89話
自己紹介の内容も決まったし、じゃあ動画を撮ろうと言うのは中々ハードルが高い。
動画を撮られると言うのは俺にとっては馴染みが無い事だから緊張したりするのは当たり前だ。
なので、まずは動画を撮られる事に慣れる事と自己紹介を上手くできる様にする事を分けて並行に行う事にする。
動画を撮られる事に慣れると言うのは文字通りそのままだ。日常生活を送る際にデヴァイスに動画撮影機能があるのでそれを利用して動画を撮られる事に慣れるというものだ。
実際に動画投稿をする際にはデヴァイスを使う予定なので本番の良い予行練習になる。
ちなみに配信をする際に使うのは正式名称デヴァイスPCで、デヴァイスとの区別の為DPCと呼ばれている。
こいつは只のデヴァイスでは無くて、デヴァイスのサイズでノートパソコン並みのスペックを搭載する優れものなのだ。月坂さんに配信で使うから買っておいた方が良いと言われたので注文済みで数日後に家に届く。
後はマイクだったり照明だったりと言うのも、月坂さんおすすめのものを注文済みだ。
話がとっ散らかって済まぬ。ともかく、動画を撮られる事に慣れる為にカメラを意識する(撮るのはデヴァイスだが)みたいな事だ。
それと並行して行う自己紹介を上手くなるようにする。これも難しい。
只の教室での自己紹介とは違うのだ。撮り直しや編集できるとは言っても不特定多数の人に見られる事が前提の自己紹介だ。ハードルが高い。
内容も重要だが、笑顔で明るくはきはきと話す事も重要だろう。そうは言っても笑顔なんて簡単に出来るものでは無い。そりゃあ前世の飲食店で接客をした事があるから経験が無いとは言わないがそれはまた別次元の話だろう。
顔を隠すのに笑顔の練習?と思う方もいるだろうけど、口元は出す予定だから口角が上がってないとね。あと、配信では顔出しする訳だから決して無駄な練習ではない。
まぁアレだよな。簡単に配信者になる動画投稿者になるなんて言ったが、中々難しいな。只の趣味でと言う訳じゃなくて上流階級に対抗する為の影響力を得るのが目的だからな……まぁ、配信者を生業にしている人間からすると怒られそうだがな。
うん。自己紹介の動画を撮るぞとは言ったものの今はその前段階だ。しかし、悠長にもしていられない。あのキングローヤルホテルでの謝罪の一件で俺の存在は上流階級に広まっただろうからな。明日にも京條家や嵯峨根家以外の何処かの家が娘と婚姻しろと言ってくる可能性があるのだ。
なんて事を考えつつ鏡を見ながら自己紹介する時の表情をチェックしたり、愛莉さんにデヴァイスで動画を撮影されているとあっという間に午後になった。
学校が終わる時間帯に、デヴァイスチャットで月坂さんが俺のお見舞いで家に来たいとあった。月坂さんは俺が仮病だと知っている筈だろう?と思ったのだが……
どうも俺が体調不良で休んだ事でクラスメートが心配をしているそうで、最初はクラスメート全員で家にお見舞いに行こうとしたが、月坂さんが大人数で押し掛けるのはマズいと提案し何とか代表の座を勝ち取れたとあった。
なるほど……やっぱり月坂さんは学校に通ってくれた方が良かったな。それに、このタイミングで月坂さんが来てくれるのはありがたい。
嵯峨根さんに学校まで月坂さんを迎えに行って欲しいとお願いした。
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