105話
あの後、愛莉さんが直ぐに警察に通報した。
朝山は逃げようとしたが、S級の男性警護者二人から逃げるのはどう考えても無理だろ。
「通報を受けて来たのですが……」
警察官が二人305号室に入ってきた。
「助けてくれ!!」
朝山が警察官に助けを求めた。
えぇ……この期に及んでその行動って正直ドン引きだよ。
「落ち着いて下さい。通報されたのは男性警護者の方ですね。どなたでしょうか?」
「私です。太刀川愛莉と申します」
「「太刀川愛莉!?」」
愛莉さんの名前を聞いた警察官が驚いた声を出す。
「それってあの百人斬りの太刀川愛莉殿でしょうか?」
警察官の顔がキラキラした憧れの人に会えたような表情になる。愛莉さん、やっぱ有名人なんだな。
「コホン、通報に至った経緯を改めて説明をします」
通報した時に事情を説明したけどもう一度愛莉さんが説明をした。
「ほぉほぉ、事情は分かりました。では、朝山さんの男性警護者の方にお伺いします。こちらの太刀川さんが説明した事は事実ですか?」
警察官が朝山の男性警護者に確認をする。
「間違いありません。朝山様がお相手の市原様に良い返事を貰うまで返す訳にはいかないと確かに仰っていました」
まぁ、愛莉さんが言った事は嘘じゃあないからな。若干誇張は入ってるかもしれないが……
「ありがとうございます。と言う事ですが、朝山さん、如何ですか?」
警察官は今度は朝山に尋ねた。
「噓だ!!全くの出鱈目だ!!俺はただ同じ男として親切心でグループに勧誘しようとしただけだ。それを断られて少し冷静では無かったが監禁なんてする筈ないだろうが!!」
うん。まぁ、監禁云々は俺が誇張表現で使用しただけだ。恐らく俺がグループに入りますって言うまで説得や場合によっては脅しもするつもりだっただろう。
だけど、客観的に見ればどうなるか?なんて事は微塵も考えていなかったのだろうな。
「意義あり。私は朝山さんの指定したこのホテルのこの部屋に赴きました。そして、私からの話をしたいと言う依頼を受けたのはグループとやらに勧誘する為だったから。そして、勧誘を断ると私を返す訳にはいかないと言った。これらを併せて考えれば、私が朝山さんにグループとやらに入ると言わなければ家には返して貰えない――つまり、監禁されると判断した事は妥当ではないでしょうか?」
俺のこの一言に場が静まった。
「ば、馬鹿な……一体何を言っているんだ君は――」
「客観的にあの状況を見れば私があなたに監禁されるかもと危惧した事は何もおかしい事ではないと言っているのです。仮にあなたが監禁する気までは無かったしても未成年者略取及び誘拐の罪に問われる可能性は高いと思います……ですよね警察官さん?」
俺は朝山の言葉を遮って淡々と言う。
「お、仰る通りです」
警察官が驚いた表情で言う。
「待て待て!我々は警察官だが検察官ではない。迂闊な事を言うんじゃない!!」
もう一人の警察官がもう片方の警察官を叱責する。
「はっ!?申し訳ありませんでした。本官の今の発言は大変不適切でありました」
仰る通りですと失言した警察官が俺に謝罪する。
「いえいえとんでもない。ついつい得た知識を披露して賢く見せようとする私の悪い癖ですね」
某特命係の警部殿の台詞を真似る。
「それって!?バディシリーズの警部殿の台詞ですよね?お好きなんですか?」
その通りだしバディシリーズは大好きだが、個人的にはその発言の方が失言の様な気がするぞ……
「お前という奴は……とにかく、朝山さんには署までご同行を願います。朝山さんの男性警護者の方もお願いします」
もう片方の警察官がそんな事を言ってこの場は一旦お開きと言うような雰囲気で話をする。
「私たちはどうしたら良いのでしょう?もう家に帰っても?」
「はい。お帰りになって貰って結構です。ただ、後日改めて他の者が事情を伺いにお邪魔するかもしれません。その際はご協力をお願いします」
そう言って朝山さんと朝山の男性警護者と一緒に305号室を出て行った。
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