお願いします」
「はい。京條家当主をしております京條千春と申します」
「ありがとうございます。ではもう一方お願いします」
「京條家の前当主をしておりました京條桃香と申します」
「はい、ありがとうございます。では、お二方から私への謝罪があるそうですね?」
実際は俺が生配信での謝罪を求めたが、表向きと言うか建前は京條家の方から申し出たと言う事にした。
「はい。前当主の市原春人殿への隔意に気付かず前当主の提案を受け入れた――私の当主としての自覚の無さが今回の一件を引き起こしてしまいました。大変申し訳御座いませんでした」
千春さんは深々と頭を下げた。
「私は責任を取って妹に当主の座を譲りますが、エス殿もご存知の様に妹はまだ未成年の上学生です。なので、妹の成人までは当主を務めさせて頂けたらと思っています。妹の成人後は妹がそのまま当主になってもらいます。ただ、妹が大学に進学するとなれば私がそのまま当主代行を務めさせて頂き、妹の大学卒業と同時に私が当主代行を辞する積もりです。如何でしょうか?」
続けて俺に裁可を求めた。
「私が良い悪いを決めて宜しいのですか?」
「勿論にございます」
「そうですね……私から言える事は妹さん次第ではないかと言う事だけです。私の口から良い悪いを言うと角が立ちますのでご容赦下さい」
玉虫色な答えだが、それで良いよと言っているに等しい。
「分かりました。妹の意思次第だと言う事を肝に銘じます。そしてもう一つ、母であり前当主だった桃香ですが――京條家からの追放処分とさせて頂きます。こちらに関しては既に決定事項ですのでご報告とさせて頂きます」
「なるほど……随分と厳しい処分ですね。先も述べました様に良い悪いを言うと角が立ちますので何も言いません。ご理解下さい」
良い悪いを言わないと言いつつ厳しい処分だと言っているのは……つまりはそう言う事だ。
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