宇宙人三人娘による突発的なお宅訪問(アポ無し)
無事に太陽系へ戻ってくることが出来た私達は、損傷した銀河一美少女ティリスちゃん号を修理するために月面の居留地にあるドックへ入港。
そこでゼバ星系の生き残りの皆さんと再会して、新たな命の誕生を祝うことが出来た。まさか地球由来の名前をセシリアが用意してるとは思わなかったから、ちょっとビックリしたけど。
「ザッカルちゃんは調整に忙しいみたいだし、今こそ交流を深めるチャンスなんじゃないかな?
今まで行ったことがない地域へ行ってらっしゃい☆
後始末私がしておくからさ☆」
ザッカル局長のお手伝いをしようかと考えていた私に、ばっちゃんが提案してくれたのは交流の拡大だ。
まあ、政治や外交の世界で私が役に立てる自信はさっぱり無い。つまり、お手伝いしようにも出来ることが少なすぎる。
それならまだまだ行ったことが無い場所はたくさんあるし、皆と一緒に見て回って現地の皆さんと交流するのも良いかな。
と言うか、それが本来のお仕事なんだよね……。
……親善大使っていつからヒーローになったんだろう?まあ別に良いけどさ。
「砂漠は体験しましたし、今度は寒冷地を見てみたいです。地球には氷で出来た大地があるんですよね?」
「南極大陸と北極かな?あるよ」
私が生きていた時代から温暖化の影響で北極や南極が無くなっちゃうんじゃないかって言われていたし、地球へやって来て真っ先に調べたことの一つだ。
結論から言えば、普通にあった。いや、詳しい人からすれば明らかに小さくなっているんだろうけど、私には細かい違いは分からない。
私が死んでから三十年くらい経ってるし、もしかしたら画期的な取り組みをしたのかもしれないね。
「氷で出来た大陸ですか、興味深いです」
「植物はなさそうだし、私はパスよ。フィーレの面倒を見てあげないといけないし」
「これから出産ラッシュになるらしくてな、部族の皆を安心させるために、しばらく居留地へ滞在することになった。手伝えずに申し訳ないが」
「ううん!そっちを優先して!ただし、フィオレ。フィーレを野放しにしないでよ」
「善処するわ」
クレアは興味を示してくれたけど、フィオレは船の整備に残るフィーレと一緒にお留守番。セシリアもお祝いが続くなら一緒に居て安心させてあげてほしい。
……フィーレに関しては、正直諦めてる。フィオレはフィーレに甘いし、美月さんから著作権周りは気にしなくて良いって言われたからある程度は放置するようにしてる。
流石に惑星そのものを破壊してしまうようなヤバい代物は作らないように釘を刺したし、その辺りの監視をアリアに任せてるから大丈夫な……筈。
あんまり自信無いなぁ。アリアは地球人の発想力に関心を持ってるし、それを再現しようと頑張ってるフィーレを焚き付けてる節があるんだよねぇ。
……まあ良いや、なるようになれだ。
人それを諦めと言う。閑話休題。
「じゃあ……よし、南極大陸へ行ってみよう」
ペンギンとか可愛い生き物も居るし、フェルやクレアも喜んでくれる筈。
「じゃあ、早速……」
「ちょっと待って、フェル」
私とクレアの手を優しく握ったフェルを止めた。あんまり知識はないけど、確か前世で……あったあった!
端末を弄って目的地の画像を見せた。
「ここに行けば良いんですね?分かりました」
目的地を確認したフェルはそのまま目を閉じて、膨大なマナが周囲に漂い、浮遊感を感じて世界が暗転した。
南極大陸昭和基地。ここは1957年に日本から派遣された第1次南極地域観測隊によって建設された永久観測拠点であり、常時三十名前後の人々が駐留して様々な研究調査に従事している。
資源の枯渇が叫ばれている昨今、この調査拠点を維持することを疑問視する声も多数挙がったが、知識は何ものにもかえられないと今現在も維持されている。
年に一回人員の交代や物資を補給するため専用の船が派遣されるのだが、先月行われた輸送ではティナの好意によって日本へ提供された“トランク”が初めて用いられた。
これによってこれまでよりも膨大な物資を一度に運べて、しかも保管スペースをほとんど取らないことは様々な恩恵を与えた。
これまでティナが持ち込んだ“トランク”は世界中で災害時や緊急時の物資輸送に活用されているが、他にもここ南極大陸や宇宙開発に役立てられている。
本日は気候も落ち着いており、絶好の調査日和である。故に複数の調査チームが基地周辺へ展開して様々な調査を行っていた。
その内の一つ、三人のチームが深い氷層の調査をしていたのだが。
「こんにちわ~」
何とも可愛らしい声が聞こえた。何らかの幻聴であろうかと顔を上げた彼らの目の前には、三人の少女が立っていた。
エメラルドグリーンの髪を肩口で切り揃えた、スチームパンクのような服装をした少女はまだしも、天使のような全体的に薄着で露出の多い少女に若草色のワンピース姿の少女。しかも二人とも革製のサンダル履きである。
南極大陸では正気を疑うような服装である。
「君達……!」
なぜこんな場所に、その疑問が生じるが先ずは保護しなければ。良心が働き声をかけようとしたが、改めて三人を観察して異質な点に気付いた。
先ず薄着の二人は、地球人には存在しない羽や翼が背中にある。そしてスチームパンク風の少女の耳は、まるでアニメに出るエルフのように尖っていた。
明らかに地球人とは異なる存在を前に、三人組は一瞬フリーズした。
「あれ?聞こえなかったかな?こんにちわ!ティナです!」
三人の反応を見たティナは首を傾げたあと、改めて笑顔で挨拶を行った。その声に三人組も我に返り。
「まっ、まさか……アードの人達……?」
女性隊員が恐る恐る問い掛けてみると、ティナ以外の二人も笑みを浮かべた。
「はい、私はアード人ですよ!で、フェルがリーフ人、クレアはノーム人ですね!」
まさかの異星人三人娘の爆誕に理解が追い付かないのは無理もない。
最近世界中で常に話題となっている少女達が目の前に現れた。あらゆる事態を想定して訓練を受けていたが、流石にこれは想定外である。
尚、女性隊員は画面で見るより遥かに可愛らしい三人娘を前にしてキュン死してしまったが、ここでは割愛する。
この時双方にとって幸運だったのは三人組のリーダーの存在である。
「色々言いたいことはありますが……先ずは、基地へご案内しますよ。そこでゆっくりと。
ああ、申し遅れました。私は椎崎 義久。姉から話は聞いていますよ」
「え?もしかして……美月さんの弟さん!?」
リーダーが椎崎首相の弟であった事である。




