9話
2月22日、この日は母さんと進路について話をする事にした。
「母さん、現状の俺って男子校の受験に失敗した浪人生って事になるの?」
「え~と~ね……もし春ちゃんが共学校や通信制の高校でも良いのならどこでも通ると思うわよ。勿論、一年浪人して来年男子校を受験するのも良いと思うわ」
あ~よくある男子には試験が無いやつなのね。
それなら一年棒に振ってわざわざ男子校を受験しようとは思わんな。只でさえ女性との経験値がゼロな俺が男子校に行って25までの結婚義務の貴重な時間を無駄に使うなんてあり得ない選択だと言える。
そして、どこでも通るか……
「今の俺は特に女性に対して特別な嫌悪感やら忌避感はないからそれでも良いんだ。だけど、どうせ通うならなるべくレベルが高い所が良いと思ってるんだけど……」
「レベルが高い所?」
俺の前世の話を信じてくれたので共学校や通信制に通うと言った事を受け入れてくれたが、何故レベルが高い所なのかは分かっていない様だ。
「理由は二つあるんだ。一つはレベルが高い共学校ならレベルの高い女子が多いって事だから目的意識と言うか将来についてキチンと考えを持った女子が多いんじゃないかと思ったからなんだ」
この世界の女性は男の労働者が減った所為でほぼ100%働かなくてはならない厳しい世界だ。そんな厳しい世界のレベルの高い共学校や通信制の高校ならば男に対して一定の理性と言うか、馬鹿な事をして将来を棒に振るような事を安易にはしないだろうと考えての事だ。
「ふ~ん……それじゃあもう一つは?」
あら?反応が薄い。まぁ、いいや。
「もう一つは……」
俺はそこで言葉を止めた。
「春ちゃん?」
母さんが怪訝そうな顔でこちらを見る。
「あ~何て言うか……人生を詰ませない為――かな」
「??」
俺自身大分回りくどい言い方をしたとは思うが、伝わらなかったか……
「え~とこれでも俺は前世で社会人として働いてたんだよね。で、転職活動に苦労したんだ。ここまで言えば分かるかな?男だからと言って働かなくて良い訳じゃないと思うんだ。いや……微妙に違うな。何かあって生活の基盤を支える精液を出せなくなった時の事を考えておくべきだと思う――かな」
「っっ!?」
そんな驚くような事でもないと思う。勿論、働かずに暮らせるならそれはそれで良いと思う。特に前世の俺は生きる為に働く筈なのに働く為に生きるみたいな生活をしていたから余計にそう思う。
だけど、年齢の事もある。50とか60になってまで精液を出せるかと言うと正直分らんしそれ以前に何かがあって出せなくなるという事も十分あり得る。勿論、それまでに稼いでおけばとか25で婚姻の義務があるから妻となった女性に養って貰えば良いと考えるのかもしれない。
しかし、それは危険だろう。相手の女性に依存するという事は相手に生殺与奪の権利を進呈するのに等しい。それは下手をすれば奴隷になるという事だ。
奴隷は流石にマズい。だから、出せなくなったから働きます。しかし、学歴もない。職歴もない。資格もない。のないない尽くしは流石に男と言えど就職できるのか?と疑問に感じるのだ。
「多分、今現在社会に出て働いている男はこの危険性を理解しているから働いているんだと思う」
あくまでも予想だし、事情があって仕方なく働いている人もゼロではないと思うが、それなら婚姻して女性に養って貰うと考える男の方が多そうだしな。