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99話

 5月24日水曜日、朝から嵯峨根さん経由で嵯峨根家から連絡があった。京條家は俺が出した要求である生配信での謝罪を受け入れるそうだ。


 フィフティーフィフティーだとは思っていたが、正直言って要求そのままを受け入れられるとは思ってもみなかった。絶対に要求の引き下げについての交渉があると思っていたからだ。


 それなら、今週の配信はとある上流階級の家との和解配信とすべきかな。月坂Pに連絡しないと思っていたのだが……


 「春ちゃん、ちょっと良いかしら?」


 どうやら母さんから話がある様だ。


 「勿論、構わないけど母さん仕事は?」


 「今日は休みを貰ったわ。それでね…話と言うのは春ちゃんが前に社会に出て働いてる男性と話がしたいと言った事覚えてる?」


 あぁ…宿泊研修で日本と言う国について懐疑的なものを感じた事から、実際に社会に出ている男性から生の話を聞きたいと母さんにお願いした事だ。


 「覚えているよ。それが何?」


 「母さんの取引先の企業に男性がいてその人に息子と話をして欲しいとお願いしていたのだけど……昨日連絡がきて話をしても良いと言われたのよ」


 へぇ~そいつはまた……


 「ありがとう母さん、先方はいつなら話をしてくれるの?」


 「それが……今週の日曜日の午後からって言われたのよ」


 母さんが困ったような顔で言う。


 「ふ~ん……まぁ配信と被るから困るね。別の日に調整して貰う事って出来る?」


 「それが、その日じゃないと話をする気は無いって言われて……」


 何か聞き覚えがあるフレーズだぞそれと思ってある人物の方を見ると、その人物は気まずそうに顔を背けた。


 「そのフレーズ流行ってるの?」


 「あのね……最初私が息子の事を口実にしてその人に迫ってると思われてたの。だから、息子は本当にいて配信者のエスですって言ったのだけど、そこから調べたんでしょうね。日曜日が配信する日だって事を」


 母さんが申し訳なさそうに言う。


 「いや、母さんは全然悪くないよ。何か面倒臭そうだねその人……なら配信があるから無理ですって断るよ」


 そんな面倒臭そうな人物に真面な話を期待できる筈も無い。配信があるからと言う理由ならキチンとした理由にもなるだろう。


 「それは困るわ春ちゃん、こちらから話をしたいと言っておいてそれは……」


 「母さんの言う事も分かるけど、こっちはちゃんとした理由だし向こうがその日以外は話をしないって言ったんでしょ?しかも、配信があるのを知っててっっ!?ダブルバインドか!?」


 俺が京條家に使ったダブルバインドをこんな形で使われるなんてな。やっぱ面倒臭そうな人物だ。


 「ダブルバインド?」


 「正確な意味は怒らないと言ったのに怒ったとかの矛盾した行動で相手にストレスを与える事なんだけど、俺のダブルバインドって言う言葉の使い方は相手がわざとどっちの選択肢を選んでも良い様に状況を持っていく的な意味で使ってるんだ」


 一旦ここで言葉を切る。


 「こっちが日曜日に配信を理由に断れば非礼だと責める。配信をせずに会って話をすればその人は俺との繋がりを強調できる。俺はあのエスが配信を休んでまで話を聞きに来るほどの仲なんだぜ?とかね。向こうがどっちでも良い状況を俺は強制的に選ばされる事に多大なストレスを感じる。だからダブルバインドって事」


 ただ何と言うか相手の思惑が分からない。俺はただのいたいけな男子高校生――もとい元男子高校生だ。それなのに、こんな大人げない事をすれば俺から反感とか不信感を買う事くらい分かるだろ。


 だと言うのに、何故こんな事をするんだ?分からん。


 「これはもう仕方が無いな。月坂Pに前々から社会に出ている男性と話をする約束をしていて向こうが配信がある事を分かっていて日曜日を指定してきたって正直に言って、今週の配信はしない事を告知して貰うしかないな。代わりに詫び石じゃないけど詫び動画を投稿しよう」

最後まで読んでいただきありがとうございました。お手数をお掛けしますが、宜しければ拙作への評価やブックマークよろしくお願い致します。

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